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ただの召喚士(本人自称)  作者: 進夢 ロキ
第2章 ナルーガ王国の異変
20/52

十七話 黒雲の中で流星が走る

更新遅れてすみません。

ナルーガ達が、茶番劇を繰り広げている頃の話だ。

真っ二つに斬られた、怪物だった肉塊から、血が流れ、硬い地面に染み込む。


その血から、妙な赤黒い、煙のようなモワモワしたものが、漂っていた。

その、煙のようなものは、階段型になっている通路の空中を、ゆっくりと伸びていた。


音も立てずに、洞窟の外へと向かって伸びている。

その煙のようなものに気づく人は、洞窟内にはいなかった。


やがて、煙のようなものは、洞窟の外に出た。

根っこは肉塊の血に生えていたが、その根っこは、肉塊から離脱し、上り階段を漂っている。


☆☆☆


「…バルッ……バルッ」



……………ピチャン……



今、俺は、彷徨っていた。

長いこと彷徨っていた。

何故彷徨っているか、俺にはわからない。

だが、これだけははっきりと分かる。


恐らくここは、あの世とこの世の境目だと思う。


「誰か」


と言っても、自分の声と、足音が響くだけで、他になにも聞こえない。

それに、広くて前にも後にも、黒しか見えない。自分の影も無い。

どこが地面で、どこまでが天井かも分からない。

そもそも天井があるのかどうかも分からない。


辺り一色、黒。

そして、道は全て平面。坂も無いし、凹凸もない。


まぁ、ここが、あの世とこの世の境目とは限らない。だが、察した。

察する事ができた。


この環境で、何故俺は歩いて、彷徨っているのだろうか。

自分が歩いているのに、歩いている理由が分からない。


ただ、ただ、ひたすら歩いている。

数々の疑問を抱えながら、止まる事なくただひたすら歩いている。


…………ピチャンッ…………


たまに聞こえてくる、水の雫が落ちる音。


「……バルッ……バルッ……スバ……

………スバルッ………」


☆☆☆


煙のようなものは、洞窟から抜け、次に、ゆっくりとふわふわしながら、天へと向かおうとしている。


その、天に浮く煙の下で、ドドドドッと、何者かが大勢で階段を駆けあがってくるような音がする。


やがて、洞窟から、甲冑を着た男が駆けてくる。

それに続き、その男と同じような甲冑を纏った男達が、大勢出てくる。

皆、息を切らしながらも走っている。


「スバル様を早く教会へ運べ!」


そんな中、洞窟の中から少し高めの音程の声を発する男の声が聞こえてくる。

ナルーガ兵長、ダツノの声だ。

その他にも…


「スバル!もう少しだからっ、ねっ」


今度は可愛らしい女の声が聞こえてくる。少女の声だ。

現在、スバルと旅をしている、サクラだ。


そんな声が響いたすぐあとに、服がボロボロで傷だらけの男が、気を失った状態で、甲冑の男達に担がれて洞窟を出てくる。

召喚士、スバルだ。


洞窟から出てきて、もう、話しかけるタイミングが無いほどに、担がれたスバルが猛スピードで過ぎ去っていく。

そのすぐ後ろに、ダツノとサクラも、同じくらいのスピードで走っていく。


ゾロゾロと、洞窟から出てきた甲冑の男達は、あっという間に走っていき、後には、遅れてナルーガが走ってくる。


「やっぱり、まだこのカラダに馴染めてないな」


と、ナルーガ呟く。

ので、甲冑の男達のスピードについていけなかった。

だが、もっとついていけない者がいた。


「ちょっとぉっ!なんで誰もおぶってくれないのぉっ!…はぁ、はぁ」


ナルーガ王国王女、リーシアだ。

息を切らしながら、可愛らしく、パタパタと走ってくる。

彼女は、甲冑の男達、ましてやサクラよりも幼いし、走るのも苦手なので、甲冑の男達に、ずいぶん引き離されていた。


「私、王女なのに…私、王女なのにぃ…」


そう呟き、リーシアは頬を膨らませる。

そこで、ナルーガが立ち止まり、引き返す。


「僕がおぶってく?」


ナルーガがリーシアに手を差し伸べる、

リーシアは、いきなり差し伸べられた手に、驚き、足を止める。

ふと、ナルーガの顔を見上げると、心配しているような表情をしている。

それを見て、リーシアは顔が少し赤くなり、本当はおぶってもらいたいが、照れ隠しなのか、その手をパチンッと叩く。


「い、いいわよっ!一人で歩けるもんっ!」

「そう?…じゃあ、悪いけど、先、行ってるね」


そう言い、ナルーガはリーシアからどんどん遠のいていく。


リーシアは、また一人で走り出すが、すぐに息が切れてしまい、うつむいてしまう。

