拘束
「……こいつらを拘束したのは君ら? 見た感じ……騎士や警備隊には見えないけど」
少年は、大きな紫グマをどさりと地面に下ろして話しかけた。
「この人たち、わたしの荷物を奪おうとしてナイフまで突きつけてきたのよ。悪いことをすれば捕まるのは当たり前でしょ!」
タリアナは、威勢よく指を突き出す。
「なるほどね……」
少年は拘束された3人に近づくと、言い分を聞き始めた。
「俺らはいつも通りやっただけですよ!このカップルが異常なんです。力がボスに匹敵するぐらい強くて……岩みたいな重い荷物を投げつけられて……」
「おいらは、女に投げ飛ばされて……」
「……2人共ナイフを向けてもまったく怖がらないっす。しかも、気がついたら手足を縛られてたし……ありえねぇ!」
必死で訴える3人の前で、ボスはため息をついた。
「情け無いなぁ、お前ら。……それで、どうする? 縛られたままでいるか?」
「意地悪言わないで助けてくださいよ……」
「どうしようかなぁ……」
クスクスと笑い始めた少年に、ルシアンが問いかける。
「お前は、山賊のボスなのか?」
「まあ……一応ね。こいつらがした"悪いこと"は、ボスとして謝るよ。俺らは、生きて行くために山賊をやってるけど……冷酷な人間では無いんだ」
ボスが、ルシアンからタリアナに視線を移した。
タリアナは、拘束されておとなしくしている山賊たちを見て、苦笑いを浮かべている。
「……そうみたいね。ナイフを向けられたから捕まえたけど、わたしたちも冷酷な人間ではないのよ。ねえ、ルシアン」
「ああ。俺たちに危害を加えないなら、お前たちを見逃してやってもいい。約束できるか?」
「もちろん約束する。君らは、旅の途中? もし時間があるなら、お詫びにご馳走したい。俺たちの住処に来てくれないか? 話も色々聞いてみたい。……興味があるんだ」
「いや、俺たちは……」
「行きたい!わたしも興味があるわ」
ルシアンが断わりの言葉を言い終わる前に、タリアナが快諾した。
「嬉しいな。久しぶりの客人だ」
ボスが無邪気な笑顔を見せる。
タリアナは、その笑顔に引き寄せられるように一歩前に出た。
「あ……まだ名乗ってなかったよね? わたしはタリアナ。彼は旅仲間のルシアンよ」
「夫婦じゃないんだ? 俺の名は、フュード。よろしくな。じゃあ、タリアナ。行こうか」
「ええ、フュード。住処はここから近いの?」
「うん、すぐだよ」
フュードは、紫グマをヒョイと担ぎ上げた。
「ねえ、その紫グマ、背中にモリが刺さってなかった?」
「ああ、そうそう。あれのおかげで簡単に仕留めることができたんだよな。あれってもしかして……タリアナの仕業?」
「うん。わたしの手作りなの」
「すげー! モリの刃先に痺れ薬が塗ってあったんだろ? 作り方、教えてほしいな」
「いいわよ!」
いつの間にか並んで歩きだしたタリアナとフュードに、ルシアンが頭を抱えている。
「警戒心がなさすぎるだろ……」
「あの…… 俺たち……忘れられてません?」
後ろから声がして、ルシアンは不機嫌な顔のまま振り向いた。
「ひぃ……ごめんなさい。こ、これ……解けますか?」
アキムが、縛られた両手両足を掲げて見せた。
ルシアンは、渋々ロープを解き始めた。
特殊な結び目は、解き方を知らなければどんどん絡まっていく。
しかし、今朝タリアナに教わったばかりの方法で解けば、驚くほど簡単に外すことができた。
ルシアンはため息をつき、山賊の3人と一緒にタリアナの後を追いかけた。




