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真実

市場通りを歩き、商店が見えなくなったところで裏路地へ入る。

しばらく進んだ先に、タリアナが住んでいるという家があった。


そこは、想像していたよりずっと大きな邸宅だった。帝都には密集した住宅地が多いが、周りには家らしきものは見えず、たくさんの花と緑に囲まれている。


「こんな場所があるなんて知らなかったな……」


ルシアンは、キョロキョロと辺りを見渡す。


「俺もです。帝都の道は全て把握しているつもりだったんですけど」


トニーが不思議そうに、来た道を振り返っている。


「地理に詳しいトニーにわからない場所なら、今まで見つからなかったのも仕方ないよな。タリアナちゃん、ウルトとソラマンは家にいるのか?」


ホーンズが邸宅を指差す。


「うん。今日は家で仕事をするって言ってたから、いるんじゃないかな」


タリアナは、ドアを叩いて中に呼びかけた。

すると、ドタドタと走るような音が聞こえて、ほどなくして内側からドアが開いた。


「タリアナ、おかえり。ドアを叩くなんて珍しいな。勝手に入ってきていいのに」


顔を出したウルトは、人懐っこい笑顔を浮かべていた。


「ただいま、ウルト。実は、今一緒に……」


タリアナが振り返り、後ろに立つ3人へ視線を向ける。

その視線を追ったウルトは、ルシアンと目が合って静かに一礼した。


「おい、ウルト」


その直後、ホーンズがウルトに詰め寄った。


「お前は田舎に帰ったんじゃなかったのか? 何故ここにいる?」


「……まあ、色々事情があってね。とりあえず入ってくれ。ソラマンが客間で待ってる」


「なんだか、俺たちが来ることを元々知ってたような口ぶりだな」


トニーが訝しげにウルトを見つめながら、先にドアをくぐる。


ホーンズがその後に続き、タリアナは複雑な表情を浮かべるルシアンの背中をそっと押した。


「行こう、ルシアン」


「ああ……」


4人は、ソラマンが待つ客間へ向かった。


全員が客間へ入ると、ソラマンはソファから立ち上がった。


「みなさん、ようこそお越しくださいました」


丁寧にお辞儀したソラマンは、ルシアンの前に歩み寄った。


「殿下、お元気そうで何よりです」


「……随分白々しいな。他に言うことはないのか?」


「えーと……。タリアナさんと交際することになったんですよね。おめでとうございます」


「あ、ああ……」


ルシアンは一瞬、照れたように笑った。

だが、すぐに表情を引き締める。


「いやいや、まずは……山で逸れた後、俺の捜索をせずに騎士団を辞めた理由を、ちゃんと説明してくれ」


ルシアンの声が低くなる。


「お前たちは、ツキームと共謀して俺の命を脅かしたのか?」


「それは違います」


ソラマンは静かに首を横に振った。


「私たちは、ツキームともミューラとも共謀してはいません。事情は全てお話ししますよ」


ソラマンはルシアンたちを向かい側のソファへ誘導した。

ウルトとタリアナを隣に座らせると、自らも腰を下ろす。

そして、静かに口を開いた。


「実は、私たちはタリアナさんとルシアン殿下を出会わせるために動いていたんです」


「……は?」


ルシアンが目を見開く。


「殿下は、放っておけば山で死ぬ運命にありました。猛獣に襲われるか、山賊に殺されるか……」


その言葉に反応したのは、タリアナだった。


「え……もしかして、ソラマンも同じ時間をループしているの?」


「ああ……そうですよ。ウルトも一緒に」


「何で話してくれなかったの? わたしがループのことを話した時に……」


ウルトが、ソラマンの向こうから気まずそうに顔をのぞかせ、手を合わせた。


「ごめん。俺は君と暮らすことになった時に全部打ち明けようとしたんだけど、ソラマンに今は話すなって止められて……なあ?」


「時がくれば話すつもりでしたよ」


「ソラマンとウルトは、わたしとルシアンを出会わせるために動いていたって言ったよね? それって、わたしがいればルシアンの命が助かるってわかってたから? でも、最初から危険な目に遭う未来を知っていたなら、山に行くことをやめさせれば良かったんじゃないの?」


首を傾げるタリアナに、ソラマンは穏やかな表情のまま答える。


「確かに、ルシアン殿下の命を助けるだけなら、ツキームの企てを知らせて山に行かせない方法もあったでしょう。しかし、私たちの真の目的は、タリアナさんを幸せにすることですからね」


「どういうこと?」


「……私は、君に呪いをかけて100年の眠りにつかせた仙女の子孫なんです。先祖が残した予言書に記された通りに、君が幸せになること……それを見届けるのが、私の役割なんです」


「ソラマンが、仙女の子孫?」


タリアナが、目を瞬かせる。


「ウルトも?」


「俺は違うよ。ソラマンとは同郷で幼馴染だけど、先祖代々傭兵や騎士の家系だ。ただ……タリアナを幸せにしたい目的が共通していることを知ったから、一緒に行動しているんだ」


ウルトは大きく息をつき、言葉を続けた。


「実は……俺には、前世の記憶がある。信じてもらえないかもしれないけど、前世では俺とタリアナは家族だったんだ」


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