十九話 四剣士
「大変ナビ!王都の北に突然巨大なドラゴンが現れたナビ!」
爆発音が、辺りに鳴り響き、大地が振動する。
爆発音は、もちろんすぐに収まったが、地震はまだ続く。
そんな状況で、スバルは冷静に揺れが収まるのを待っていた。
ちなみに私は揺れた時、小さくて短い悲鳴を漏らした。
「ああ、分かった。…行こう。」
地震が収まった時、スバルが言い、膝を立てて立ち上がろうとする、が…
「いっ!?」
「スバルはまだダメだよっ!」
そう、スバルはあの怪物との戦闘で、今は、なんとか意識を取り戻しているが、身体の方は全く回復していない。
「スバル、お前の怪我は、少なくとも一週間はたたないと治らないらしいナビ」
「なんだと!? ……そんな……」
怪我が治る時間が長すぎるのを聞かされ、スバルは驚きを隠せないでいる。
「だから、スバルには大人しく寝ててもらうしかなさそうナビ。今、この状況じゃあ、猫の手でも借りたいくらいだから、仕方ないけどサクラだけ連れてくナビ」
「…ッ!クソ… 仕方ないのか…」
「私なら大丈夫だよ。スバル。私、あのドラゴンを倒して帰ってくるよ!」
「……ああ、分かった。サクラ、間違えて死なないようにな」
「分かってるって!」
私は笑顔で右腕を前に出し、親指をたてる。
ここだけの話。自分だけで行くのは、本当はものすごく心配だ。でも、スバルの期待に応えてみせる。
スバルが「俺を信じろ」と言わんばかりの事をしたように、私もスバルに信じてもらいたい。
ーースバル…絶対帰ってくるよっ!
「さあ、早く行こうナビ!あまり時間がないナビ!」
「うんっ!行こうっ!ナビーちゃんっ!」
そう言って、私とナビーちゃんは、部屋の扉を勢いよくあけて、王都の診療所を飛び出していった。
☆☆☆
俺は、サクラとナビどらごんを見送った後、魔法が使える程回復しているか試してみた。
いつものように魔法陣から『精神召喚の杖』を取り出してみると、何も問題なく普通に取り出せた。
しかし、杖を取り出した時に、あることに気づいた。
そのあることとは…
☆☆☆
妖刀『龍滅』の、二つ目の能力とは…
「斬撃」
ナルーガは、空中に、大きく刀を振り下ろした。
すると、やはり斬撃した後に残る青い光。まるで、刀を筆代わりに書きぞめでもしているかのようだ。
だが、今回は、『爆発』を発動するわけではない。
「実現」
青い光の斬撃が、より一層光を放つ。
そして、ナルーガはそれを確認すると、崖から空中に向かって身を投げた。
と、思われたのだが、なんと先ほど描いた斬撃に足を付いて走っている。
そのまま、斬撃の切れ端に向かって一直線に走っていき、切れ目のところで雄叫びをあげながら跳ぶ。
勢いよく飛んで、そのままドラゴンに向かって接近していく。
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
刀を空中で、両手に掲げドラゴンの背中に最大まで接近した時、一気に振り下ろす。
体を傾け、広範囲の肉に刃を入れる。
体を捻って肉を下へ、下へと斬っていく。
赤黒い血が、勢いよく飛び出して行き、辺りに血の雨を降らせる。
ズザザザザザと、降下しながら斬っていき、ドラゴンの尻尾辺りで刀を抜き、フィニッシュで尻尾に刺し、落下の反動を抑える。
ーーやっぱり肉が分厚い…
ドラゴンは、少しは呻いたが、それだけだった。
ナルーガは地面に着地する。と、ドラゴンの切り裂いた跡が、縮まっていき、傷を塞ごうとしている。
「させるかっ!『爆発』っ!」
指を鳴らすと、切り裂いたところから爆発していく。
「グァァァァァァァッ!」
「よしっ!効いてるッ!」
ドラゴンが、大きな呻き声をあげながら、辺りに肉塊や血をばらまいている。
多少のダメージにはなっただろう。
「うわ…グロい…」
「本当に妖刀って感じだな」
「一人であれほどのダメージを与えるとは、あの若造、すごいのぅ」
そう言っているのは、初老の、鎧の上からでもいい体つきをしていると分かる、無精髭の男。
金髪の、チャラい容姿の、青いマフラーを巻いて、革の鎧をしている男。
真っ白なストレートヘアーで、整った顔立ちの、革の鎧をしている女だ。
他にも、赤いベストに身を包んだ、赤髪の身軽な男がいる。
全員冒険者で、同じパーティだ。
パーティ名は「四剣士」。
その名の通り、剣士四人で固めたパーティである。
「さて、わしらも若造一人に負けてはおられん」
「ああ、ジジイの言う通りだ。いくぞ!」
「「了解ッ!」」
赤髪剣士の合図で、他の剣士は一斉に散る。
赤髪は、そこにとどまったまま…
「属性開放、炎ッ!
