十六話 闇色の平和
「ふぅぅぅ…」
ナルーガは怪物との戦闘に勝利し、安心感からか、盛大なため息をついた。
全身から力が抜け、ナルーガはその場に倒れこむ。
そこへ、リーシアが、小走りで寄ってきて、ナルーガの前でしゃがむ、と同時に、 ナルーガの表情を、覗き込むように顔を傾ける。
「大丈夫?」
「うん、なんとか、ね。心配してくれてありがと」
「べっ!別に!心配してるわけじゃないわよ!」
リーシアは腕を組んで目を泳がせる。
ほおが、リンゴのように赤くなっている。
ナルーガは気にせず立ち上がり、なぜかきている服についた汚れを、手で三回叩いて汚れを除去する。
「あ、そういえば!借りてた剣!」
ナルーガは思い出し、先ほど怪物が突進してきた方を見る。
剣は、意外とすぐに見つかった。のだが、真っ二つに折れていた。
それを見て、ナルーガはめまいがした。
「あれ、借り物なんだけど、どうしよう…」
「そりゃあもちろん、あなたが弁償するしかないでしょう?」
「ですよねぇ〜…」
今更どうにもならないと諦める。
「スバルゥーー!」
突如響いた甲高い声に、ナルーガたちは驚く。
その他にも、たくさんの人数で階段を降りてくる足音も聞こえてくる。
そして、登り階段に一人の少女が現れる。
サクラだった。
☆☆☆
時は、遡ること、ナルーガが目を覚ます頃のこと。
私は洞窟を出たところだった。
「はぁ、はぁ…」
夢中で階段を駆け上ったばかりで、息が切れている。気がつかなかった。
膝を曲げ、そこに手をつき、うつむく。
顔からどんどん汗がこぼれ落ちていく。
いやいや、なにを休んでいるんだ私は。早く、この事態を王都に戻って伝えないと…
身体が悲鳴をあげているのに、それを殺し、また走り出そうとした時だった。
「どうしたんですか?冒険者殿」
私に声をかけてきたのは、ナルーガ王国総合兵長、ダツノさんだった。
今、ちょうどこの洞窟を探索するところだったらしい。
私は、気持ちが抑えきれなくなり、ダツノさんへ掴みかかり、揺らしながら言う。
「スバルがッ…スバルがッ!スバルが危険なのッ!早く助けに行かないとッ!スバルが……スバルがぁッ!」
「お、お待ちください冒険者殿!まずは落ち着いて!一体…何があったのですか?」
ダツノさんにそう言われ、ようやく私は落ち着くことができた。
そして、今度は冷静に、2回ほど大きく呼吸してから言う。
「私の仲間が、危険なんです。怪物に襲われて、私を、逃がすために囮になってくれて、今…一人で…戦ってます…」
「そうなのでありますか!?ならば、すぐに入って助けにいかないと…」
「行きましょう!早くしないと!」
短く会話をした後、すぐに振り向き、私を先頭に、連れの兵士たちは階段を下っていく。
私は、息が切れているはずだったが、関係なかった。
だってスバルが、高いところで綱渡りしているほど、窮地に立たされているのだもの。
疲れとか、息切れとか、全く関係ない。
ただ、ひたすら、無我夢中に、走る。
待ってて、スバル。
あなたはッ、私が!私達がッ!
☆☆☆
「スバル!どこ!スバル!」
現れた少女は、大声で、”スバル” と言われる物を探す。
探している時の顔は、泣きそうで、これはただ事じゃないと、ナルーガとリーシアは思った。
やがて、少女は、あるところで、慌ただしく動いていた体を硬直させる。
「スバル!」
そのところとは、先ほどナルーガが剣を借りた人のもとであった。
少女は、その姿を見つけると、目に涙をにじませ、口をへの字にして、今にも泣き出しそうな表情をして、剣を借りた人のもとへ歩み寄る。
壁に背をもたれ、目を瞑っていて、傷だらけで血が出ている身体を、少女は少しだけ持ち上げ、そして、胸に耳を当てる。
すると、しばらくしてから少女の顔は崩れ、その人の胸に顔を押し付け、赤ん坊にも負け無いくらいの大声で泣き出した。
泣き始めた頃、苦しそうに階段を下ってくる、武装した人たち。
そのうちの1人が、ナルーガとリーシアで並んでいるところを見て…
「王女様ァ!」
と叫ぶ。
すると、武装人は一斉にこちらを見て、「おう王女様だ!」「ご無事でしたか!」「よかったぁ!」などの声が響く。
王女様というのは、リーシアの事である。リーシアは、「あ、あなたたち」
と、平然と答える。
一方で、「おい!あいつ殺害犯じゃないか?」「殺害犯だ!」「捕まえろ!」
などの声も響く。
殺害犯、といったものは、ナルーガのことを指差していた。
ーーえ?どういうこと?
ナルーガは困惑を重ねる。
「観念しろ!」
「抵抗してもムダだぞ!」
「殺してやる!」
「「「うぉぉぉぉっ!」」」
武装人は、剣を構えて、ナルーガに突撃してくる。
ーーな… くそ、やるしかないのか?
