詐欺師との出会い
黄金の塔へ続く道。その途中の村は、やはり死んだように静まり返っていた。
人々は石のように座り込み、自ら動こうとする気配さえない。
その無気力な群衆の中で、ただ一人、ラットだけが騒がしく動き回っていた。
「さあ、今のうちに手に入れておくんだ! いずれ塔が崩れ、世界に『飢え』が戻ったとき、これを持っていない奴から死ぬことになるぞ!」ラットは、生気のない目をした男の胸ぐらを掴み、無理やり布袋を握り込ませようとしている。
「おい、聞いてるのか? 今なら、あんたの持ってるその『古いペンダント』一つでいい。欲という苦しみが戻ったとき、このお守りがあれば天国へ行けるんだ。……ほら、受け取れよ!」男は反応しない。欲を奪われているため、ラットが売る「未来の救い」にさえ興味が持てないのだ。
「……チッ、これだから感情のない連中は。商売あがったりだぜ」ラットは忌々しそうに唾を吐くと、こちらへ歩いてくる主人公に気づき、顔を歪ませた。
「おいおい、なんだ。あそこの彫像どもよりはマシな目をしてるじゃねえか。……だが、なんだその薄汚い剣は。そんな鉄屑を大事そうに下げて、まさか塔の主に会いに行こうってのか?」ラットは主人公の「錆びた剣」を指差し、鼻で笑った。
「やめときな。あそこの『聖者様』は、何も欲しがらないやつが大好物なんだ。あんたみたいな空っぽな奴が行けば、そのまま石に変えられちまうのが関の山だぜ。……それとも、こいつを買って『欲』の予習でもしていくかい?」ラットが差し出したお守りから、微かに甘く、脳を麻痺させるような香草の匂いが漂う。
「……必要ない」男は短く答え、ラットを無視して歩き出そうとした。
「おっと、つれねえな。まあいいさ、今はまだ『その時』じゃない。だがな、旦那……あんたがもし本当にあそこの王を倒すつもりなら、覚えておきな。人間が欲を取り戻した瞬間、最初に生まれるのは感謝じゃない。……『もっと欲しい』という、終わりのない地獄だ。俺はその時、特等席で待たせてもらうよ」ラットの不吉な笑い声を背に、男は黄金の塔へと視線を向けた。足元に転がる「お守り」を買い与えられた人々の、何も映さない虚ろな瞳が、これから起きる波乱を予感させていた。




