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Forever Local」  作者: こうた
第四章「転落」

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第38話「酔拳」

三月。



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少しずつ暖かくなり始めていた。



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しかしシンジの生活は、


寒々しいものだった。



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仕事。



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酒。



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睡眠。



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また仕事。



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その繰り返し。



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事故の後から酒量が増えていた。



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元々よく飲む方だった。



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しかし今は違う。



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飲まないと眠れない。



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飲まないと不安になる。



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飲まないと何も考えずに済まない。



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完全に依存の入口だった。



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その金曜日。



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会社の送別会があった。



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若い後輩が転職する。



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普通の飲み会。



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普通のはずだった。



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一次会。



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居酒屋。



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ビール。



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焼酎。



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ハイボール。



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シンジは次々と飲む。



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周囲も少し心配する。



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「飲み過ぎちゃうか」



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「大丈夫や」



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いつもの返事。



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そして二次会。



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さらに飲む。



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三次会。



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記憶が曖昧になる。



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午前零時を過ぎる。



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帰り道。



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繁華街。



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酔っていた。



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かなり。



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まともな判断はできない。



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そこへ、


若い男性グループが通る。



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本来なら何も起きない。



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ただすれ違うだけ。



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しかし酔ったシンジは違った。



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肩が軽くぶつかる。



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本当に軽くだった。



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相手も謝る。



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「すみません」



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それで終わるはずだった。



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だがシンジは絡む。



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「何やお前」



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若者たちは困惑する。



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謝っている。



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それでも絡まれる。



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周囲が止める。



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だが止まらない。



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酒が理性を消している。



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言い争い。



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押し合い。



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そして。



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シンジが先に手を出した。



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一発。



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若者の顔に拳が当たる。



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空気が変わる。



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周囲の酔いが一気に冷める。



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若者たちは後退する。



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一人が警察を呼ぶ。



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シンジはまだ怒鳴っている。



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何を言っているのか、


自分でも分かっていない。



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数分後。



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パトカー到着。



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警察官が制止する。



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シンジは抵抗する。



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結果。



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暴行事件。



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現行犯ではないが事情聴取。



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被害届。



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会社にも連絡が入る。



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翌朝。



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シンジは警察署で目を覚ます。



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頭痛。



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吐き気。



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そして記憶の欠落。



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何が起きたのか。



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少しずつ思い出す。



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青ざめる。



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スマホには会社からの着信。



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上司からの着信。



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母親からの着信。



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河合町ソールズのグループLINE。



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ナオトからのメッセージ。



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> 大丈夫か?





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大丈夫ではなかった。



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全く。



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昼。



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被害者側との話し合い。



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幸い大きな怪我ではない。



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しかし暴行は暴行だった。



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被害者は大学生。



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就職活動中だった。



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シンジは謝罪する。



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何度も。



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頭を下げる。



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だが許される保証はない。



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酒を理由にしても意味がない。



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飲んだのは自分だからだ。



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夜。



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自宅。



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シンジは一人だった。



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冷蔵庫を開く。



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缶ビールが並んでいる。



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いつもの光景。



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しかし今日は違う。



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一本取り出す。



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しばらく見つめる。



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そして流し台へ捨てる。



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全部捨てる。



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一本。



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二本。



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三本。



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全部。



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初めてだった。



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酒が怖いと思ったのは。



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事故。



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裁判。



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病気。



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借金。



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そして暴行。



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全ての中心に酒があった。



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しかし、


気付くのが遅すぎた者もいる。



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シンジはまだやり直せるかもしれない。



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だが河合町ソールズ全員がそうではない。



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特にマサルは、


身体の限界が近づいていた。



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そしてタカシには、


警察の捜査網が迫り始めていた。



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崩壊はさらに加速する。



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第39話「捜査線上」へ続く。

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