十七話 黒雲の中で流星が走る
更新遅れてすみません。
ナルーガ達が、茶番劇を繰り広げている頃の話だ。
真っ二つに斬られた、怪物だった肉塊から、血が流れ、硬い地面に染み込む。
その血から、妙な赤黒い、煙のようなモワモワしたものが、漂っていた。
その、煙のようなものは、階段型になっている通路の空中を、ゆっくりと伸びていた。
音も立てずに、洞窟の外へと向かって伸びている。
その煙のようなものに気づく人は、洞窟内にはいなかった。
やがて、煙のようなものは、洞窟の外に出た。
根っこは肉塊の血に生えていたが、その根っこは、肉塊から離脱し、上り階段を漂っている。
☆☆☆
「…バルッ……バルッ」
……………ピチャン……
今、俺は、彷徨っていた。
長いこと彷徨っていた。
何故彷徨っているか、俺にはわからない。
だが、これだけははっきりと分かる。
恐らくここは、あの世とこの世の境目だと思う。
「誰か」
と言っても、自分の声と、足音が響くだけで、他になにも聞こえない。
それに、広くて前にも後にも、黒しか見えない。自分の影も無い。
どこが地面で、どこまでが天井かも分からない。
そもそも天井があるのかどうかも分からない。
辺り一色、黒。
そして、道は全て平面。坂も無いし、凹凸もない。
まぁ、ここが、あの世とこの世の境目とは限らない。だが、察した。
察する事ができた。
この環境で、何故俺は歩いて、彷徨っているのだろうか。
自分が歩いているのに、歩いている理由が分からない。
ただ、ただ、ひたすら歩いている。
数々の疑問を抱えながら、止まる事なくただひたすら歩いている。
…………ピチャンッ…………
たまに聞こえてくる、水の雫が落ちる音。
「……バルッ……バルッ……スバ……
………スバルッ………」
☆☆☆
煙のようなものは、洞窟から抜け、次に、ゆっくりとふわふわしながら、天へと向かおうとしている。
その、天に浮く煙の下で、ドドドドッと、何者かが大勢で階段を駆けあがってくるような音がする。
やがて、洞窟から、甲冑を着た男が駆けてくる。
それに続き、その男と同じような甲冑を纏った男達が、大勢出てくる。
皆、息を切らしながらも走っている。
「スバル様を早く教会へ運べ!」
そんな中、洞窟の中から少し高めの音程の声を発する男の声が聞こえてくる。
ナルーガ兵長、ダツノの声だ。
その他にも…
「スバル!もう少しだからっ、ねっ」
今度は可愛らしい女の声が聞こえてくる。少女の声だ。
現在、スバルと旅をしている、サクラだ。
そんな声が響いたすぐあとに、服がボロボロで傷だらけの男が、気を失った状態で、甲冑の男達に担がれて洞窟を出てくる。
召喚士、スバルだ。
洞窟から出てきて、もう、話しかけるタイミングが無いほどに、担がれたスバルが猛スピードで過ぎ去っていく。
そのすぐ後ろに、ダツノとサクラも、同じくらいのスピードで走っていく。
ゾロゾロと、洞窟から出てきた甲冑の男達は、あっという間に走っていき、後には、遅れてナルーガが走ってくる。
「やっぱり、まだこのカラダに馴染めてないな」
と、ナルーガ呟く。
ので、甲冑の男達のスピードについていけなかった。
だが、もっとついていけない者がいた。
「ちょっとぉっ!なんで誰もおぶってくれないのぉっ!…はぁ、はぁ」
ナルーガ王国王女、リーシアだ。
息を切らしながら、可愛らしく、パタパタと走ってくる。
彼女は、甲冑の男達、ましてやサクラよりも幼いし、走るのも苦手なので、甲冑の男達に、ずいぶん引き離されていた。
「私、王女なのに…私、王女なのにぃ…」
そう呟き、リーシアは頬を膨らませる。
そこで、ナルーガが立ち止まり、引き返す。
「僕がおぶってく?」
ナルーガがリーシアに手を差し伸べる、
リーシアは、いきなり差し伸べられた手に、驚き、足を止める。
ふと、ナルーガの顔を見上げると、心配しているような表情をしている。
それを見て、リーシアは顔が少し赤くなり、本当はおぶってもらいたいが、照れ隠しなのか、その手をパチンッと叩く。
「い、いいわよっ!一人で歩けるもんっ!」
「そう?…じゃあ、悪いけど、先、行ってるね」
そう言い、ナルーガはリーシアからどんどん遠のいていく。
リーシアは、また一人で走り出すが、すぐに息が切れてしまい、うつむいてしまう。
