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Forever Local」  作者: こうた
第四章「転落」

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第36話「警告」

二月。



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寒さの底。



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マサルは病院の待合室に座っていた。



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総合病院。



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内科。



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糖尿病外来。



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何年も通っている場所だった。



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しかし今日は違った。



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嫌な予感がしていた。



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足の痺れ。



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視界のぼやけ。



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異常な喉の渇き。



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疲労感。



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全部悪化している。



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名前を呼ばれる。



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診察室。



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担当医はパソコン画面を見ていた。



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表情が硬い。



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マサルはそれだけで察する。



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良くない。



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医師がゆっくり話し始める。



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「検査結果ですが……」



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沈黙。



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「かなり悪化しています」



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胸が重くなる。



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予想していた。



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しかし現実になると違う。



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医師は続ける。



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「神経障害が進行しています」



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「網膜症も疑われます」



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「腎機能も低下しています」



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言葉が並ぶ。



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難しい専門用語。



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しかし意味は分かる。



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体が壊れている。



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ということだ。



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医師は真剣だった。



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「このままでは危険です」



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「本当に危険です」



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「生活を変えないといけません」



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何度も聞いた言葉。



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だが今日は重みが違う。



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医師は資料を見せる。



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合併症。



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失明。



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人工透析。



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足の切断。



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様々な例。



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マサルは目を逸らしたくなる。



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見たくない。



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考えたくない。



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しかし医師は逃がさない。



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「まだ間に合う可能性があります」



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「ただし酒をやめてください」



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「本気で」



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診察は終わる。



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マサルは病院を出る。



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外は曇り空だった。



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寒い。



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だが胸の方が冷たい。



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コンビニの前を通る。



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いつもなら入る。



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酒を買う。



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しかし今日は立ち止まる。



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医師の言葉が頭に残る。



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失明。



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透析。



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切断。



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恐ろしい。



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本当に恐ろしい。



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そして思う。



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自分は何をしていたのだろう。



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二十代。



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三十代。



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酒。



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飲み会。



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パチンコ。



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居酒屋。



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同じ話。



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同じ仲間。



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同じ週末。



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変わらない毎日。



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その代わりに失ったもの。



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健康。



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時間。



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未来。



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多すぎた。



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しかし、


その日の夜。



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マサルは結局酒を買っていた。



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六本入り。



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袋を握る。



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情けなかった。



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本当に情けなかった。



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怖いのに。



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やめたいのに。



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やめられない。



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依存とはそういうものだった。



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一方、


ナオトは講習会場にいた。



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資格更新。



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新しい知識。



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新しい人間関係。



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昔の自分なら来ていない。



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事故が人生を変えた。



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良い意味でも。



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悪い意味でも。



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講習後、


若い技術者と話す。



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二十代後半。



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真面目な青年だった。



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資格を三つ持っている。



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勉強熱心。



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昔なら嫉妬した。



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今は違う。



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学びたいと思った。



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変わり始めていた。



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その頃。



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タカシは倉庫街で待っていた。



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新しい仕事。



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報酬三十万円。



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金額が上がっている。



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それは危険度も上がっているということだった。



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佐伯が近づく。



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「最近警察がうるさい」



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その一言で空気が変わる。



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タカシの背中に冷たい汗が流れる。



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警察。



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最も聞きたくない言葉だった。



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佐伯は笑う。



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「心配するな」



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だがその笑顔は、


以前より不気味だった。



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そしてタカシは初めて思う。



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もしかして、


本当に捕まるかもしれない。



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河合町ソールズ。



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一人は刑務所。



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一人は病に侵される。



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一人は闇に沈む。



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そして残る者たちも、


それぞれの問題を抱えていた。



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崩壊はゆっくり進む。



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しかし確実に進む。



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次に壊れるのは、


婚活に人生を賭け始めたユウスケだった。



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第37話「最後の婚活」へ続く。

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