十四話 決められない者
更新遅れてすみませんっ!
(7/7)タイトル変更しました。
大脱出→決められない者
ここは、先ほど激闘があった広場。
まだ、兵士やらゴブリンやらの血は乾いていない。
そんな広場で、立ち上がる人影が一つあった。
「う、…うぅ…」
呻きながら、体をゆっくりと持ち上げる。
その人影は、大人、男。
驚くことにそいつは、王を殺した男であった。
と言っても、中身が違う。
中身は、五百年前、遊び半分で宝箱を開け、剣を握ってしまったナルーガだった。
「ここは…?」
目を開いて見た光景に驚き、ナルーガは目をパチパチさせる。
無理もないだろう。死んだと思っていたら、500年ぶりに目が覚めたのだから。
ナルーガは手を膝についてゆっくりと立ち上がり、辺りを見回した。
すると、ナルーガは思い出した。
「あの洞窟!?」
ナルーガは、ここが、刀を手にしてしまった場所だと、やっと気付いた。
それに、ここには見覚えがあったからだ。
「僕は、眠っていたのか?ここで…」
ナルーガは、一歩踏み出す。
ペチョ……
「ん?」
ナルーガは、何かを踏んだような感触に、下を向く。
「うわぁっ…なんだよこれ!」
ナルーガが踏んだものは、ウィザードゴブリンだったものの肉塊だ。
ナルーガはとっさに踏んでしまった足を浮かせ、振る。
「なにが、あったんだ?」
ナルーガが見る限り、ここには異臭が漂っているし、まだ乾いていないおびただしい量の血が、床に付いている。
これを見て、ナルーガは、まだ経験の浅い11歳の頭で真剣に考えた。
まず分かることをまとめた。
ここは昔入った洞窟。
血の量から、何か事件があったこと。
次に分からないことをまとめた。
なぜ自分は目覚めたのか。
なぜ自分は大人の姿なのだろうか。
なぜこのような事件がおこってしまったのか。
事件の内容は何か。
ナルーガが考えた限りでは、分かることより、分からないことの方が多いので、困った。
一番疑問なのが、なぜ、自分は大人の姿なのだろうか。
なぜ声が大人なのだろうか。
手も大きい。
足も大きい。
筋肉がついている。
見える景色も広がった。
このようなことから、大人になったということが分かったが、自分はなぜ大人の姿なのだろうか。
「……パパ…パパ…」
困って頭を悩ませていると、背後から小さい声が聞こえてきた。
涙ながらに、パパ、パパと、嘆く声。
ナルーガは、振り返って背後を見た。
そこには、ピンク色のドレスに返り血をかぶり、両手で顔を抑えながらしゃがんで震えている、8歳くらいの幼い女の子がいた。
「なぜ、…こんなところに…」
ナルーガは幼女に駆け寄った。
「君、どうしたの?大丈夫?」
少女の小さい身体に手を置いて、幼女の顔を見ようとする。
それに幼女は、痙攣したようにビクッと跳ねる。
「あ、ごめん…」
ナルーガは一旦幼女から距離を置く。
「君、名前は?」
ナルーガは幼女に名前を問う。
幼女は顔から両手を離し、ゆっくりと顔を上げる。
すると、その幼女は、まるで怪物を見るかのように目を大きく見開き、恐怖を覚える。
「キャァァァ!?」
突然の断末魔の如き声に、ナルーガは驚き、のぞける。
「やだ、ヤダヤダヤダヤダヤダッ!来ないでッ!何もしないでッ!」
幼女は、両手を顔の前で振りながら、後ろに退いていく。
転がっている死体にも気にせず、ブチャブチャと踏みながら退き、壁に背中が張り付く。
「ま、待って!落ち着いて!僕は何もしてないじゃないか!」
「ヤダ…来ないでッ!」
少女は、ナルーガを見たくないかのように目をつむり、涙を流して震えている。
ナルーガは困りながらも、母に歌ってもらった、迷子の子猫ちゃんを思い出し、犬の兵士さんと自分を照らし合わせて苦笑する。
だが、そんな暇などないのだ。
(早くこの子を説得しないと…)
「待って!落ち着いて!僕は、何もしないからさ…」
「……ホントに?」
「ああっ!ホント!ホントだよ。……だから、怖がらないで」
ナルーガの言葉に、少女の震えはゆっくりと止まっていく。
「やっとわかってくれた…」
ナルーガは、脱力したようにため息をつく。
そして、ナルーガはまだ慣れていない体を動かして少女に歩み寄る。
「君、名前は?」
「…知らないの?」
「ごめん、よく、知らない…」
「あなた…知らないで誘拐したの!?」
「誘拐?」
「あなた、私の、お父様を、殺して、私を担いでここまで誘拐してきたんじゃないの?」
「…殺す?…この子を誘拐?」
無論、ナルーガは誘拐などやった覚えがない。
ましてや殺人などやる気すら起こらない。
「なんか、すっかり覚えてないみたい」
「ごめん、よく、思い出せないや」
「あなた、私を担いで逃げてる時、ものすごい怖い顔して逃げてたのに、なんか人が変わったみたいね。ずっと困った顔してるし、口調も変わったし」
ナルーガは思った。この子は察しがいい。本当のことを話しても受け入れてもらえるんじゃないか。相談相手がいるのは心強い事である。例え、どんなに幼くてもだ。
「違うんだ。僕、500年前に死んだはずで、そして、気づいたら生きてたし、体格が大人になってるし」
「はぁ?500年前?気づいたら生きてた?…寝言は寝てから言いなさいよ。」
