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Forever Local」  作者: こうた
第四章「転落」

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第39話「捜査線上」

三月下旬。



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桜が咲き始めていた。



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河合町の人々は春を迎えている。



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入学。



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卒業。



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就職。



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新しい生活。



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未来へ進む季節だった。



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しかしタカシだけは違った。



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未来ではなく、


過去に引きずられていた。



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借金から始まった問題。



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「一度だけ」の仕事。



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それが半年以上続いていた。



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今では完全に抜けられなくなっている。



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仕事は増えた。



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報酬も増えた。



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だが恐怖も増えた。



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夜。



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大阪市内。



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指定された駐車場。



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タカシは車内で待機していた。



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時計を見る。



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午後十一時四十分。



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手汗が止まらない。



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以前なら平気だった。



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しかし最近は違う。



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ニュースを見るたび不安になる。



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警察。



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逮捕。



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摘発。



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そんな言葉に敏感になっている。



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スマホが鳴る。



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佐伯。



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「場所変わった」



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短い指示。



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それだけ。



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理由は説明しない。



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タカシも聞かない。



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聞いてはいけない空気だった。



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車を走らせる。



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しかし気付いていない。



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その頃、


別の場所では警察が動いていた。



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組織犯罪対策課。



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数か月前から捜査が進んでいる。



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違法な物流網。



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資金の流れ。



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関係者。



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電話記録。



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監視映像。



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少しずつ集まる証拠。



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まだタカシの名前は表に出ていない。



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しかし周辺人物として把握され始めていた。



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知らないのは本人だけだった。



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深夜。



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倉庫。



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タカシは荷物を積み込む。



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いつもの仕事。



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しかし今回は空気が違う。



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周囲の人間が神経質だった。



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誰も笑わない。



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誰も雑談しない。



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張り詰めている。



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佐伯も険しい顔をしている。



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「しばらく大人しくしろ」



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タカシは聞き返す。



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「何かあったんですか」



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佐伯は答えない。



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その沈黙が逆に怖かった。



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帰宅後。



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朝四時。



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アパート。



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眠れない。



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財布には金がある。



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借金もかなり減った。



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昔なら喜んだはずだ。



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しかし今は違う。



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心が休まらない。



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警察が怖い。



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電話が怖い。



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インターホンが鳴るだけで緊張する。



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それは自由ではなかった。



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牢屋の外にいるだけだった。



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その頃。



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マサルは病院にいた。



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再検査。



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結果はさらに悪化。



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視力低下。



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神経障害。



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血糖値悪化。



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医師の表情は重い。



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「入院を考えましょう」



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初めて言われた。



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入院。



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つまり本格的に危険な状態。



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マサルは何も言えない。



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頭が真っ白になる。



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一方、


ナオトは資格を活かした新しい業務を任されていた。



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少しずつ評価され始めている。



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収入も上がる可能性がある。



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昔の仲間たちとは違う方向へ進み始めていた。



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しかし嬉しくなかった。



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皆が壊れていくのを見ているからだ。



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事故の日から、


全員の人生が少しずつ崩れている。



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誰かが急に壊れるわけではない。



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少しずつ。



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何年もかけて。



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選択を積み重ねた結果だった。



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そして春。



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警察の捜査はさらに進む。



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佐伯の周囲に捜査員が張り付く。



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関係者の行動確認。



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証拠収集。



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そしてついに、


大規模な摘発作戦が計画される。



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タカシはまだ知らない。



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自分が捜査線上にいることを。



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そして数か月後、


人生を決定的に壊す朝が訪れることを。



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第40話「入院」へ続く。

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