表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Forever Local」  作者: こうた
第三章「崩壊の始まり」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/82

第28話「誘い」

事故から二か月。



---


河合町の桜は散り始めていた。



---


春は終わりへ向かっている。



---


しかしタカシの人生は、


もっと別の方向へ向かっていた。



---



---


借金。



---


百万円を超えた負債。



---



---


毎月の返済。



---



---


督促の電話。



---



---


減らない元金。



---



---


精神は少しずつ削られていた。



---



---


夜。



---


アパート。



---



---


狭い部屋。



---



---


テーブルの上には、


支払い明細が散乱している。



---



---


タカシは缶チューハイを開ける。



---



---


一口飲む。



---



---


スマホを見る。



---



---


通知。



---



---


またあの相手だった。



---



---


> 困ってるなら話だけでも聞くで





---



---


短い文章。



---



---


以前なら無視していた。



---



---


しかし今は違う。



---



---


借金は判断力を奪う。



---



---


正常な感覚を鈍らせる。



---



---


タカシは返信する。



---



---


> 何の話?





---



---


数秒後。



---



---


すぐ返信が来る。



---



---


> 会って話そうや





---



---


タカシは少し迷う。



---



---


だが断らない。



---



---


翌日。



---



---


ファミレス。



---



---


昼過ぎ。



---



---


相手は四十代くらいの男だった。



---



---


スーツ姿。



---



---


穏やかな笑顔。



---



---


普通の会社員にも見える。



---



---


男は名乗った。



---



---


「佐伯や」



---



---


偽名か本名か分からない。



---



---


タカシも深く聞かなかった。



---



---


佐伯はコーヒーを飲みながら話す。



---



---


「借金あるんやろ?」



---



---


タカシは驚く。



---



---


「なんで知ってるんですか」



---



---


佐伯は笑う。



---



---


「世の中狭いからな」



---



---


曖昧な答え。



---



---


しかしタカシは追及しない。



---



---


余裕がない。



---



---


佐伯は続ける。



---



---


「金が欲しいだけやろ?」



---



---


タカシは頷く。



---



---


本当は違う。



---



---


欲しいのは金ではない。



---



---


安心だった。



---



---


未来だった。



---



---


やり直せる可能性だった。



---



---


だが今は、


それを金でしか解決できないと思っている。



---



---


佐伯は言う。



---



---


「簡単な仕事がある」



---



---


タカシの胸がざわつく。



---



---


危険な匂いがする。



---



---


しかし同時に、


希望にも見えた。



---



---


「何の仕事ですか」



---



---


佐伯は少し笑う。



---



---


「荷物運びや」



---



---


「それだけ?」



---



---


「それだけや」



---



---


簡単すぎる。



---



---


だから怪しい。



---



---


普通なら断る。



---



---


しかしタカシは普通ではなかった。



---



---


借金。



---



---


孤独。



---



---


焦り。



---



---


事故後の閉塞感。



---



---


全てが重なっている。



---



---


佐伯は最後に言う。



---



---


「一回で五万円や」



---



---


タカシの動きが止まる。



---



---


五万円。



---



---


一日では稼げない金額。



---



---


借金返済に回せる。



---



---


その数字が理性を揺らす。



---



---


佐伯は席を立つ。



---



---


「やる気になったら連絡してくれ」



---



---


名刺を置いて去っていく。



---



---


タカシは一人残る。



---



---


名刺を見る。



---



---


会社名は書いてある。



---



---


しかし検索しても出てこない気がした。



---



---


危険だ。



---



---


絶対に危険だ。



---



---


頭では分かる。



---



---


だが、


財布の中身を見ると気持ちが揺らぐ。



---



---


その夜。



---



---


河合町ソールズのグループLINEが久しぶりに動く。



---



---


アキラだった。



---



---


> ケンジ起訴されるらしい





---



---


空気が凍る。



---



---


起訴。



---



---


つまり裁判が始まる。



---



---


死亡事故は終わっていない。



---



---


むしろこれからだった。



---



---


ナオトはスマホを見つめる。



---



---


返信できない。



---



---


誰もできない。



---



---


そしてタカシは、


別の画面を開く。



---



---


佐伯の連絡先。



---



---


指が止まる。



---



---


ほんの少し前なら、


絶対に連絡しなかった。



---



---


しかし今は違う。



---



---


人は崖の縁に立つと、


飛び降りる理由を探し始める。



---



---


タカシはまだ引き返せる。



---



---


まだ。



---



---


だがその時間は、


もうあまり残されていなかった。



---



---


第29話「一度だけ」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