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ただの召喚士(本人自称)  作者: 進夢 ロキ
第2章 ナルーガ王国の異変
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十三話 殺害犯捜索 後編

遅れてすいません!

グラグラグラグラグラ…


殺害犯の捜索中。

ダンジョン内が凄まじい勢いで揺れだした。


「うわぁっ!」


私は突然の揺れに体勢を崩す。

他の兵士達も体勢を崩すが、すぐに立ち直し、一斉に武器を構え、冷や汗を流す。


「サクラ」

「なに?スバル。これ、普通じゃないよね」

「ああ、俺の母さんのおなら並みの揺れだ」

「スバルの母さんってそんなすごいのするんだね」

「そこ、ツッこむとこじゃね?」


揺れがあったのは、おそらく、ここよりもっと地下のほうだ。


この揺れの原因はわからないが、想定すると、魔物だと思うのは難しい。


そう思うのは、これほどの揺れを起こせる魔物がいない。いや、いなかったからだ。


大型のモンスターは、いたはいたが、やはり、こんなにも強い揺れを起こせるとは思わない。


あきらかに、異常だ。


「とりあえず、下に行ってみるか?」

「そう、だね。」


スバルは、兵達に指示を出し、私は、兵を先頭に階段を下っていく。


下の階に近づくにつれ、禍々しいオーラを感じる。

グォォォォッという、唸り声も聞こえてくる。不気味だ。


あと、五段くらいで階段を降り終わろうとした、その時、ブチブチと、グロテスクな音が聞こえてくる。


明確だ。

これは、異常。

苦しい戦いを覚悟をしておいたほうがいいだろう。


「ちょっと前に行かせろ。」


スバルが小声で指示を出すと、兵士が道を開ける。私達は、先頭に向かう。

そして、壁に背を向けて張り付く。


唸り声やグロテスクな音は、もうこの近くだ。

私は、壁から、奇妙な音が聞こえる方へと顔を出す。スバルも同時だ。


壁から頭を出し ”それ” を見た。

悪寒が突っ走った。


”それ” は、何者にも表せないような姿だった。

皮膚は人間、顔も人間、足も人間、どこも人間なのだが、筋肉が異常なほどまでに膨れ上がり、目は瞳がなく、赤い。

背中からは、黒い、天使のような翼が生えている。まさに怪物だ。

皮膚には、なんのものかは知らないが返り血を浴びている。


そして ”そいつ” は、ウィザードゴブリンという魔物を、いや、魔物だったものを手に持っていた。


ウィザードゴブリンは、グチャグチャにされ、原形をとどめていない。

床にも同じようなものが、5、6体くらい転がっている。


そして、その怪物は、ウィザードゴブリンを食っていた。

くちゃくちゃくちゃくちゃ…行儀の悪い食べ方をしている。


が、あれが生きていたものだと思うと、行儀がどうとか関係ない。

行儀とかを指摘する前にまず恐怖を覚えるだろう。


「なんなの…あれ」

「さあ、分からん。だが、やばいぞ、あいつ。」


スバルは怪物のことを唾を飲み込みながら言う。


「禍々しいオーラが吐き気してくるほどに漂ってきやがる。もう遊びは終わりだ。気をつけたほうがいい。

……あいつは俺でも倒せないかもしれない。」

「えっ。」


私の驚愕もスルーし、スバルはすぐさま「魔法陣展開(ゲートオープン)」と呟き、現れた魔法陣から杖を取り出す。


兵たちも武器を構え、私達を護る。

私も武器を取り出す。


だが、うまく武器が握れなかった。

……怖い、怖い。

あいつ、見た目にも恐ろしくて……


……イリシアネの事件が。

……記憶に蘇った。

身体が恐怖で震えだす。


「無理はしなくていいからな」


そこに、ガクガクと震えている中、ポンと、肩に手を置かれた。


スバルだった。

その私に置かれた手は、暖かかった。


たったの手のひらなのに、その手のひらからは温もりを感じて、まるで抱きしめられているかのように、暖かかった。


……イリシアネの記憶が少しずつ消えていく。


それに合わせて、少しづつ、体の震えが止まっていく。


「いや、やれるよ。できる、絶対できる!」

「そうか…なら、絶対できろ。いけ!」


スバルの指示で、兵達はあいつの後ろから特攻する。


1人の刃が、怪物の背中に入った。肉が斬れ、怪物は唸り声をあげた。赤黒い血が飛び出す。


やっと怪物はこちらに気づき、異常なまでに膨れ上がった腕で薙ぎはらう。


だが、兵士は剣で腕を受け止めていた。

腕と剣の、つばぜり合いが生じる。


その間にもう一人の兵士が槍を持って突進し、そいつの横腹あたりに突き刺さり、血が出る。


グォォォォッ


怪物は唸り声をあげる。

暴れ、兵士達を吹っ飛ばす。

兵士達は壁に叩きつけられ、床に倒れる。動かなくなる。


………死んだ…?


優勢だと思っていたが、そう簡単には行かないようだ。


怪物は、前に出て私達を守っていた、兵士達に向けて走り出す。

ものすごいスピードだ。


「赤き精霊 ”イフリート”よ!

