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Forever Local」  作者: こうた
第五章「失われた時間」

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44/82

第44話「面会拒否」

五月下旬。



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刑務所。



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朝六時。



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ケンジはいつものように起床した。



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点呼。



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朝食。



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作業。



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決められた毎日。



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同じことの繰り返し。



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しかし最近、


心の中は落ち着いていなかった。



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事故から二年近く。



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それでも忘れる日はない。



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高橋陽斗。



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十七歳。



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未来を奪った相手。



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毎日思い出す。



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毎日後悔する。



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だが謝罪したいと思う気持ちも残っていた。



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もちろん許されるとは思っていない。



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許される資格もない。



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それでも。



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伝えたいことはあった。



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昼休み。



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担当職員から呼ばれる。



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面会や手紙に関する連絡だった。



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ケンジは少し期待した。



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被害者家族へ送った謝罪文。



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弁護士を通じて届けてもらっていた。



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何か返事が来たのだろうか。



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しかし違った。



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職員は事務的に言う。



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「ご遺族からの返答です」



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紙を受け取る。



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短い内容だった。



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要約すると一つ。



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「面会も手紙も今後受け取らない」



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それだけだった。



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ケンジはしばらく動けなかった。



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分かっていた。



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当然だと思う。



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むしろそれが普通だ。



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だが現実として突き付けられると違う。



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完全に拒絶された。



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許されない。



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一生。



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その可能性もある。



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紙を見つめる。



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何度も。



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何度も。



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文字は変わらない。



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現実も変わらない。



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事故は終わらない。



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刑期が終わっても。



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社会へ戻っても。



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ずっと続く。



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作業場へ戻る。



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手が動かない。



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集中できない。



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頭の中で同じ言葉が回る。



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「受け取らない」



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それは被害者家族の権利だった。



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当然の権利。



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ケンジは理解している。



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だが苦しかった。



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夜。



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房。



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一人。



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天井を見る。



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事故の日を思い出す。



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居酒屋。



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ビール。



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笑い声。



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「近いし大丈夫やろ」



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あの言葉。



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人生で最も重い言葉になった。



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もしあの日、


代行を呼んでいたら。



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もし車を置いて帰っていたら。



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もし誰かが止めていたら。



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考えても意味はない。



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しかし考えてしまう。



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何度も。



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何度も。



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その頃。



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病院ではマサルがリハビリを受けていた。



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足の状態は悪い。



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だが必死だった。



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初めて本気になっていた。



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怖かったからだ。



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失うことが。



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歩けなくなることが。



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タカシもまた苦しんでいた。



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留置施設。



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連日の取り調べ。



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供述。



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証拠。



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関係者。



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逃げ場はなかった。



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少しずつ全容が明らかになっていく。



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そしてアキラ。



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人生を変えようとしていた。



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資格の資料請求。



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通信講座。



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遅いかもしれない。



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それでも始めた。



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初めてだった。



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誰かに流されるのではなく、


自分で決めたことは。



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河合町ソールズ。



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同じ場所で笑っていた男たち。



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しかし今は違う。



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それぞれ別々の場所で、


別々の後悔と向き合っていた。



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そして夏が近づく。



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そこで起きるのは、


グループの中でも最も悲しい出来事の一つ。



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マサルの病状は、


まだ悪化を続けていた。



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第45話「壊死」へ続く。

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