テント
「ルシアンがフェリクスの友人だったなんて、本当に驚いたわ。国も身分も違うのに、どうやって知り合ったの?」
右隣に座るタリアナが、興味深そうに顔を覗き込んできた。
フェリクスは左隣のルシアンをちらりと見てから、慎重に答える。
「あー、うん……。幼い頃、家族で帝国を訪れた時に、ルシアンの家族にしばらくお世話になったんだ。私たちは同い年だったから遊び相手として紹介されて、それ以来の付き合いだよ」
「そっかぁ、幼馴染なのね。小さい頃のルシアンってどんな感じだった?」
「うーん、今とそんなに変わらないかな。一見しっかりしてそうだけど、いつも考えすぎて空回りするタイプというか……まあ、可愛かったよ」
「何だよ、それ……」
ルシアンは不満そうに頬を膨らませる。
それを見たタリアナが、クスクス笑っている。
「確かにルシアンは今でも可愛いよね」
「おい、子供扱いするなよ。俺の方が大人なんだぞ」
「でも、わたしの方が長く生きているでしょ」
いつの間にか、2人が自分を挟んで他愛のない言い合いを始めていた。
「……そんなことより、この状況をちゃんと説明して欲しいんだけどな」
フェリクスは戸惑いながら大きなテントの中を見渡す。アドリアンの一行が持参したテントらしい。
数分前、タリアナとルシアンに引きずるように連れて来られた。
テントの中では、騎士たちも含めた全員がボードゲームを囲んで輪になっている。
タリアナの右隣には、元夫のアドリアンがいる。
未来から戻ったわけでは無いようだが、「タリアナと結ばれる夢のお告げがあった」と主張している。
「次、タリアナの番だぞ!」
アドリアンに促されたタリアナは、腕まくりしてサイコロを振る。
「わぁ、また一回休みだ」
「ははっ。全然進まないな!」
2人の親し気な様子を見ていると、胸がざわつく。
アドリアンの自然なスキンシップに、イライラする。
記憶の中では1週間前まで夫婦だったのだから、すぐに割り切れないのは仕方ないだろう。
ふと、ルシアンを見れば、やはり複雑な表情を浮かべている。
命を救われ数日間を共にしたルシアンが、愛らしいタリアナを好きになることは不思議じゃない。
「次はフェリクスだよ」
タリアナからサイコロを渡され、当たり前のようにゲームに参加させられていることに気付く。
そういえば、タリアナは楽しいことが好きだった。
この信じ難い状況も、素直に楽しんでいるようだ。
フェリクスは小さくため息をついて、サイコロを転がした。