どんどんと置いていかれるのに、寂しくなり、泣きそうになる。


「……悪いと思うなら、先に行かないでよ……」


そう、呟く。

走るのが辛くなり、止まって、手を膝につく。

とうとう、涙が零れ落ち、地面に染み込む。


八回くらい、息を吸って吐くのを繰り返し、再度、走り出そうと、膝から手を離し、正面を見る。


すると、リーシアの目の前に、大きな背中が現れる。

リーシアはきょとんとする。


「やっぱり歩けないんじゃん。…ほら」


その背中は、ナルーガの物だった。

ナルーガは、しゃがんで、手を、腰の辺りに出し、リーシアを見つめている。

リーシアは見つめられて、照れ臭くなって、ナルーガから目をそらす。顔がまた赤くなる。


「ほら、早く」

「いい」

「え?」

「いいってば」

「……………はぁぁ……」


ナルーガが呆れたように溜息をつくと、立ち上がり、リーシアに、去ってしまうのか。と思わせた。

しかし、ナルーガはリーシアの背後に回り、静かに…


「ふぇっ!? あ、ちょっ……」


ゆっくりと横抱きをする。

そのまま、甲冑の男達が向かった方向へと走っていく。

リーシアは、抱かれながらも依然として顔を赤らめていた。それどころか、よりいっそう、深い赤になっていた。


(ーーお…重っ….…)


☆☆☆


「…バルッ……スバルッ」


………ピチャン………


俺は、依然として、道なき道を、黒い世界を歩っていたのだが、さっきから聞こえてくる、水音や、バルッという、どこか聞き覚えのある声で、今、どんな状況なのかを把握した。


「俺は、あの怪物に、やられて、そして、………死にかけてる?」


初めて、勝手に歩いていく足を止めれた。

大抵の疑問が、水音と、聞き覚えのある声で、一気に晴れた。


「なるほど…つまり、こうしちゃいられないっていう事だな。早く俺の世界…って言うと微妙なんだが、とにかく俺の世界に戻らないと…」


しかし、どうやって出ればいいんだ。

この、辺り一面、一色の黒で、どっちが南でどっちが東か分からないようなこの世界を。


俺は、その場に足をクロスして座る。

腕を組み、目をつむり、考え込む。

なんか、真っ黒な世界で目を瞑るのも変な感じだ。瞑っても開けても真っ黒なんだし…


とはいえ、考え込むためには必要か。

俺は、とりあえずひたすら考える。


……………………………。



やっぱり考えても、こんな未知の空間から抜け出せる糸口が見当たらない。

考えるだけムダか。

とりあえず立ち上がる。


「バルッ……バルッ……」


まただ。

また、聞き覚えのある声が…


「……バルッ……バルッ……バルッ…

スバッ……バ……スバッ……スババ」


ああ、もう意味がわからない。

ところところで声が途切れて、なにを言っているかわからない。


とりあえず、もう一回きいてみるか。


「……バルッ……バルッ……スバッ……スバッ…………ルッ……スバ……」


うん?

今、俺を、呼んだような…

呼ばれてる?どこから?

天から?地から?

あっちから?そっちから?

どこからだ?


「…スバルッ……きてッ……起きてッ」


起きて…?

…………うん、確信した。

この声は、サクラだ。


聞き覚えのある、高めの声。

タメ口。

サクラ…助かったのか。

もしかして、助けに来た?

おう。なるほど。


「サクラッ!無事か!」


叫ぶようにして言う。

俺の声が、辺りに響き渡る。


「……スバルッ!スバルッ!起きてッ!目を覚ましてっ!」


また、サクラの声が聞こえてくる。

が、さっきの声とは明らかに違う。

さっきは途切れ途切れで声が聞こえていたが、今度ははっきりと聞き取れる。


「サクラッ!…待ってろ!すぐに起きるっ!」


くそ!じっとしていられない!

とりあえず、前へ、前へと走ろう。

早く、こんなとこ、抜け出して、サクラに会いたいッ!


右足を前に出して、走り始める。

とにかく走る。全力で走る。


「はぁはぁ…あっ、はぁはぁッ」


息が、切れても、走りつづける。

走って走って走って走って…

俺を呼ぶサクラの元へっ!


「サクラァァっ!」


走って走って走って走って。

内臓が飛び出すくらい走って。

走って走ったその先に…


黒の世界の中に、一点の光を見つけ…


「見つけたぁぁッ!うおおおおっ!」

この作品の、3話分の修正が終わりました。

今日中に編集します。

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