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Forever Local」  作者: こうた
第六章「終わりの始まり」

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52/82

第52話「最後通告」

十二月。



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冬は一気に深くなっていた。



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病院の窓は白く曇る。



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外の世界が遠い。



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シンジはベッドに横たわっていた。



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身体は軽くない。



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むしろ重い。



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しかし以前のような酒の重さではない。



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もっと別のものだった。



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生きているだけで負担になる感覚。



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午前。



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医師の回診。



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表情は以前よりさらに硬い。



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説明は短かった。



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「現状では非常に危険です」



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「このまま飲酒を再開すれば、急変の可能性があります」



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一度止める。



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二度と戻さない。



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それが条件だった。



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そして医師は続ける。



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「正直に言います」



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「これが最後の通告です」



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最後。



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その言葉が刺さる。



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何度も聞いてきた。



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ケンジの事件。



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マサルの病気。



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タカシの裁判。



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それぞれが「最後」を経験してきた。



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そして今、


自分にも来た。



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医師は静かに言う。



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「次に同じことがあれば、命の保証はできません」



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保証。



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それがないということ。



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つまり、


生きられるかどうかは運ではない。



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自分の選択だということ。



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シンジは頷く。



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しかし心は追いつかない。



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理解はできる。



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だが実行は別だ。



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午後。



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ナオトが来る。



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少し痩せたシンジを見て言葉を失う。



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「ほんまにやばいやん」



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シンジは笑う。



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「今さらやろ」



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ナオトは椅子に座る。



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しばらく沈黙。



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そして言う。



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「やめるしかないやろ」



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シンジは天井を見る。



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「やめれると思うか?」



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ナオトは答えない。



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それが正解だった。



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簡単ではない。



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意思の問題ではない。



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長年積み重ねた依存。



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身体の反応。



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精神の逃げ場。



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全部が絡んでいる。



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夕方。



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病室。



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一人。



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窓の外は早く暗くなる。



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冬の夕暮れ。



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街の光が点灯する。



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その光の中に、


自分の未来はない気がした。



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その時。



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スマホが鳴る。



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会社からの連絡。



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休職延長の確認。



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短い文。



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事務的。



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それが逆に現実だった。



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自分はもう“普通”ではない。



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社会の流れから外れている。



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夜。



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ナオトにメッセージを送る。



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短い。



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> もう無理かもしれん





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すぐ返信は来ない。



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数分後。



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> 無理ちゃう ただ、変えるだけや





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変える。



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その言葉が重い。



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今まで何度も聞いた。



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でも一度も変えられなかった。



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その違いが、


今の結果だった。



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シンジはスマホを置く。



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目を閉じる。



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そして初めて思う。



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本当に終わるのかもしれない、と。



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ただしそれは死ではない。



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生きながら終わるという意味だった。



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河合町ソールズ。



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残された者たちはまだ生きている。



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だがそれぞれが、


別の「終わり」に近づいていた。



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そして新年を前に、


アキラの資格試験の日が近づく。



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それは唯一、


まだ未来に繋がる可能性だった。



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第53話「試験日」へ続く。

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