汝、我との契約のもと、我に従え!」


そこで、スバルが床に向かって詠唱を唱える。

そこに、赤い魔法陣が現れて、中からイフリートが召喚される。


怪物は一旦立ち止まり、警戒する。

両者は、睨み合っている。


「いけ!」


スバルがイフリートに指示を出す。

イフリートが口を大きく開けて、炎のようなパワーをためる。


怪物は、それに警戒し、歯軋りしている。


回り込んでいる兵士にはきずいていなかった。


兵士は両手で真上に剣を振りかぶり、振り下ろす。


刃は、怪物に、気持ちよく入っていき、赤黒い血が出る。

だが、怪物はのぞけりもしないし、唸り声もあげず、我慢した。


怪物は右手で兵士をとらえ、握りつぶす。鮮血が飛び出す。放り投げる。


私は冷や汗を流した。

なんとも言えない感じがする。

こんなやつに勝てるのか。


イフリートがパワーをためおわった。

できた、直径1メートル程度の火球を、真っ直ぐに放った。


その火球は、怪物の顔面にヒットする。

身体が炎上する。肉が焼けていく匂いがするが、決して香ばしい匂いとは言えない。むしろ吐き気がする。


怪物は、炎の中で、唸り声をあげ、もがいている。

赤い炎の中に、怪物の黒い影が見える。


やった……か?


「みんな!油断するな!まだ奴は生きてるぞ!」


スバルが言った。

矢先、怪物は纏っていた炎を風をおこしてけした。


「うそ…」


なんて、凄まじい力なんだろう。


「引くぞ!危険だ!戻って作戦をたてる!」


スバルが大声で言い、なんと兵士たちは一目散に階段を登っていく。私達を護りもせずにだ。


それほどまでにこいつは、恐怖を植えつけたということなのだろうか。


「ほら!サクラも逃げるぞ!」


スバルは言う。私はそれに気づく。


「イフリート!一旦戻れ!」


そう言った時、時すでに遅し。


「イフリート!」


怪物はめいいっぱい拳を振りかぶり、イフリートの横腹に殴り込んでいた。


イフリートは唸り声をあげ、倒れる。


「うんッ!」


スバルは、もう一発が叩き込まれる前に、イフリートを魔法陣へと戻した。


「クソォっ!」


スバルを前にして、私達は階段を登っていく。

案の定、怪物は走って追ってくる。

でかい体をしながらも、凄まじいスピードで追ってくる。


私達は、怪物から、ひたすら、

にげる。

にげる。

逃げる。


だんだんと息遣いが荒くなっていく。

走るスピードも落ちる。


「サクラ」

「ァ…ハァ…ハァ、な、なに?」

「このままじゃ、絶対にげきれない、……だから、剣をかせ!俺が囮になる!」

「えっ!な、」

「いいからかせ!」


スバルは私の腰の柄から強引に剣を奪い取った。

そして、スバルは振り返り、剣を片手で構える。


「俺が応戦するから、その隙に、逃げろ!」

「ダメだよ!スバルが、死んじゃうじゃない!」


私は駆け上がる階段で立ち止まり、叫んだ。目頭が熱い。涙が出る。

私は寂しいのか?

私は怖いのか?

スバルが信用できないのか?


「俺は死なない!だから、早く行け!」

「でも…」

「早く行け!」


これまでにないような大声で、私の声を遮って怒鳴りつけた。


私は驚いて、言葉を失ってしまう。


はっきり言って、言われた通りにした方がいい。

私がいたら、足手まといになるし、スバルも本気を出せない。


反対に私が囮になっても、そう長く持たない。


つまりここはスバルが残るしかない。

その方が、安全で、リスクも低い。

それなのに、


私は、スバルが死んでしまうことを恐れている。

だから、足が動かないでいる。


あの怪物は待ってくれない。走って走って、いつかは追いついて、私たちを襲う。


怖くて、怖くて、足がすくむ。

あの怪物が怖い。

スバルが死んでしまうのが怖い。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

もう、涙が流れて流れて止まらない。


「おい、サクラ」


そんな中、スバルが少し苦笑しながら言う。


「結構、長い間、お前といて、俺はとっくに信頼されているんだなって思ってたけど、残念だよ。俺を信用してくれないなんて」


スバルは続けて暗い声で言った。

その言い方は、発言とともにとても寂しそうで…


「俺、悔しいよ。」


…ああ、どうしてだろう。

なんで私は素直にスバルのいうことを聞かないのだろう。


悔しい。


スバルを信用できないことに…


悔しい。


涙が一気に溢れ出る。

やだ。いますぐに言いたい。

それは違うって。

でも、言えない。出るのは涙だけだ。


スバルは、私にそっと寄り添って、抱きしめた。


「なぁ、サクラ。

俺を信じてくれよ。俺、お前のことずっと仲間だと思ってたぜ。だからさ、俺のこと、仲間だと思って、いまだけでいいから、

俺を信じて逃げてくれ…」


スバルの言葉が、次々と心に突き刺さる。


「ごめん…なさい。」


私は、涙を浮かべて言った。


スバルが、大事な仲間なのに。

大事な、大事な人なのに。

私は………バカだ……


背を向けて走り出す。

涙をぬぐいながら走り出す。

階段を、たんたんたんと駆け上る。


私は見てしまったのだ。

振り向きざまにみた。


スバルの、涙。


この戦いの後、スバルが、戻ってくるのならば、

私は、スバルに、思いを伝えようと思う。


そう思いながら、私は階段を次々と駆け上った。


ダンジョンのなか、夏の夜のような静かな場所で、

血飛沫が、舞っている。


「スバル。絶対、戻ってきて。」


私は走りながら下を向いていった。

この声は、届いただろうか。


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