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Forever Local」  作者: こうた
第三章「崩壊の始まり」

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第22話「赤色灯」

「嘘やろ……」



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ケンジの声は震えていた。



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交差点。



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春の夜。



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車の前方。



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倒れた自転車。



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道路の上には動かない人影。



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数秒前まで普通の夜だった。



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酒を飲み、


仲間と笑い、


家へ帰るだけだった。



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そのはずだった。



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だが現実は違う。



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周囲の人々が集まり始める。



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誰かが叫ぶ。



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「救急車!」



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「警察呼べ!」



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スマホを取り出す人。



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駆け寄る人。



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遠巻きに見る人。



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交差点は騒然となった。



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ケンジは立ち尽くしていた。



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足が動かない。



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頭も回らない。



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酒が一気に抜けていく感覚。



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胃の奥が冷たくなる。



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「大丈夫やろ……」



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思わず口から出る。



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だがその言葉には、


何の根拠もなかった。



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数分後。



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遠くからサイレンが聞こえる。



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赤色灯。



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青色灯。



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夜の街を切り裂くように近付いてくる。



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救急車。



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警察車両。



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ケンジはその光を見つめる。



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人生で何度も見たことがある。



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ニュースで。



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テレビで。



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他人事として。



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しかし今は違う。



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その光は自分に向かっている。



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救急隊員が走る。



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倒れた高校生の元へ向かう。



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懸命な処置が始まる。



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ケンジは見ていられなかった。



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視線を逸らす。



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だが耳には聞こえる。



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緊迫した声。



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無線。



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ストレッチャー。



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救急隊員の足音。



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その全てが現実だった。



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警察官が近付く。



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「運転していたのはあなたですか?」



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ケンジは頷く。



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声が出ない。



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警察官は静かに言う。



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「飲酒はしていますか?」



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沈黙。



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数秒。



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長い数秒。



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そしてケンジは答える。



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「……はい。」



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警察官の表情が変わる。



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すぐにアルコール検査が行われる。



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結果。



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基準値を超えていた。



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言い逃れはできない。



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完全な飲酒運転だった。



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その頃。



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ナオトは自宅にいた。



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シャワーを浴び、


ベッドに横になっていた。



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スマホが鳴る。



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深夜。



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嫌な予感がした。



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画面を見る。



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シンジ。



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電話に出る。



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「もしもし」



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数秒の沈黙。



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そして震えた声。



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「ケンジが事故った。」



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ナオトは起き上がる。



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嫌な汗が出る。



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「怪我か?」



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シンジは答えない。



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代わりに、


別の言葉が返ってくる。



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「相手、高校生らしい。」



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ナオトの心臓が強く脈打つ。



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「大丈夫なんか?」



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シンジは小さく言う。



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「わからん。」



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その一言が重かった。



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わからない。



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つまり、


最悪の可能性がある。



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電話を切る。



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部屋は静かだった。



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時計の音だけが聞こえる。



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ナオトは頭を抱える。



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思い出す。



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忘年会。



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居酒屋。



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代行呼ぶか。



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飲んでるやろ。



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大丈夫。



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あの時止めていれば。



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もっと強く言っていれば。



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鍵を取り上げていれば。



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様々な考えが頭を巡る。



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しかしもう遅い。



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時間は戻らない。



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そして病院。



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集中治療室。



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高橋陽斗の両親が駆け付けていた。



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母親は泣いている。



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父親は言葉を失っている。



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妹もいる。



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何が起きたのか理解できていない。



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数時間前まで、


家に帰ってくるはずだった。



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夕食を食べるはずだった。



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明日も学校へ行くはずだった。



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それが突然奪われた。



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誰にも準備はできない。



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誰にも受け入れられない。



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病院の廊下は静かだった。



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しかしその静けさの中で、


多くの人生が壊れ始めていた。



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ケンジ。



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陽斗。



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陽斗の家族。



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河合町ソールズ。



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まだ結論は出ていない。



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だが、


もう以前と同じ日常には戻れない。



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赤色灯は消えた。



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しかしその光景は、


全員の記憶に焼き付いていた。



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第23話「知らせ」へ続く。

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