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Forever Local」  作者: こうた
第二章「止まった人生」

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第15話「男気という呪い」

「男気。」



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河合町ソールズが最も大切にしている言葉だった。



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学生時代からずっと使ってきた。



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金がない仲間には金を出す。



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困っている仲間がいたら集まる。



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誘われたら断らない。



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飲み会は参加する。



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仲間を優先する。



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それが男気だった。



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少なくとも彼らはそう信じていた。



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土曜日。



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昼過ぎ。



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いつものパチンコ店。



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いつもの顔ぶれ。



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いつもの光景。



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ケンジ。



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タカシ。



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ナオト。



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シンジ。



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ユウスケ。



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アキラ。



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タカシは財布の中身を確認する。



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現金一万二千円。



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本当は使ってはいけない金だった。



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返済に回すべき金だった。



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だがここに来ている。



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「今日は勝てる気がする。」



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ケンジが笑う。



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根拠はない。



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いつもない。



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しかし全員笑う。



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タカシも笑う。



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心の中では笑っていない。



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午後五時。



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結果。



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タカシは二万七千円負けた。



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持っていた金以上に負けた。



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ATMへ向かう。



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追加で引き出す。



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口座残高。



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ほぼゼロ。



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それでも席へ戻る。



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誰も異常だと思わない。



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河合町ソールズでは普通だからだ。



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夜。



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居酒屋。



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タカシは異常なペースで酒を飲んでいた。



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ジョッキ。



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ジョッキ。



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ハイボール。



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ジョッキ。



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ナオトが言う。



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「飲みすぎやろ。」



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タカシは笑う。



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「男気や。」



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全員が笑う。



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その瞬間、


ナオトは妙な違和感を覚える。



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男気。



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またその言葉だった。



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何か都合が悪いことがあると、


男気で片付ける。



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無理して飲む。



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男気。



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無理して金を使う。



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男気。



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断らない。



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男気。



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体調が悪くても参加。



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男気。



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本当は嫌でも参加。



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男気。



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気付けば、


その言葉が全員を縛っていた。



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アキラが酔った顔で言う。



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「なぁ。」



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「俺ら男気って何なんやろな。」



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一瞬だけ静かになる。



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ケンジが笑う。



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「今さら何言うてんねん。」



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タカシも笑う。



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「地元の仲間を大事にすることやろ。」



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「そうか?」



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アキラは珍しく食い下がる。



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「地元の仲間を大事にするのと、自分の人生を捨てるのは違うやろ。」



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静かになる。



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誰も返事ができない。



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それは図星だった。



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全員がどこかで感じている。



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地元の仲間を優先し続けた結果、


失ったものがある。



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資格。



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恋愛。



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出世。



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挑戦。



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時間。



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健康。



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だが認めたくない。



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認めた瞬間、


十五年間が否定される気がするからだ。



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ケンジがジョッキを置く。



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「そんなこと言うてもしゃあないやろ。」



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「今さら変われへん。」



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その言葉に、


誰も反論できなかった。



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変われない。



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それは本音だった。



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変わるには痛みがいる。



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仲間との距離。



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生活習慣。



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考え方。



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全部変えなければならない。



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だから皆、


変わらない方を選ぶ。



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その方が楽だからだ。



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深夜。



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店を出る。



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酔っている。



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全員顔が赤い。



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ケンジが車のキーを取り出す。



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ナオトは一瞬それを見る。



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酒を飲んでいる。



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全員飲んでいる。



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本来なら運転してはいけない。



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だが誰も何も言わない。



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「近いし。」



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「大丈夫やろ。」



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「今まで何もなかったし。」



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いつもの言葉。



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危険を正当化する言葉。



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ナオトは心のどこかで思う。



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いつか事故が起きる。



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いつか取り返しのつかないことになる。



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そんな気がする。



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しかし口には出さない。



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出しても変わらないと思っている。



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それが河合町ソールズだった。



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男気。



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仲間。



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地元。



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その言葉に守られながら、


その言葉に壊されていく。



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誰もまだ気付いていない。



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自分たちが信じているものこそが、


最大の呪いになっていることを。



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そして一年後。



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その呪いは最初の犠牲者を生む。



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飲酒運転による死亡事故。



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その日まで、


あと少しだった。



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第16話「大丈夫という病」へ続く。

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