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Forever Local」  作者: こうた
第六章「終わりの始まり」

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第57話「残響」

五月。



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新緑が濃くなっていた。



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街は静かに季節を進めている。



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しかし彼らの中では、


まだ過去が鳴り続けていた。



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それぞれの生活は安定し始めていた。



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だが完全には消えていない。



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残響のように、


小さく、しかし確実に残っている。



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マサルはリハビリの帰り道だった。



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歩く速度は以前より安定している。



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義足の違和感も減ってきた。



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しかし夜になると、


失った足の“感覚”が戻ることがある。



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存在しないはずの痛み。



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それが残響だった。



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病院での記憶。



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同意書。



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手術室の天井。



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全部がまだ体の奥に残っている。



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シンジは通院の合間、


外出許可を得ていた。



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短い散歩。



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公園。



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ベンチ。



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酒は飲んでいない。



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だが油断すると揺らぐ。



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一瞬の匂い。



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コンビニの前。



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そのたびに過去が戻る。



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それも残響だった。



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アキラは職場で少しずつ責任を任され始めていた。



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しかしふとした瞬間に思う。



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「遅かったのではないか」



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その疑念。



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それもまた残響。



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ユウスケは鏡の前に立つ。



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体は変わった。



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しかし過去の自分がまだそこにいる気がする。



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それを消すことはできない。



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ナオトはそれら全てを見ている。



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何も言わない。



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ただ記録するように見守る。



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夜。



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小さな集まり。



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喫茶店。



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以前よりさらに静か。



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誰も大きな声を出さない。



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マサルが言う。



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「最近、夢見るねん」



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「昔のままの足で走ってる夢」



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少し笑う。



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だが笑いきれない。



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ユウスケが頷く。



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「俺もあるわ」



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「戻ってる夢」



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アキラは黙って聞いている。



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シンジは少し考えて言う。



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「それ、たぶん一生消えへんやつやな」



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誰も否定しない。



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それが真実に近いからだ。



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ナオトが言う。



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「消そうとせんでええやろ」



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「残ったまま進めばええ」



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その言葉が少しだけ空気を変える。



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完全な解決ではない。



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だが方向はある。



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帰り道。



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夜風。



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静かな住宅街。



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マサルはゆっくり歩く。



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足音は二つ。



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しかし体は一つ。



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それが現実だった。



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遠くで電車の音がする。



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それは過去と未来を分けるように流れていく。



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誰も止められない。



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それでも彼らは歩いている。



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残響を抱えたまま。



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そして次の章では、


それぞれの「選択」が、


より明確な形を持ち始める。



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それは回復か、


それとも再崩壊か。



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まだ誰も知らない。



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第58話「分岐」へ続く。

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