乾杯
宴会場の大きなテーブルには、既に、お酒と食器が並んでいた。
シューリンは、中央の席に2人を向かい合わせに座らせると、タリアナの左側に位置取った。
「……それで、それで? ルシアン様とはどういう事情が?」
さっきから、次々に繰り出されるシューリンの遠慮ない質問に、タリアナは、嫌な顔一つせず丁寧に答えている。
「……だから、一緒に山を超えることになったの」
「へえ! 話を聞く限り、タリアナのサバイバル能力は相当だよね。本当に面白い! ルシアン様は、そんなタリアナに命を救われたわけだ。その上、仲間が見つかるまで一緒にいてもらえるなんて……幸運ね」
「ああ……本当にそう思う」
ルシアンは、素直に頷いた。
「タリアナみたいな人にはなかなか出会えないでしょう? 好きになっちゃった?」
「好きって……俺たちは出会ったばっかりだぞ……そんな簡単に好きになるのはおかしいだろ……」
シューリンにからかわれ、たじたじになったルシアンに、タリアナがトドメを指す。
「わたしは、ルシアンが好きだよ!」
「な……!」
顔を真っ赤にしたルシアンをシューリンが一瞥し、タリアナに問いかけた。
「私のことは?」
「シューリンも好き!」
「ボスのことも?」
「もちろん! 山賊のみんなも、ツユもアラシも大好き! ……出会ったばかりなのに、おかしいかしら?」
「……ふふっ……可愛いやつ」
シューリンは、タリアナの髪の毛をくしゃくしゃにしながら撫で回し、ふと思い出したように尋ねた。
「そういえば、タリアナは逃亡中って言ってたけど、誰から逃げてるの?」
「うーん、それを話し出すと長くなっちゃうんだけど……」
「今夜は泊まっていくんでしょ。飲みながらじっくりと話を聞くわよ!」
その時、出来上がった料理を持ったフュードが近づいてきて、当たり前のようにタリアナの右隣に座った。
「タリアナの事情? 俺も聞きたい!」
「いいわよ。信じてもらえないかもしれないけど……全部話すわ。あとで、フュードたちの話も聞かせてね」
料理が次々に並べられて、山賊の仲間たちが席についた。
まだ目が覚めないアラシは、宴会場の隅に敷かれた布団に寝かされている。
「おぅ。タリアナになら何でも話してやるぞ。とりあえず、乾杯だな!」
フュードがジョッキを掲げて声を上げる。
「タリアナ、ルシアン。良く来てくれた。今日は料理も酒もたくさんあるから、みんな、いっぱい食べて飲んで騒いでくれ! 乾杯!」
「乾杯!!」
タリアナは、ルシアンにしか話していなかった事情を、フュードたちに話し始めた。
ルシアンは、胸に広がるモヤモヤを消し去りたくて、一気にお酒を喉に流し込んだ。
隣に座るハルクが、ルシアンの様子に気がついて声をかける。
「ルシアンさん……今夜は俺が付き合うっす。飲みましょう!」




