宴会
「フュードはまた、戻ると思う?」
「1年前に? うーん、なんとなくだけど……今回は戻らない気がする」
「やっぱり? わたしもそんな気がするわ」
宴会は続き、話題は、タリアナとフュードの時戻りの話から、シューリンとアキムの馴れ初めに変わった。
「え、シューリンは元探検家だったの?」
「うん。両親も探検家だったから自然にね。3年前まで世界各地の開拓されてない土地を回って記録を取る仕事をしてたんだ。この山にも調査のために訪れたんだけど、遭難してしまって……。1週間途方にくれてたところを救ってくれたのがアキムだったわけ。山賊なのにおかしいよね。案内されて一度は山を降りたんだけど……ずっと彼のことが頭から離れなくて、戻ってきちゃった」
「それでそれで?」
タリアナは、恋バナに興奮して鼻息が荒くなっている。
「好きになったから恋人になってほしいって伝えたの。でも、アキムのやつ、何度も断ったんだよ。ひどいよね」
アキムが慌てて言い訳する。
「仕方ねぇだろ。俺は生まれた時から山賊で、シューリンは立派な両親も家もあるお嬢様だったんだから。ここで生まれ育ったツユとは訳が違う。住む世界の違う女に手を出したら、バチが当たるって思ったんだ」
「だけど、プロポーズしてきたのはアキムだからね」
「そうなの? 一体何が?」
「交際を断られても何度もアキムに会いに来る私を、山賊のみんなが応援してくれてね。しばらくして一緒にここで住むようになったんだ。アキムが『離れたくないから結婚してくれ』って泣きながら懇願してきたのは、1年前、ボスがみんなに新しい仕事と住む場所をみつけてきて、解散しようって言い出した時。……結局、アキムは私の魅力に逆らえなかったのよね?」
アキムがシューリンを見つめて肩をすくめる。
「まあ……否定はしねぇよ」
「いいなぁ。わたしもそんなふうに想いあえる人と運命的な出会いがしたいわ。次は王子じゃない人と……」
「贅沢ね! 普通は王子様とは出会いたくても出会えないわよ。それに、タリアナとボスの出会いも、充分運命的じゃない?」
「そうね、確かに……」
タリアナがフュードを見れば、フュードは嬉しそうに笑って頷いた。
「タリアナとだったら、一緒にレストランを開きながら生きていくのも楽しいだろうな!」
「それって……」
もしかして、プロポーズ? と聞こうとした時……
ルシアンが勢いよく立ち上がった。
「違う! 俺とタリアナの方が……ずっと運命的だ! ……アキムとシューリンと同じで……山賊じゃないけど……命の恩人で……特別で……」
顔を赤くしてしどろもどろに伝えるルシアンを、タリアナが覗き込む。
「ルシアン、ちょっと酔っ払ってる? 確かにルシアンとの出会いは運命的だったとわたしも思ってるわ。あなたの命を救うことができたのは、今回のループの1番の収穫。もしかしたら、今まで、そのために人生をやり直していたのかもって……」
「俺は……君のことがずっと……」
「タリアナー!」
その時、膝に乗ってきたのは目を覚ましたアラシだった。
「アラシ! 目が覚めたのね。お腹すいたでしょ?」
タリアナは、テキパキとアラシが食べられそうなものを皿にとる。
「アラシ、タリアナが大変だから、パパかママのところに行けよ」
フュードが優しく諭すように言う。
「やだ!」
アラシはタリアナの胸に顔を埋める。
「あ……ずるいぞ、アラシ……羨ましいなぁ……俺もタリアナに抱っこされたい……」
酔っ払いルシアンが、変態発言をしている。
「ちょっと何言ってるんすか! 抱っこって……。やっと素直に告白する気になったと思ってたのに……」
ハルクが顔を引き攣らせてルシアンを小突いている。
「ルシアン様は、酔っ払うと面白くなるね!」
シューリンはケラケラ笑っている。
「タリアナはモテモテだねぇ」
「ああ。アラシにもすっかり気に入られているからな。シューリンみたいに、ここから離れられなくなるんじゃねぇか?」
アキムとナッツが面白そうにからかう。
「ごめんね、タリアナ。アラシが……」
ツユは、申し訳なさそうに手を合わせる。
「いいの、いいの。アラシ、一緒に食べよ!」
「うん!」
タリアナはアラシを膝に乗せたまま、夜更けまで宴会を楽しんだ。




