三十二話 選ばれたランク1
一時間早く更新します。何故かって? 今回は二話更新します!
翌日、サクラ達は、戦闘の鍛錬を積むために、一つクエストを受注しよう。という話になり、ナルーガ王国冒険者ギルドへと向かっていた。
冒険者には、それぞれ、『ランク』というものが存在し、これは各ランクで指定された数のクエストをクリアする事で上げることができる。即ちランクというのは、冒険者の『経験値』をそのまま数値化したものと言ってもいい。
一行はそのランクを(サクラだけだが)上げるために冒険者ギルドへと向かっていた。
封印から解き放たれたドラゴンを倒し、ナルーガ王国壊滅の危機を救ったサクラだったが、とはいえランクの話となるとサクラのランクはまだ1だ。
流石にこのままでは、ナルーガ王国を救った勇者としてはショボいので、急いでランクを上げなければならない。
ランクの上げ方には、大きく分けて二つある。
一つ目は、各ランクで決められた数のクエストをこなす事。ちなみにクエストには、『討伐・捕獲』、『採集』があるが、どちらも平等にこなさなければランクは上がらない。
二つ目は、ダンジョンを攻略する事。イドナには、数多くのダンジョンが生成されていて、その数は年を重ねるごとに、増えたり減ったりしている。
そして、厄介な事が、同じダンジョンにも『タイプ』が存在し、基本的に、『1ダンジョンに4タイプ』だ。このタイプというものは、四季のように一年を通して姿を4回変える。例えば、もしも、1ダンジョンに2タイプ存在するとなると、春から夏は、階数の少ないダンジョン。秋から冬は、形状を変えて、階数がとても多いダンジョンへと、姿形が変わったりする。
そのため、一度攻略達成したダンジョンでも、タイプが変わればそのダンジョンは、未攻略となってしまうのだ。
それに、ダンジョンを攻略すれば、必ずしもランクが上がるというわけではない。何故なら、未攻略のダンジョンをクリアするのと、攻略済みのダンジョンをクリアするのとでは、難易度が極端に違ってくるからだ。
だから、未攻略のダンジョンは、一つでもクリアすれば、ランクは上がる。それに対して、攻略済みのダンジョンは、最低三つクリアしないと、ランクは上がらない。
この二つの方法が、主なランクの上げ方だ。難易度的には、クエストを幾つかクリアしてランクを上げる方法の方が、簡単だろう。
「というわけで、今回は少し難しめのクエストを受注しようぜ」
リョウは歩きながら、サクラに話しかける。
サクラは現在、あの巨大なドラゴンを倒した時のような、純白の鎧に身を包んでいる。その姿は、道にちらほらいる冒険者達からも、一目おくような美しさであり、中には美しい騎士に並んで歩いているリョウに向かって、中指を立てて過ぎ去っていく冒険者もいた。おそらく、女神のような美しさのサクラと会話をしているリョウに、爆ぜろと思っているのだろう。
「え、でも、決められた数のクエストを平等にこなせば良いんだから、わざわざ難しいクエストを受けなくても良いんじゃないの?」
「いや、難しいクエストを受けたほうがいい、もしかしたらサクラの事だから、『飛び級』ができるかもしれない」
「とびきゅう?」
リョウは、サクラに『飛び級』の説明を始める。
「『飛び級』っていうのは、そのランクに見合わないような強い魔者を倒したり、希少なアイテムを発見したりすると、一気にランクが、二つ、三つ上がる事だよ。サクラのレベルなら、多分飛び級を狙えるんじゃないか?」
スバルの説明に、サクラはこくりこくりと頷く。
「ちなみに、ランク100越えを達成している輩のほとんどは、飛び級でランクを稼いでいるナビ」
そこで、二人の後ろを浮遊しているナビどらごんが口を挟む。尚、『猟犬』ことパイスも、飛び級でランクを稼いでいた。(今は診療所で治療を受けている)
「もしかしたら、サクラもあっという間にランク100越えをするんじゃないか?」
「そうかもしれないナビね。ランク100越えを達成している冒険者は、サクラと同じ無属性持ちが多いナビ」
将来を期待されるサクラは、ちょっと照れくさくなる。とはいえ、今のサクラはユニコーンを取り込んでいるので、雷属性に近い状態だ。
「そういえば、スバルはランクは何?」
「俺か? 俺は99だ」
99といえば、あと少しで100ランク越えだ。100ランクを越えれば、上級冒険者として、『裏姿』を持てるようになる。
しかし、そこでナビどらごんが、「スバル、もう既にランク99はとっくの昔に達成してるのに、どうしても100になろうとしないナビ」と言う。その言葉を聞いたリョウは、「い、いやぁ、有名になるの怖くてさ」と、頭を掻きながら不器用な笑みを作る。
それを見て、サクラはランク100にしない理由を、悟る事ができた。それは、ランク100になって有名になってしまえば、裏切りの勇者だと感づかれる確率が高くなるからだ。だから寸前の99で止めているのだ。
「そ、それより、ほら、見えてきたぞ」
レンガ造りの平屋が、一行の目に見えてくる。これが冒険者ギルド。
と、そこで、ドンと、リョウの右肩に人の肩がぶつかる。その人は、リョウに謝りもせずに、すぐさま通り過ぎ去ってしまった。黒いローブを着て、頭にフードを被っていて、顔はよく見えなかったが、その後ろ姿を、リョウは立ち止まって眺めていた。
「……あいつ…………」
「何やってるナビ? 早く来いナビ!」
「…………んあぁ、すまん」
リョウは、昔戦友だった、フェニックスの香りを、微かに感じ取った。
(いや、まさかな)
だが、もうフェニックスは死んでしまっている。この世にいるはずがない。
リョウは、気のせいだろうと思いながらも、フェニックスの姿を思い出して、ギルドの中に入っていった。
◆
冒険者ランク183。炎属性の薙刀使い。名をインダル・ボアホス。裏姿は『炎の蛇』。
彼は今、新たに現れた未攻略ダンジョン。『エムズ・ワールド』を攻略する為に、ナルーガ王国の冒険者ギルドにて、各パーティからドラフトしていた。
『エムズ・ワールド』と呼ばれるダンジョンは、難易度がかなり高いので、ナルーガ王国に滞在している冒険者パーティから、選りすぐりのパーティを作っていた。
「あと一人」
このダンジョンは、内部の狭さ的には、十人程度が限度だ。そして、現在は彼を含めて、九人が選択済みだ。
インダルは、雷属性を持つメンバーが少ないので、雷属性を選出したかったが、生憎、この場にはもう雷属性を持つものがいない。
仕方なく、他の属性を持つメンバーを選出しようとしたその時……
「待て! そこのもの!」
と、ギルドの入り口を指差した。そこには、リョウ、サクラ、ナビどらごんがいた。そして、指が刺された方向には、純白の騎士、サクラがいた。
「お主、属性は何ぞ」
指を刺されたサクラは、突然の事で、驚いていたが、質問に答える。
「無属せ……」
「彼女は雷属性です」
だが、サクラの言葉を遮り、リョウが発言した。何故かリョウは、誇らしげな顔をしていた。
「ふむ、よし、お主が十人目よ!」
「え? え?」
勝手に話を進められ、サクラはうまく整理できていない。両手を半分広げて、あたふたしていた。
「これより、新ダンジョン、『エムズ・ワールド』の攻略作戦会議に入る!」