「いや、本当なんだ。本当のこと」
「まぁ、でも、口調も違う…雰囲気も違う…信じなくはないかな。半信半疑ってことで」
「よかったぁ」
ナルーガはため息をつく。
「よかったぁ、じゃないわよ。私はまだ信じてないし、作り話だったらぶっ飛ばしからね」
「は、はい、分かりました」
(この子、幼いのになんて怖いんだろう)
「あなた、私が怖いとか思ってない?」
「い、いえ思ってません!」
(なんて鋭いんだ…)
ナルーガは冷や汗をかく。
ドカァァァァァンッ
突如響いたその音に、ナルーガと幼女は振り向く。
振り向いたのは、背後で音がしたからだ。
「なんなの?さっきの音」
「行ってみよう」
そう言ってナルーガは走って行ってしまう。
「あ、ちょっと!待ちなさいよ!」
それを、幼女は追いかけた。
☆☆☆
スバルside二回目キターーーって言ってる場合ではない。
俺は、今、このガチムチ怪物と戦闘中だ。
はっきり言って、自分が生き残れるかどうかは厳しい。相手が優勢だ。
相手は、ガチムチの割には早く動き、パンチも強力。で、俺は、剣術を駆使して戦ってるけど、現在左手をやられている。
幸い、右利きだ。
しかし、次に手か足をやられたらおしまいだ。まともに戦えなくなり、結果死ぬ。
いま、相手の攻撃を全て紙一重で交わしている。
かわさなければならないんだ。あのパンチを食らったらひとたまりもない。
となると、俺の勝率は、まず、ない。
とんでもなく絶望的である。俺もまだまだ戦闘術が未熟だ。鍛えねばならないな。
しかし、そんな呑気なこと言ってられない。死んでは鍛えるとかどうとかは元も子もないのだ。
勝率がないなら、この場に生き残るために必要なことはただ一つ。
逃げること。
では、いつ、逃げるのか。
はっきり言ってこいつにはスキが一つもないし、戦闘を辞めて強引に逃げても、こいつは足が速いので捕まってご臨終だ。
やはり、助かるためには多少の犠牲は必要のようだ。
そこで俺は手段を3つ考える。
ひとつ、召喚獣に任せて逃げる。
ふたつ、召喚獣に爆発系の魔法をかけてもらい相打ち。
みっつ、サクラによる増援が来るのを信じて戦い続ける。
一つ目だが、こんな緊迫した雰囲気だからだろうか。
なんとも下劣なことを考えてしまったものだ。自分が情けなく感じる。
だが、こちらにとっては不利になる。
こんな強いやつに、俺の持ってる召喚獣が叶うかどうかは分からない。
いや、俺の持ってる召喚獣の器量では全滅だ。断言できる。
そうなってしまっては、俺は召喚獣の命を守りきれなかったとして、俺の体が破裂へと近づく事となる。
それに、できればそんなことはしたくはない。
保留。
二つ目は、捨て身の作戦だ。
イフリートの魔力が残っていればだが、周辺を巻き込んで大爆発する極大な魔法を唱えてもらい、怪物とともに魔法をくらう。
この魔法は、パワーをため終わるまでの時間がとても長いので、スキがありすぎる。ので、俺がこいつの足止めをする。
死ぬかもしれないが、死なないことを信じてやるしかないのだ。
しかし、まだ、死ぬことを躊躇っている俺がいる。
死ぬんじゃないか。
生き残れないんじゃないか。
もし相手の力が想像以上で、俺だけが死んだら無意味じゃないか。
あまりにもリスクが大きい。
まあ、まだ三つ目もあるので一応保留。
三つ目だが、これが一番都合のいい展開なんだろう。増援でも来てくれれば、一番安全に助かることができる。
しかし、待ち続けるというのは一体どのくらいだ?
一時間?遅い。
三十分?遅い。
十五分?まだまだ遅い。
体力的に、あと二分だ。二分でこないときつい。
……保留。
このことから、この3つの手段をまとめると……
一つ目。危険度最大値5とすると4。
成功率は50%くらい。
二つ目。危険度5。成功率70%
三つ目。危険度2。成功率20%
さて、この中から選ばなければならない。
どれだ?……どれだ!
剣と拳が混じり合い、つばぜり合いが生じる。
そこで俺の意識は一旦現実に戻ってくる。
「グォォォォォッッ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は再び意識を頭の中に戻す。
…………………………クソ。
きまらねぇ。きまらねぇ。くそったれ。都合が悪い。なんでこんなことになった。
『………ッ!早く決めろッ!』
クソ、なんでこんな時に思い出すんだ。あんなこと、もうとっくに忘れたはずなのに……
『………ッ!このせ……す……るの………まえだ………だ…』
頭が痛くなりやがる。
俺は、いつだって、決断できない愚か者だ。
だから俺は、あの頃の記憶を思い出さないために、名前を捨てたんじゃないか。
俺はまだ、………なのかよ……。
「クソが死ねぇぇぇっ!」
その時、頭に鈍い衝撃が走った。
気づいたら俺は、鼻血を出しながら宙を舞っており、そのまま壁に叩きつけられていた。
殴られた。
と気づいたのは、うっすらと見える視界の中で、怪物が左手を前に突き出していたからだった。
鼻の骨が折れた。
言い忘れていましたが、スバルがなぜ剣術をつかえるのかは、話の中で明らかになります




