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ただの召喚士(本人自称)  作者: 進夢 ロキ
第1章 旅の始まり
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三話 イリシアネの破滅 前編

投稿が遅れて申し訳ありません。


これは、スバル一行がイリシアネの街まで来る少し前のこと。


☆★☆★☆


空は雲一つ無く晴れ渡り、今日も太陽が、イリシアネの街を、ギラギラと照りつけている。


ここ、イリシアネの街にてよろず屋を営んでいる中年の男がいる。


名はラクデーン。


14歳になったばかりの娘を持つ、シングルファザーだ。


彼の妻は娘を産んだ際に死んでしまっている。


ので、男手一つで娘を育てできた男だ。


「今日は網のトラップが半額だよぉ〜!

さぁ、買った買ったぁ〜!」


今日もラクデーンの威勢のいい声で呼び込みをする。

明日も娘に食べさせるためだ。


娘の為だったら、ビッグビーという大きな蜂のハチミツだって、体を張って取りに行く。


たまに大怪我をするので、「今日もハチミツ採ってきたぞー!」と娘に言えば、「お父さん、あまり無理しないでね」

などと、妻と夫みたいな会話を毎日のようにしている。


「網のトラップが、半額!?」

「よろず屋へ行くぜー!」

「ほら、早くしないと売り切れるわよ!」


ラクデーンの呼び込みに反応した冒険者達数名が、一斉によろず屋へ駆け込む。


網のトラップは、魔物が捕獲できるが故に、1000エルと値段も高い。ので、これが半額になると500エルになるため、冒険者達は叫んで喜んで買いに行く。


だが、これがラクデーンの狙いだ。


安い商品ではなく、高い商品を半額にすることで、冒険者達は高いから買わないと諦めていた商品を買うようになる。


そして、半額も本日中なので、予備に沢山買っておこうとかなりお金を使う。


そうすると、通常価格の日に15個程度売れて、15000エル儲かった。


半額の日には、買う冒険者は増え、さらに、1人二個、あるいは三個買うとしたら、役30000エル程度売れるということだ。


ラクデーンはこれに掛けて半額にしている。


ラクデーンの掛けは大当たりで、見事に通常価格の売り上げより多く儲かった。


まぁ、たまに掛けが外れるときがあるが………


しかし今日もラクデーンの思惑通りだった。


冒険者達は一斉に網のトラップが入っている箱に手を伸ばし、どんどん取り、じゃんじゃん買う。


数分後、網のトラップの今日の分の在庫がなくなってしまった。


在庫は無くなったが、稼いだエルは、36000エルとかなり高額な値段稼いだ。


「ふぅ〜」


ラクデーンは、客足が途絶えて数秒後、

大きなため息をついた。


冒険者達の殺到に、ラクデーンは毎回疲れさせられる。


だが、これだけ儲かったのだから、この疲れはそれ相応の事だろう。


時刻はまだ11時程度。

昼食にはまだ1時間もある。

なのにもうすでにくたびれている。


ラクデーンは、呼び込みをする気力を無くしてしまった。


ので、あとは、薬草などを買いに来る客を待つ事ぐらいしかできない。


ラクデーンは客が来るのをじっと待っていた。


待っているうちに、うつらうつらと首が揺れ、寝てしまった。


☆★☆★☆


一方、ラクデーンの半額セールが終わった頃、村の東では冒険者たちによるダンジョン攻略が行われていた。


このダンジョンの名は、「緑の洞窟」

と呼ばれる。


この緑の洞窟は、地下型ダンジョンだ。


層に隠されし階段を見つけ、下って下って最深部を目指す。


最深部は、B99Fと、広さはそこそこのダンジョンだ。


B1FからB9Fまでは、比較的弱い、スライム系やワーム系や、バタフリー系の魔物が出てくるが、B10Fからは魔物の強さが徐々に強くなってくる。


