就寝
夜が更け、木々の隙間から星が瞬き始めた頃。
「ねえ、ルシアンは手ぶらで山に来たの? チャレンジャーだね」
タリアナが、自分のことを棚に上げて問いかけた。
「いや、まさか……。食料も着替えもテントも、途中ではぐれた仲間が持っている」
「そっかぁ……それは大変だったね。寝る場所が無いなら、今夜は、わたしが作った小屋を使っていいよ。たくさん歩き回って、疲れたでしょ?」
「ああ……気持ちはありがたいが、遠慮しておくよ」
「なぜ?」
「だって、小屋は一つだろう? 君は女性だ。一緒に寝るわけにもいかないし……俺は、外で大丈夫だよ」
「なるほど、そういうことね。ちょっと待ってて!」
「え? おい、待て……」
タリアナは、呼び止める声も聞かずに奥へ駆け出す。
しかし、すぐに木の枝や大きな葉を抱えて戻ってきた。
草で編んだロープを器用に使い、迷いのない手つきで組み上げていく。
「……嘘だろ」
ルシアンは、ただただ呆然と眺めていた。
壁が立ち、屋根が掛けられ、最後に柔らかな草がベッド代わりに敷き詰められる。
十分もしないうちに、小さな小屋がもう一軒完成していた。
「できた! これで解決ね」
「まさか……こんな短時間で小屋が建つなんて……」
「即席だからテントより粗末なものだけど、外で寝るよりはマシなはずよ。それじゃあ……おやすみ、ルシアン。また明日ね!」
「あ……ああ、おやすみ」
固まったままのルシアンを残し、タリアナは、元々建っていた方の小屋へ入って行った。
数分後、ルシアンは、建ったばかりの小屋へ足を踏み入れた。
思っていた以上に広く、しっかりとしたつくりだった。
小さな窓から、月明かりが差し込んでいる。
やわらかい草で作ったベッドに寝転べば、そのあまりの寝心地の良さに頰が緩んだ。
「まったく……どこが姫なんだよ……」
そのまま、静かに目を閉じた。
疲れきっていたルシアンは、あっという間に眠りの世界に落ちていった。




