三十三話 浮かびゆく問題点
少々短めです。
十二月二十三日
サブタイトルを「浮かんでいく問題点」→「浮かびゆく問題点」に変更しました。意味的には変わっていません。
「これより、新ダンジョン、『エムズ・ワールド』の攻略作戦会議に入る!」
インダル・ボアホスが、大きな声で言う。
『エムズ・ワールド』とは、噛み砕いて言うと、ナルーガ王国近くにできた、新ダンジョンというものだ。まだ新ダンジョンなので、内部の地形や、魔者の種類などはまだ明確ではないが、タイプが4タイプあることは間違いないと、冒険者ギルドは公表している。
新ダンジョン。即ち未攻略ダンジョンの為、こうやってナルーガ王国冒険者ギルドに、冒険者が集められ、パーティの編成をしていたのだ。
そして今、サクラがパーティに加わっ為に、作戦会議、というよりは、パーティの中の班の編成をしようとしている。
「ちょっとリョウ。雷属性ってどういう事?」
半ば無理やりダンジョン攻略に赴く事となったサクラ。
サクラがダンジョンに行かなければならなくなった理由は、リョウだ。リョウがサクラ自身で「無属性」と言うのを遮り、「雷属性」と言ったから、ダンジョンに行かなければならなくなった。
ので、インダルの説明中にもかかわらず、サクラはリョウに小声で、雷属性と言った理由を問うた。
「実際同じようなもんだろ」それに……とリョウは付け加える。「『エムズ・ワールド』っていう名前を聞く限り、多分これからダンジョンに行くんだと思う。ランクを上げるチャンスじゃないか」
「ダンジョン……に行くの?」
「あ、ちなみに俺は行かねぇぞ? 選出されたのはサクラだけだからな」
「えーーーっ!?」
と、サクラは大声で驚愕してしまう。
その姿に、インダルをはじめとした、パーティ全員に、鋭い目で睨まれる。
「す、すみません」と、頭を軽く二回下げながら言うと、続けてインダルの説明が再開された。
「尚、未調査ダンジョン故、常識に習い、様々な属性を固めたパーティで向かう」
インダルの言う通り、未調査ダンジョンは、どんな敵が現れても対応ができるように、様々な属性で行くのが常識となっている。
「それではこれから、このパーティをさらに三つに分担する故、それぞれランクを申せ。では、某から、某はインダル ボアホス。ランクは183。よろしく願いたてまつる」
まるで、侍のような言葉遣いだ。だが、それよりも興味深い事が、そのランクの高さだ。パイスには及ばないが、それでも十分なランクである。
「続いて私が」と、インダルの左隣にいる、いかにも爽やかそうな男が言う。「私はマルコス・エルト。ランクはインダルと同じく183です。ちなみに属性は水で、太刀を使っております」
この男、マルコスも、インダルと同様ランクがかなり高い。
「ほんだらば次はワスが」インダルの右隣にいる、なまりになまった口調の、身長がとても低く、その代わりコック帽よりも高く、黒い三角帽子を被った老婆が言う。
「ワスは、ヌーバ。ヌーバ・エルムニアつーもんさ。ラングは173で、ついでにぞぐせいもいでおぐげど、自然だべさ。よろしぐおねげすます〜」
この老婆は、右手に、自身の身長よりかなり長い杖を持っている。一見魔法使いのようだ。ランクも、インダル、マルコスよりは低いが、それでも十分高い。
「尚、ダンジョンでは某達が主将を務む。ので、三班に分かれよう」
彼らなら、残り七人のパーティメンバーを統率できそうだ。ということで三班に別れることになった。
班編成は、属性は関係ないらしい。だが、ランクを平等にしなければならない。サクラはこのパーティの中では当然、一番ランクが低い。(サクラの影響により、パーティの平均ランクは104程度になってしまう)ので、四人の班にされる。サクラの他に、見方を三人配置し、カバーするという寸法だ。それも、ランク183で並ぶ二人のうち、インダルが取り仕切る班に所属することになった。
班編成は決まった。それでは行こう。と思ったサクラだったが、どうやらダンジョンに転移する魔法陣の構築が、まだ終わっていないらしい。ので、出発は三日後となった。
それまでの時間をどうするか。
「じゃあ、少しでもランク上げるために、行くか、クエスト」
「うん。……はぁ〜、私、大丈夫かな」
「ダンジョンのことか? あのインダルさんも、心配はいらないって言ってたぞ? 大丈夫だ! サクラならやれる」
「う〜〜ん」
サクラはクエストを受注し終わるまで迷惑をかけないだろうか。他の人を死なせたりしないだろうか。などと、自分の力を心配していた。
「『グラスウルフ×5体の討伐』いってらっしゃ〜い」
(悩んでても仕方ないよね、それまでに力つけないと……!)
だが、サクラはクエスト受付嬢の、明るくて、聞いていると気持ちいいくらいの声を聞いて、心配を振り払い、グラスウルフの討伐へと集中した。
◆
「一体どうした! サクラ!」
「ちょっと待ってよ! 『落雷』ッ!」
サクラが『落雷』の詠唱を唱えて剣を空へ掲げるが……発動しない。普通なら、空から雷が落ちてくるのだが……。
「『落雷』ッ!」
もう一度空へ剣を力いっぱい掲げても、 一向に雷は落ちない。落ちる気配すら無い。どうしたものか。これでは外で厨二病っぷりを見せびらかしている残念な人にしか見えない。
遠くで見ている男児が、「ママー、あの人なんか変!」と、指をさして言い、その男児の目を「見ちゃダメ!」と、母親が両手でふさいでとっとと帰ってしまう。
向かい合っているグラスウルフ三匹も、「まだか」と言わんばかりに睨んでいる。そのうちの一匹は大口を開けて欠伸をしている。
(嘘……でしょ……。『落雷』がでない……)
もともと、『落雷』は、空に雲が無いと発動しない。今日は空の彼方まで青が透き通った快晴だ。
「一旦退避だ! 仕方ないけどリタイアしよう!」
リョウがそう促すと、サクラは一応頷き、走って王国へと引き返した。
サクラの新たな課題が見つかったのだった。




