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Forever Local」  作者: こうた
第五章「失われた時間」

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第42話「夜明け前のインターホン」

五月。



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午前五時十二分。



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まだ空は薄暗かった。



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タカシは眠っていた。



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前日の仕事は深夜まで続いていた。



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疲れていた。



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泥のように眠っていた。



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その時だった。



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ピンポーン。



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インターホンが鳴る。



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一回。



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二回。



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三回。



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異常だった。



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こんな時間に誰か来ることはない。



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タカシは目を開ける。



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時計を見る。



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午前五時。



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嫌な予感。



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心臓が大きく鳴る。



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再び。



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ピンポーン。



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今度はドアを叩く音。



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ドンドンドン。



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強い音。



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眠気が一気に消える。



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そして聞こえた。



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「警察です」



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全身の血の気が引く。



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動けない。



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頭が真っ白になる。



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もう一度。



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「警察です」



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「ドアを開けてください」



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終わった。



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その言葉しか浮かばない。



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半年以上前。



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借金を返すために始めた仕事。



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一度だけ。



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そのつもりだった。



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気付けば抜けられなくなった。



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そして今日。



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全てが終わる。



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震える手でドアを開ける。



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そこには複数の警察官。



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捜査員。



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身分証。



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令状。



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現実だった。



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夢ではない。



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捜索が始まる。



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部屋。



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スマホ。



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パソコン。



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書類。



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全て確認される。



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タカシは椅子に座らされる。



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何も言えない。



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抵抗する気力もない。



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覚悟していた。



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いつか来ると思っていた。



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その「いつか」が今日だった。



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午前六時。



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河合町。



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ナオトのスマホが鳴る。



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グループLINE。



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送信者はシンジ。



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> タカシ捕まったって聞いたんやけど





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ナオトは飛び起きる。



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何度も読み返す。



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意味が理解できない。



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すぐ返信。



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> は?





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> 何で?





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数分後。



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別の知人から連絡が入る。



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噂は本当だった。



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違法な仕事。



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組織関係。



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逮捕。



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その言葉が並ぶ。



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ナオトは呆然とする。



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ケンジの事故。



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マサルの病気。



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シンジの暴行。



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そしてタカシの逮捕。



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次々に崩れていく。



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昔は想像もしなかった。



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河合町ソールズ。



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永遠だと思っていた。



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ずっと続くと思っていた。



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だが現実は違う。



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永遠に続く関係などない。



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維持する努力をしなければ、


人も人生も壊れる。



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午後。



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ニュースサイトに記事が出る。



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違法物流組織摘発。



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関係者複数名逮捕。



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タカシの名前も載る。



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全国ニュースではない。



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しかし地元では十分だった。



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会社にも連絡が行く。



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家族にも伝わる。



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近所にも広がる。



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人生が一気に崩れる。



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夜。



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留置施設。



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タカシは天井を見ていた。



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静かだった。



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何もすることがない。



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頭の中には同じ言葉だけが回る。



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「あの時断っていたら」



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最初の仕事。



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最初の封筒。



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最初の嘘。



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あそこで止まれたかもしれない。



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しかし止まらなかった。



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結果が今だった。



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河合町ソールズ。



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ついに二人目の逮捕者が出た。



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一人は飲酒運転による死亡事故。



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一人は違法組織への関与。



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かつて「男気」を誇った仲間たち。



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だが今、


その言葉は誰も口にしない。



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現実があまりにも重かった。



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そして次に待つのは、


マサルの病状悪化だった。



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彼の身体は、


静かに限界へ向かっていた。



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第43話「切断の可能性」へ続く。

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