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Forever Local」  作者: こうた
第六章「終わりの始まり」

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第53話「試験日」

一月。



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冷たい風が街を抜けていた。



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河合町。



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正月の喧騒はすでに過ぎている。



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アキラは机に向かっていた。



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資格試験の参考書。



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付箋だらけのページ。



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マーカーの線。



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何度も書き直したノート。



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それでも不安は消えない。



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三十七歳。



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初めての本格的な試験。



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若い頃にやるべきだったこと。



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その言葉が頭に浮かぶ。



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しかし今さら戻れない。



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試験会場。



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午前九時。



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人が多い。



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若い受験者。



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二十代前半。



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スーツ。



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緊張。



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自信。



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アキラはその中にいる。



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浮いている気がした。



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年齢だけではない。



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積み重ねの差。



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それを感じる。



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試験開始。



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問題用紙。



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鉛筆の音。



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静寂。



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時間が進む。



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最初は順調だった。



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だが途中から詰まる。



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分からない問題。



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知識の抜け。



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焦り。



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手が止まる。



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周囲は進んでいる。



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自分だけ止まっている気がする。



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それでも最後まで書く。



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空欄は減らした。



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しかし確信はない。



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終了の合図。



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試験は終わった。



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会場の外。



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冷たい空気。



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深呼吸。



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アキラは空を見上げる。



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終わった。



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だが結果は分からない。



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合格か不合格か。



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ただ一つだけ分かる。



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やれることはやった。



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それだけだった。



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その夜。



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河合町ソールズのグループLINE。



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珍しく動く。



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ユウスケ。



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> 今日試験やったんやな





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アキラ。



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> まあ…やっただけや





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ナオト。



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> おつかれ





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短い。



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しかしそれで十分だった。



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皆が違う場所にいる。



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でも繋がっている。



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それだけは残っていた。



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翌日。



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マサルはリハビリ室にいた。



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義足での歩行。



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まだ不安定。



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だが前より進んでいる。



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転びそうになる。



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看護師が支える。



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それでも自分で立つ。



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少しずつ。



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確実に。



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シンジは入院病棟で静かに過ごしていた。



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禁酒は続いている。



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だが危うい。



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毎日が綱渡り。



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タカシは刑務所で作業を続けていた。



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時間だけが過ぎていく。



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ケンジは面会制限の中で静かに過ごしていた。



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それぞれの冬。



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それぞれの孤独。



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しかし完全な終わりではない。



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まだ動いている。



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そして試験の結果が出る日。



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アキラの人生に、


小さな変化が訪れる。



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それは救いか、


それとも錯覚か。



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誰にも分からない。



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第54話「通知」へ続く。

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