どんどんと置いていかれるのに、寂しくなり、泣きそうになる。
「……悪いと思うなら、先に行かないでよ……」
そう、呟く。
走るのが辛くなり、止まって、手を膝につく。
とうとう、涙が零れ落ち、地面に染み込む。
八回くらい、息を吸って吐くのを繰り返し、再度、走り出そうと、膝から手を離し、正面を見る。
すると、リーシアの目の前に、大きな背中が現れる。
リーシアはきょとんとする。
「やっぱり歩けないんじゃん。…ほら」
その背中は、ナルーガの物だった。
ナルーガは、しゃがんで、手を、腰の辺りに出し、リーシアを見つめている。
リーシアは見つめられて、照れ臭くなって、ナルーガから目をそらす。顔がまた赤くなる。
「ほら、早く」
「いい」
「え?」
「いいってば」
「……………はぁぁ……」
ナルーガが呆れたように溜息をつくと、立ち上がり、リーシアに、去ってしまうのか。と思わせた。
しかし、ナルーガはリーシアの背後に回り、静かに…
「ふぇっ!? あ、ちょっ……」
ゆっくりと横抱きをする。
そのまま、甲冑の男達が向かった方向へと走っていく。
リーシアは、抱かれながらも依然として顔を赤らめていた。それどころか、よりいっそう、深い赤になっていた。
(ーーお…重っ….…)
☆☆☆
「…バルッ……スバルッ」
………ピチャン………
俺は、依然として、道なき道を、黒い世界を歩っていたのだが、さっきから聞こえてくる、水音や、バルッという、どこか聞き覚えのある声で、今、どんな状況なのかを把握した。
「俺は、あの怪物に、やられて、そして、………死にかけてる?」
初めて、勝手に歩いていく足を止めれた。
大抵の疑問が、水音と、聞き覚えのある声で、一気に晴れた。
「なるほど…つまり、こうしちゃいられないっていう事だな。早く俺の世界…って言うと微妙なんだが、とにかく俺の世界に戻らないと…」
しかし、どうやって出ればいいんだ。
この、辺り一面、一色の黒で、どっちが南でどっちが東か分からないようなこの世界を。
俺は、その場に足をクロスして座る。
腕を組み、目をつむり、考え込む。
なんか、真っ黒な世界で目を瞑るのも変な感じだ。瞑っても開けても真っ黒なんだし…
とはいえ、考え込むためには必要か。
俺は、とりあえずひたすら考える。
……………………………。
やっぱり考えても、こんな未知の空間から抜け出せる糸口が見当たらない。
考えるだけムダか。
とりあえず立ち上がる。
「バルッ……バルッ……」
まただ。
また、聞き覚えのある声が…
「……バルッ……バルッ……バルッ…
スバッ……バ……スバッ……スババ」
ああ、もう意味がわからない。
ところところで声が途切れて、なにを言っているかわからない。
とりあえず、もう一回きいてみるか。
「……バルッ……バルッ……スバッ……スバッ…………ルッ……スバ……」
うん?
今、俺を、呼んだような…
呼ばれてる?どこから?
天から?地から?
あっちから?そっちから?
どこからだ?
「…スバルッ……きてッ……起きてッ」
起きて…?
…………うん、確信した。
この声は、サクラだ。
聞き覚えのある、高めの声。
タメ口。
サクラ…助かったのか。
もしかして、助けに来た?
おう。なるほど。
「サクラッ!無事か!」
叫ぶようにして言う。
俺の声が、辺りに響き渡る。
「……スバルッ!スバルッ!起きてッ!目を覚ましてっ!」
また、サクラの声が聞こえてくる。
が、さっきの声とは明らかに違う。
さっきは途切れ途切れで声が聞こえていたが、今度ははっきりと聞き取れる。
「サクラッ!…待ってろ!すぐに起きるっ!」
くそ!じっとしていられない!
とりあえず、前へ、前へと走ろう。
早く、こんなとこ、抜け出して、サクラに会いたいッ!
右足を前に出して、走り始める。
とにかく走る。全力で走る。
「はぁはぁ…あっ、はぁはぁッ」
息が、切れても、走りつづける。
走って走って走って走って…
俺を呼ぶサクラの元へっ!
「サクラァァっ!」
走って走って走って走って。
内臓が飛び出すくらい走って。
走って走ったその先に…
黒の世界の中に、一点の光を見つけ…
「見つけたぁぁッ!うおおおおっ!」
この作品の、3話分の修正が終わりました。
今日中に編集します。