ので、冒険者達の考えは一度、B9Fあたりで鍛錬を積んでからB10Fに降りていく、という寸法だ。


そして、B99階まで辿り着いたものは、ダンジョンの中でも最高級に強い魔物と戦う。


無論。負けたら死ぬので、どれくらい鍛錬を積んだかどうかが重要になってくる。


今日も、B99Fまでたどり着いたパーティがいた。


「ナリーシャ!ケイト!左右から同時に叩け!ガメロとアリルは二人の回復と援護を頼む!」


「「「「了解!」」」」


まるで人食いバナのような魔物と戦っているパーティ。


ナリーシャと呼ばれる女が、長剣を振るっている。

ケイトと呼ばれる男が短剣を投げたり突き刺したりしている。

ガメロ、アリルと呼ばれる男女が回復呪文の詠唱を唱え、ナリーシャ、ケイトの傷を癒している。


そして、彼ら彼女らに指示を出している男がこのパーティの参謀。イスタだ。


「くらえ!『完全切断(パーフェクトブレイド)』ッ!」


アリルが人食いバナのような魔物に斬撃を入れる。その斬撃は、脚のようなツルを斬り裂き、行動不能にする。


その隙にケイトが短剣に毒を塗り、投げる。


ケイトの短剣は、矢が放たれる様に、まっすぐと突き進んで、人食いバナの茎につき刺さった。


そこから、赤紫色の毒が、緑色の葉緑体を赤紫に染めていく。


やがて、人食いバナは全身が赤紫色に染まり、力なくしおれていった。


「よっしゃぁ!」


ケイトが人食いバナが完全に動かなくなったのを確認し、両手を握りしめ、歓喜の声をあげた。


「喜ぶのはまだ早いわよ。この死骸をギルドに持って行って、お金をもらわないと…じゅるり…」

「ナリーシャはほんと金が好きだなぁ」


ナリーシャは、ヨダレを垂らし、それをガメロが、少々引いた感じで見ている。


「さて、ギルドへ急ぐぞ」


人食いバナとの戦闘時、参謀役を勤めていたイスタと呼ばれる根暗の男は、杖で魔法陣を描き、人食いバナの死骸を魔法陣の中に入れる。


そして、パーティは来た道を戻る。階段を登りながら、彼等は話す。


「これで、我らのパーティの未踏査ダンジョンは9つに減ったな。さて、参謀。次はどうする?」

「そうだな。次はここから最も近い「オーリア火山」にでもいってみるか」

「分かったぜ」


ケイトはイスタをのぞいたパーティ全員に次の行き先を知らせる。と、イスタの後ろから話し声が聞こえてくる。


冒険を楽しむ、冒険者の日常。

辛いこともあれば、楽しいこともある。


今日は彼らにとって一番辛い日になるだろう。


そんな未来が待っていることなんて、パーティ全員が知るわけがなかった。


☆☆☆


緑の洞窟をぬけた、イスタ率いるパーティは、イリシアネの街に向かって歩を進める。


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「雷がなってるな」


空の異変にいち早く気づいたイスタは呟いた。


「早く宿に行きましょう」

「なんだ?ナリーシャ。雷が怖いのか?」

「そ、そんなわけ、な、ないじゃない!」


そんなやり取りを前で聞きながら、イスタはひとり妙な感じがしていた。


ーー雷雲にしてはやけに深い紫色だ。なんだ?この雲は…


刹那、赤黒い稲妻が耳がおかしくなりそうなほどうるさい雷鳴を響かせ、パーティの背後に落ちてきた。


ザシュッ………


「きゃぁ!?」

「うわぁっ、あぶねぇあぶねぇ」


ケイトとナリーシャがある不穏な音に気がつかなかったため、落ちてきたモノを見て、初めて悲鳴をあげた。


そのモノとは、

ガメロの…いや、ガメロだったものの頭部だった。


「なにやってんだ!下がれ!」


イスタがナリーシャ達に呼びかける。咄嗟にイスタの背後に飛ぶ。


「な、な、なんで?」


突如落ちてきたものに疑問を浮かべるが、正面を見て、すぐに分かった。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


