全力
タリアナは全力で遊んでいた。
アラシと一緒に山賊になりきって宝探しをしたり。
室内のあらゆる物を障害物にして飛び跳ねたり。
走り回って敵から逃げる訓練をしたり。
ついには、敵に見立てた椅子を力余って叩き割ってしまい、怒ったツユに部屋を追い出された。
2人で外に出てからは、住処の周りの植物を使って扮装をして探検をしたり、秘密基地を作ったり……。
途中でルシアンが会いに来たので仲間に誘ってみると、渋々付き合ってくれた。
子供に慣れていないのか、外遊びに慣れていないのか……ずっと戸惑っていたが、アラシの子分役を精一杯務めてくれた。
最後には3人で協力して、壊してしまった椅子を元よりも綺麗に直し、調理場を手伝っていたツユに謝りに行った。
ツユは、ケラケラ笑って許してくれた。
時々、タリアナたちの様子を見に来ていたシューリンも、お腹を抱えて笑っている。
「タリアナって、最高!」
一緒にいた山賊たちも、コクコクと頷いている。
「こいつがここまで人に懐くのは初めてだよ」
遊び疲れてタリアナの腕の中でうとうとしていたアラシを抱き上げて、ナッツが言う。
「タリアナさん、山賊に向いているんじゃないっすか?」
とハルクが言う。
「この住処は部屋もたくさん空いているし、ずっといても良いぞ」
とアキムが言う。
「そうね……。わたしは逃亡中で身寄りもないし……山賊として生きるのも楽しいかも?」
冗談めかして言ったタリアナの言葉を、ルシアンが本気にして焦り出した。
「おい……タリアナは、俺と一緒にモンテール帝国に行く約束だろ?」
「……そうよ。もう、ルシアンってば心配しないで。山を超えるか、あなたの探している仲間が見つかるまでは、ちゃんと一緒にいるから! まあ、その先のことはわたしにもわからないんだけどね」
「タリアナは、俺と……」
ずっと一緒にいたらいい……そう言いかけた言葉を、ルシアンは呑み込んだ。
それを、何のためらいもなく言ってのけたのは、山賊のボスであるフュードだった。
「俺は、タリアナとずっと一緒にいたいけどな! 話したいことも、教えてほしいことも、一緒にやりたいこともたくさんあるんだ」
「だったら、ルシアン様を送った後、戻ってきたらいいんじゃない?」
シューリンが、からかい半分でタリアナの肩を叩いた。
「いっそのこと、ボスのお嫁さんになっちゃえば?」
タリアナはフュードと目が合って、照れ笑いを浮かべている。
「いや……ちゃんと否定しろよ!」
ルシアンの口からでた言葉は、まるで嫉妬した恋人みたいだった。
「ルシアン? なんか、機嫌が悪い? たくさん遊んで疲れちゃった?」
タリアナがルシアンに向き直る。
「……子供扱いするなよ」
その言い方は、本当に拗ねた子供みたいで、タリアナは思わずクスリと笑って頭を撫でた。
そんな2人の邪魔をするように、フュードが声をかける。
「調理は大体終わったから、宴会場で待っててくれ。シューリン、案内を頼む」
「御意、ボス!」
シューリンは、面白そうにタリアナの手を引いた。




