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Forever Local」  作者: こうた
第七章「その後の地元」

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第65話「年の瀬」

十二月末。



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街の空気だけが少し速く流れていた。



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仕事納め。



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帰省。



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買い出し。



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その喧騒の外側に、


彼らはいた。



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マサルは最後の出勤日を終えていた。



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職場の空気はいつもより柔らかい。



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一年が終わるというだけで、


人は少しだけ優しくなる。



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義足の音はもう職場の一部だった。



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誰も特別扱いしない。



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それが今の“普通”だった。



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シンジは病院の外来を終え、


年内最後の診察を受けていた。



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状態は維持。



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悪化なし。



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それだけで十分だった。



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「この状態を続けること」



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それが今年の成果だった。



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アキラは職場で年末の整理をしていた。



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デスクの上。



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書類。



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積み上がった記録。



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その一つ一つが、


今年の時間だった。



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ユウスケはジムの最終トレーニングを終えていた。



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汗。



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疲労。



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だが充実感もある。



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今年は崩れなかった。



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それが一番大きい結果だった。



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ナオトは特に変わらない。



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ただ年末の連絡を回している。



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「来れるやつだけでええ」



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その一言だけだった。



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夜。



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小さな喫茶店。



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年末の最後の集まり。



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静かだった。



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しかし空気は悪くない。



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むしろ安定している。



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マサルが言う。



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「一年って早いな」



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アキラが笑う。



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「でも中身は濃かったやろ」



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ユウスケが頷く。



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「俺は変わったと思うわ」



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シンジは少し考えて言う。



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「変わったというより、戻れんようになっただけかもな」



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その言葉に少しだけ沈黙。



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だが否定はない。



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それが事実に近いからだ。



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ナオトが言う。



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「戻れんのは悪いことちゃう」



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「前に進んでるってことや」



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外では雪が混じり始める。



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静かな年の瀬。



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マサルは帰り道、


空を見上げる。



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シンジは薬を確認する。



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アキラは来年の予定を考える。



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ユウスケは来月のトレーニングを想像する。



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それぞれの“来年”。



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それは不安ではなく、


継続だった。



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ナオトは最後に言う。



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「終わりやない」



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「区切りや」



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その言葉で一年が締まる。



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そして彼らは、


それぞれの場所へ帰っていく。



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同じ地元で、


違う生活へ。



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しかし完全には離れない。



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見えない線で繋がったまま。



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そして物語は、


新しい一年へと続いていく。



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第66話「新年」へ続く。

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