第37話「最後の婚活」
二月下旬。
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ユウスケは駅前のカフェにいた。
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三十七歳。
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独身。
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交際経験は少ない。
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結婚歴なし。
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最近は婚活が生活の中心になっていた。
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焦っていた。
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同級生の多くは結婚している。
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子供もいる。
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住宅ローンの話をしている。
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一方で自分は、
ワンルームアパートで一人暮らし。
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休日は酒。
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スマホ。
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動画。
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そして婚活アプリ。
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それだけだった。
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今日は紹介された女性と会う日だった。
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三十四歳。
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会社員。
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初婚。
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プロフィールを見る限り、
真面目そうな人だった。
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待ち合わせ時間。
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女性が現れる。
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落ち着いた雰囲気。
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笑顔も優しい。
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ユウスケは緊張する。
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挨拶。
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自己紹介。
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会話が始まる。
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最初は順調だった。
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仕事の話。
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趣味の話。
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休日の過ごし方。
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しかし途中から苦しくなる。
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話題がない。
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人生に変化がないからだ。
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趣味は何ですか。
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そう聞かれても困る。
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酒を飲むこと。
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仲間と居酒屋へ行くこと。
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それ以外がほとんどない。
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資格もない。
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特技もない。
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旅行もしない。
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勉強もしない。
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話が広がらない。
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女性は気を遣ってくれている。
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だが空気は分かる。
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難しい。
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そう感じている。
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帰り道。
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ユウスケは一人で歩く。
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数時間後。
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婚活サービスから連絡が来る。
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結果。
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交際希望なし。
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不成立。
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短い文章。
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だが胸に刺さる。
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スマホを閉じる。
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ため息。
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何人目だろう。
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十人。
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二十人。
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もう分からない。
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そして初めて考える。
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相手が悪いのではない。
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自分なのではないか。
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三十代の大半を、
何も変えずに過ごしてきた。
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成長もしなかった。
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挑戦もしなかった。
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その結果が今なのではないか。
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夜。
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河合町の居酒屋。
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ユウスケは一人で飲んでいた。
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カウンター席。
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昔なら隣に仲間がいた。
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今はいない。
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皆それぞれ問題を抱えている。
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スマホを見る。
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グループLINE。
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静かだった。
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そしてナオトが送った資格講習の写真が目に入る。
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羨ましかった。
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ナオトは変わっている。
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少しずつ。
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確実に。
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自分は何だろう。
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酒を飲み、
婚活で断られ、
また酒を飲む。
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その繰り返し。
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帰宅後。
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酔ったまま鏡を見る。
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疲れた顔。
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腹も出ている。
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髪も薄くなり始めている。
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現実だった。
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若くない。
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もう若くない。
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その事実を受け入れられなかった。
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翌日。
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ユウスケは婚活アプリを開く。
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閉じる。
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また開く。
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そして閉じる。
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気力がなくなっていた。
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その頃、
マサルは足の感覚がさらに鈍くなっていた。
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タカシは危険な仕事を続けていた。
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ケンジは刑務所の中で春を待っていた。
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そしてアキラとシンジも、
別の形で崩れ始めていた。
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河合町ソールズ。
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かつて「男気」を合言葉にしていた男たち。
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だが今、
その言葉で救われる者は誰もいない。
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次に訪れるのは、
シンジの酒癖が引き起こす大きな事件だった。
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第38話「酔拳」へ続く。




