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Forever Local」  作者: こうた
第四章「転落」

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第35話「足の痺れ」

年が明けた。



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一月。



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河合町には冷たい風が吹いていた。



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マサルは朝六時に目を覚ます。



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いや、


正確には目が覚めてしまった。



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足が痛かった。



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右足。



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特に指先。



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痺れるような感覚。



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最近ずっと続いている。



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数か月前から。



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最初は気にしなかった。



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年齢のせい。



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疲労。



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運動不足。



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そんなものだと思っていた。



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しかし違った。



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日に日に悪化している。



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靴下を履く。



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感覚が鈍い。



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床を歩く。



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違和感がある。



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それでも仕事へ向かう。



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病院の先生は言っていた。



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「危険です」



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「糖尿病性神経障害の可能性があります」



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「酒をやめてください」



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何度も。



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何度も。



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しかしマサルはやめられなかった。



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三十代半ば。



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独身。



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彼女なし。



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出世なし。



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将来への希望も少ない。



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だから酒を飲む。



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飲めば不安が薄れる。



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一時的に。



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本当に一時的に。



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夕方。



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仕事帰り。



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コンビニへ寄る。



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ビール。



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缶チューハイ。



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つまみ。



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いつもの組み合わせ。



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レジを済ませる。



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そしてふと思う。



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これが自分の人生なのか。



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毎日仕事。



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毎日酒。



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毎日同じ。



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何年も同じ。



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二十代も。



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三十代も。



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気付けば三十七歳。



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何も変わっていない。



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いや、


体だけが悪くなっている。



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夜。



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アパート。



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テレビを見る。



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酒を飲む。



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四本目。



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五本目。



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その時だった。



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立ち上がろうとして、


ふらつく。



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テーブルに手をつく。



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危うく転びそうになる。



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胸がざわつく。



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何かがおかしい。



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足が思うように動かない。



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酔っているだけか。



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いや違う。



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最近ずっとだ。



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不安になる。



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しかし酒を飲む。



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不安だから飲む。



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飲むから悪化する。



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その繰り返し。



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スマホが鳴る。



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河合町ソールズのグループLINE。



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ナオトだった。



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> 今度資格の更新講習あるわ





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アキラが返信する。



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> 頑張ってるな





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ユウスケも返す。



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> 俺も何か始めようかな





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少しだけ明るい会話。



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しかしマサルは返信しない。



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スマホを見つめる。



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羨ましかった。



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ナオトは進んでいる。



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少しずつ。



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ゆっくりでも。



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前へ。



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自分はどうだ。



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酒。



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病気。



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後悔。



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それしかない。



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返信画面を開く。



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文字を打つ。



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消す。



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結局何も送らない。



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孤独だった。



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その頃。



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タカシは高級焼肉店にいた。



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以前では考えられない店。



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闇の仕事の報酬。



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金は入る。



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しかし心は軽くならない。



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むしろ重くなっている。



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最近、


警察車両を見るだけで緊張する。



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職務質問される夢も見る。



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不安は消えない。



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金では消えない。



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そしてケンジ。



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刑務所。



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冬の寒さ。



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規則正しい生活。



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毎日同じ時間。



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毎日同じ作業。



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そして毎日、


高橋陽斗の名前を思い出す。



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忘れる日はない。



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事故は終わっていない。



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ずっと続いている。



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被害者家族にも。



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加害者にも。



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仲間たちにも。



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河合町ソールズの崩壊は、


まだ途中だった。



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そしてマサルの身体は、


静かに限界へ向かっていた。



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数週間後。



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病院で告げられる新たな診断が、


彼の人生を大きく変えることになる。



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第36話「警告」へ続く。

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