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Forever Local」  作者: こうた
第六章「終わりの始まり」

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55/82

第55話「再会」

三月。



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風が少しだけ柔らかくなっていた。



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冬が終わりかけている。



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その日、


マサルは久しぶりに外へ出ていた。



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義足の歩行訓練ではない。



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私的な外出だった。



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リハビリ施設の許可を得ての短時間。



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駅前。



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人が多い。



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自分だけ違う速度で動いている気がする。



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ゆっくり。



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慎重に。



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それでも歩く。



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待ち合わせ場所は小さな喫茶店だった。



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窓の多い店。



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昔は来たことがない場所。



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ナオトからの提案だった。



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「一回ちゃんと会おうや」



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誰と会うのかは分かっていた。



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シンジ。



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そしてユウスケ。



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アキラも来る予定だった。



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店に入る。



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静かだった。



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午後の光。



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奥の席。



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すでに三人がいた。



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アキラ。



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ユウスケ。



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ナオト。



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少し遅れてシンジが入ってくる。



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杖を使っている。



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以前とは違う。



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痩せている。



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だが目は死んでいない。



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全員が揃う。



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しばらく誰も話さない。



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空気が重い。



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最初に口を開いたのはナオトだった。



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「ようやくやな」



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それだけだった。



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アキラは苦笑する。



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「こんな形で再会するとは思わんかった」



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ユウスケが続く。



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「まあ、生きてるだけええやろ」



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シンジは少し笑う。



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「俺はギリやけどな」



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マサルはゆっくり座る。



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義足が少し軋む。



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その音が妙に現実的だった。



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ナオトが言う。



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「昔の話ばっかりするつもりはない」



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「でも、一回区切りつけようと思ってな」



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沈黙。



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誰も反論しない。



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それぞれに“区切り”が必要だった。



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アキラが言う。



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「俺、やっと資格取れたけどさ」



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「まだスタートやねん」



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ユウスケが頷く。



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「俺も体作り始めただけやしな」



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マサルは自分の足を見る。



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「俺は、まだ戻れてない」



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シンジは少し間を置いて言う。



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「俺はまだ終わってない」



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その言葉は重かった。



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しかし希望でもあった。



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完全に終わった者はいない。



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形は違えど、


それぞれ続いている。



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ナオトはゆっくり言う。



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「昔みたいには戻らん」



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「でも、これからは選べるやろ」



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選ぶ。



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その言葉が残る。



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酒を飲むか。



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前に進むか。



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壊れるか。



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直すか。



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それは今の彼らにしか決められない。



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外に出る。



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春の風。



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少し暖かい。



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マサルは一歩ずつ歩く。



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義足。



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しかし確かに前へ。



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アキラは資格証をカバンに入れる。



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ユウスケはジムへ向かう。



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シンジは病院へ戻る。



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ナオトはそれを見送る。



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それぞれ違う方向へ。



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それでも、


同じ場所から出発している。



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河合町ソールズ。



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崩壊したはずの名前。



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しかしまだ消えていない。



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形を変えただけだった。



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そして物語は、


“終わり”ではなく“継続”へ向かう。



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第56話「それぞれの春」へ続く。

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