ナルーガは刀の柄を握る。
だが…
「やめなさい!」
なんと、リーシアが、ナルーガの前に立ち、身体を大の字にし、仲裁に入ってきた。
その行為に、武装人は、
「なにをするんですか王女様!」
「そのものはお父様を殺したんですよ!」
「そこをどいてください!」
などと言う。
それに対し、リーシアは反論する。
「違うわ!こいつはお父様を殺してない!あれは人間操作にかかってたのよ!自分の意思でやったわけじゃないわ!これは本当よ!」
リーシアの迫力に、武装人達は圧倒される。
人間操作というのは、その名の通り、人間の頭を乗っ取り、操作してしまう魔法だ。
本当は、中身はナルーガなのだが、リーシアは、どうせ信じてもらえ無いと思い、嘘をつくことにした。
その嘘を、武装人達は信じてしまった。武装人達は、取り出していた剣を鞘に戻し、槍を構えた状態から、直立させて持ち、ナルーガも構えるのを止める。
それを確認すると、リーシアは構えていたが為に、態勢を低くしていたナルーガに、
「どうせ信じてもらえないから嘘ついたわ」
と、耳打ちする。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
そこに、また一人、階段を降りてくる人がいた。
息を切らしている、中年の男だ。
「へぇ…みんな、足が早すぎるぅ………あ!王女様!」
「ダツノ!」
リーシアは、友と、久しぶりに再開した時のような声を出す。
「いやー、王女様!ご無事でしたか!」
「えぇ、無事よ。……それよりダツノ、あの女の子はだれ?」
「はい?…ああ、はい!」
リーシアはずっと気になっていた。
あの、未だに泣いている少女は誰か。
「冒険者様です。名はサクラというらしいです」
「へぇ」
リーシアは頷きながら、スタスタとサクラに歩み寄った。
そして、座って泣いているサクラに問う。
「ねぇ、サクラ…さん?」
サクラは、依然として泣いたままだった。リーシアが問いかけても、もちろん反応がない。
「サクラさん!」
「…グズッ……わ、だじ?」
やっとサクラは反応し、顔についた涙をそのままに、振り向く。
サクラの目元は、泣きすぎで赤くなっていた。
「あなた、その人の恋人か何か?」
「こ、こっ!恋人!?恋人…だなんて…そんなッ!者では…ない、です」
リーシアはサクラが顔を赤く染めて、ひどく動揺したのを不思議に思うが、続ける。
「まぁ、どうでもいいけど、その人を助けたのは、あそこにいるナルーガだから、お礼ぐらいはしなさいよ…」
「本当ですか!?」
サクラは話を遮って、大きい声で言った。
それを聞くなり、ナルーガの処へトコトコと歩いて行き、手を握った。
「なっ、なにしてんっ!」
リーシアの声も届かず、サクラは話し始める。
「スバルを助けてくれて、ありがとうございます…」
ナルーガは、その、切ない瞳に見惚れてしまい、
「い、いやぁっ、そんなこと、別にお礼なんて…」
目が泳ぎ、口調もどこかかっこ悪くなった。
「ありがとうございます…」
サクラの瞳に涙が滲む。
ナルーガはなにもせず、黙って見とれる。
「スバルって、はっきり言って、ちょっと変だけど、優しいし、かっこいいし、頼れるひとなんです。…私、彼の事が大好きで、大好きで、すごく大切なんです。失ったら…どうしようかと思って…」
サクラの大粒の涙が、頬を伝って流れ落ち、雫となって、ナルーガの握られた手に落ちた。ジュッ… 蒸発した。
「本当に…ありがとうございます!この事は、一生忘れませんっ!」
サクラは頭を下げ、再度あげ、ナルーガの手にキスをした。そして手を離し、スバルの元へ戻っていく。
そしてナルーガは鼻血を流し、顔から白い煙をだし、気を失っている。
兵士達は、みんな歯を食いしばり、泣いていた。
一番感動していたのはダツノだった。泣きながら、頭を床になんどもぶつけている。秒速三回。
「何よ、ナルーガ、鼻血なんか垂らしちゃってぇっ!あの女ぁ…許さないぃ…」
一方リーシアは禍々しいオーラを放つ。
このオーラは、怪物以上であった。
「ナルーガ起きろっ!」
リーシアはナルーガの顔面に飛び膝蹴りを与える。
ナルーガはよろけ、目を覚ます。
すると、ナルーガはすぐさまリーシアに話をする。
「あっ、リーシア。いい夢見たんだ。
サクラさんと浜辺で手を繋いで歩く夢」
語り手側としては、ナルーガ、それ以上言うな。と言いたいところである。
なぜなら、リーシアが禍々しいオーラを放ちながら、ナルーガの胸ぐらを掴んでいるのだから。
「でさでさ、”ナルーガさんの事が好きです”って…あれ?リーシアどうしたの?」
ナルーガは気付いていない。
リーシアを怪物にしてしまったことを。
「ナルーガ、ちょっと刀貸して」
(刺激的な描写が多いので、このあと、どうなったかはご想像でお願いします)
この、平和でのどかな雰囲気の中、ある肉塊から、赤いオーラが外へ逃げ出していたことは、この中の人は知る由もなかった。
彼等全員が、これからもこのように、平和に過ごせる日は、こうなってしまった以上、二度とこないだろう。
後からgdgdでした。
すいません。飽きたらすみません。