『紅蓮の剣』ッ!」
赤髪が、腰に下げている鞘から炎が吹き出すように長剣が抜かれていく。
この剣の属性は火属性だ。剣に炎が渦巻きながら纏っている。
「属性開放、水!変換、氷ッ!『渦巻く刃』ッ!」
一方女剣士の方は、鞘から水しぶきを放ち、長剣を抜刀して、正面に両手で構えると、刃が根元から、パキパキという音をたてながら、ゆっくりと、氷を帯びていく。
剣の属性は水だが、氷へと変換している。
赤髪剣士も、女剣士も、一斉にドラゴンへと向かっていく。
ドラゴンに限りなく近づいたところで、二人とも常人ではありえないような跳躍を見せ、そして…
「『創造の炎』ッ!」
「『絶対零度』ッ!」
二人同時にドラゴンの膝辺りへと切りつける。
その斬撃は、斜めに十字、つまりクロスを描いた。
炎の攻撃は傷を広げ、氷の攻撃は自然治癒を許さない。
それに気づき、ドラゴンが尻尾を振って、二人をなぎ払おうとした。
しかし、またもや二人は超人級の大ジャンプを見せた。二人の下を、太くて巨大な尻尾が通過する。
二人は攻撃を避けつつ、再び攻撃を開始する。
「『不死鳥の舞』」
赤髪は、空中を蹴って加速する。
ドラゴンに一直線に接近し、接触する前に体を捻り、背中を前にする。
そしてドラゴンに、片手で、振り向きざまに炎属性の斬撃を入れ、横に傷を入れる。
そのままドラゴンの傷を蹴って、斜め上後方に跳躍。
一定の距離を持てたら、長剣を振り下ろし、その重力に従って赤髪の体は前に回転する。
回転しながら接近すると、振り下ろすような形でドラゴンの肉に引っ掛け、そのまま降下。
豆腐を切るように気持ちよく斬れていき、肉に刃が刺さったまま地面に着地。刃を抜き取る。
ドラゴンの皮膚は、まるで火傷でも負ったかのように焼け焦げている。
その様子を、はるか上空で見上げる女剣士。赤髪が、攻撃をしているときに、ドラゴンの皮膚などを使って跳躍していた。
女剣士は、左手を広げて前に差し出し、その時に壁を蹴っての跳躍の上昇力が無くなったため、そのまま一気に降下。
降下しながらも、ゆっくりと剣を天に掲げ、両手持ちにし、ドラゴンの先ほどできた傷に向かって斬撃。
ただ見ただけでは、対象物が何もない状態で、剣を振り下ろしたように見えるが、これはあくまで、ただの斬撃ではない。
斬撃の、衝撃波。
「『氷の波』」
パキィッ!
その衝撃波を浴びた傷は、一瞬にして氷漬けとなった。つまり、これで、ドラゴンの恐ろしいほどの自然治癒能力を封じた。
「ナイスだ。キリア」
「これくらい朝飯前よ。トーガ」
☆☆☆
「まさか、あんなやり手のパーティが居るとは思わなかったナビ」
「確かに、すごいね。あの二人を見ただけでも、十分強さが感じられるよ」
私とナビーちゃんは、今、ドラゴンに驚異的なダメージを与えた二人を、安全な遠いところで見ながら話していた。
剣士特有の能力。属性。
この属性については、魔法攻撃でも用いられるのだが、魔法攻撃は、詠唱や、技の種類によって、出す攻撃の属性が決まってくる。
例えば、地獄火炎は、上級魔法炎属性攻撃。など。
つまりは魔法攻撃では、杖は、属性を持たないが、杖から出す魔法攻撃は、色々な種類を持っているということ。
しかし、剣の場合は、魔法攻撃とは少し違う。
魔法攻撃によって属性が変わるのではなく、剣そのものが属性を持っているのだ。
例えば、あの赤髪剣士。
さっきから、炎属性の攻撃ばかりを出している。それは、炎属性の能力を宿している武器を使用しているからだ。
しかも、あの強さ。
恐らくあの武器で、属性を極限まで解放していると思う。女性剣士も同じだと思う。
気になるのが残りの二人…
「あのパーティは、『四剣士』と言って、数々の難関クエストをこなしてきた、超一流のパーティナビ。その中でも、あの無精髭の大男はとんでもないナビ。冒険者歴43年。現在60歳。雷属性で、普段は穏やかだけど、戦闘になると、凄まじく凶暴になり、その凶暴さから、ついたあだ名が…」
私はナビーちゃんが口にした言葉に、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「猟犬…」