ザシュッ………


アリルの首を斬り飛ばした瞬間を見たナリーシャは、またもや悲鳴をあげた。

ナリーシャは腰を抜かした。


ケイト、イスタが、それぞれ武器を構える。


「おい!イスタ!あいつはなんなんだ!?」

「わからない。あんな魔物初めて見た…」


魔物は、カマを持っていて、8頭身ほどの全身が黒く、ツノが渦のように生えて、目は赤くてつっている。

コウモリのようなとても大きな翼を持ち、羽ばたいている。

持っているカマには、赤い鮮血がこびりついている。


「びっくりしてる場合じゃねぇだろ!早く指示を出せよ!」

「………そうだな。お前は短剣を投げろ!投げるだけだからな!」

「分かった!」

「早く立て!ナリーシャ!」

「……むり…むり…」

「なに言ってんだ!お前はこのパーティの中で一番の負けず嫌いだろ!そこで腰を抜かしているようじゃケイトには勝てねぇぞ!」

「……うるさい!私はケイトには絶対に負けない!」

「ナリーシャは、相手の動きを止めろ!」

「うおおおおっ!」


ナリーシャは、超速力で魔物に向かっていく。対する魔物はケイトの短剣投擲に応戦している。


ーーチャンス…!


ナリーシャは、ニヤリと笑みを浮かべ、魔物にジャンプ斬りをする。


が、魔物はナリーシャを片手で止めていた。

しかし、触れてはいなかった。よく見るとナリーシャは、薄紫色の何かで覆われている。


「呪文!?」


イスタが声をあげる。

魔物は、止めていた手を握り、人差し指で右をさした。すると、指がさす方向と同じ方向へ吹き飛ばされた。

ナリーシャ地面を跳ね、数回転がり、うつ伏せの状態で止まった。


「う…動けない…」


吹き飛ばされたが、薄紫色のモヤモヤしたものは、ナリーシャの全身にまとわりついていて、ナリーシャにものすごい重力がかかって動けないでいる。


「『封印の解放(キュアー ザ マジック)』ッ!」


それを見たイスタは、咄嗟に呪いを振り払う魔法を、ナリーシャにかけて、薄紫のなにかを取り除いた。


それを見た魔物は、標的をイスタに変える。


「な!?こいつ…剣が効かない…」


ケイトはイスタに向かって走る魔物に、精密に狙いを定め、短剣を放つが、魔物に刺さっている、にも関わらず、血液一滴すら出てこない。


「クソッタレ!」


イスタは、魔物に炎の魔法を放つが、効かない。魔法を放つうちに、イスタはどんどん力が尽きていく。

やがて、魔法が出なくなる。


その隙を狙って、魔物がカマを振る。


「させるか!」


ケイトがイスタを守るべく、短剣だけでカマを受け止める。


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!」


ケイトの腕の骨が、魔物の凄まじい力が、短剣から伝わって、どんどん砕け、しまいに身体ごと右手が吹き飛ばされる。


「そこ!」


ナリーシャは、いつの間にか背後に回っており、ジャンプ斬りを首に向けて放った。


「とったっ!」


ナリーシャは、首に斬りつけようとしたが、

魔物に生えていたツノが背後に伸び、ナリーシャを貫いた。


「ナリーシャ!」


ナリーシャの背中から鮮血が勢いよく吹き出した。

ナリーシャは、自分を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、血を吐いて、その呼びかけに応答することができなかった。


「くっそぉぉぉぉっ!」


ケイトは怒号をあげ、短剣を魔物に投げたが、ツノはグニャグニャと動き、ナリーシャを盾にして短剣を防いだ。


「なんだと…」


もう片方のツノが一瞬にしてケイトを貫いた。


「グガァッ……」


ケイトは血を吐きながら絶命した。


「………もう……俺だけか?」


イスタは目の前で仲間が殺されていく光景を、ただ呆然と見ていた。


魔物がイスタに向かって、ゆっくりと動き出した。


「………ああ?……なんなんだよ?」


イスタは気が狂ったのか、それとも疲れたのか、迫り来る魔物と戦おうとしなかった。


所詮イスタは、参謀。

仲間に指示を出して、アシストする魔法使い。


仲間がいなければ、戦えない。


「お前はぁッ…一体ィ…なんなんだよぉッ!」


ザシュッ


勢いよく振られたカマが、イスタの身体を斬り刻み、そこに血の雨が降った。


この時既に、イリシアネの街の破滅は始まっていた。


説明


エル:お金の事


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