14「只今、戦いの練習中」
14「只今、戦いの練習中」
『どうしてお前は、いつもそうなんだ!』
本気で叫んでいるのだろう・・・ヘッドセットからだけでなく
リアルに明人の声が壁越しに聞こえて来る
『何故に自己完結して終わるかな!気付いたら言おうよ!』
透矢は何だかおかしくなって笑いを漏らす
『あぁ~きと・・・リアルにも声が聞こえて来てる、近所迷惑だぞ』
透矢は・・・
明人がいつもと同じ様に不貞腐れているのを想像してしまい
明人が怒り出すのが解っていても
笑いが抑えられなくなってしまっていた。
なんやかんやで気が付くと、時計の針はAM2時を指している
ダンジョンに入ってから数分しか経っていないが・・・
普段、明人と透矢は・・・
自分達のルールで12時にはネットゲームを終了して
寝床に入っている為・・・
眠気を通り越し、変なテンションに突入して来ていた。
『明人君!透矢君!それ、後にしよう!』
晴季さんが2人の口論を止める
『そうだ・・・ダンジョン攻略のタイムリミット』
エスタシオンが少しあわてている。
『あぁ~大丈夫!透矢が戦い方を見つけてんだから
何度か、普段のゲームでクリアしてる場所なんだし問題無い!』
と・・・明人の軽い答え
『何でお前が自信たっぷりなんだよ・・・
あぁ~そうかそうか、そう言う言い方するんなら
いつも通り、俺の為に協力して貰うからな・・・覚悟しろよ?』
透矢も自信たっぷりだった。
『とぉ~やは、俺にナニして欲しいんだ?
今度は、ちゃぁ~んと口で言わないと俺・・・知らんよ?』
画面の前・・・明人は1人でニヤニヤしていた
『そうだな・・・広い場所で敵の数が3体以上の時には
羊を追っ駆ける牧羊犬の様に、敵を一か所に纏めてくれ
但し・・・纏めるつもりで囲まれるなよ?』
雰囲気的に、透矢も画面の向こうでニヤニヤしている
微妙な空気感に、晴季さんは画面の向こうで苦笑いをし
画面の中でエスタシオンが怪訝そうな表情を浮かべていた。
『インヴェルノおにぃさんは・・・
魔法や弓矢が外れてしまう理由が解っているの?』
エスタシオンの質問は、皆の疑問であった
『半分憶測だけどな・・・
戦う時、自分が攻撃を仕掛ける相手には必ず
ロックオンした目印みたいく、敵の「足元に円」とかが付くだろ?
あれね・・・攻撃を仕掛けて、相手がダメージを受ける前に
敵が移動して、その場から一定範囲離れると・・・
完全に、外れちまってるみたいなんだわ』
『えぇぇぇぇ!』と明人と晴季さんの声がハモル
『じゃあさじゃあさ・・・俺の「ビアンコの攻撃」や
「エスタシオンの魔法」が外れないのはなんでなんだ?』
時間を気にしながらも、明人の質問に透矢は律儀に答える
『流石にエスタシオンのは知らねぇ~よ・・・
明人のビアンコは、戦士で・・・
「攻撃」から「ダメージ」を与えるまでの「タイムラグ」が少なくて
敵が「攻撃範囲」から「外れたりしてない」から外れないんじゃないのか?
本当の所は知らんけど・・・』
そう言いながら、透矢はインヴェルノを敵陣へと向かわせ
透矢は話を切り上げる事にした。
『そろそろ、時間が惜しくなってきた・・・
ラスボスまでに俺と晴季さんが戦い方に慣れる必要がある
慣れる為に敵を虱潰しに叩いていきたい、協力してくれ』
透矢は、ここで一呼吸置いて・・・言葉を続ける
『それと、エスタシオン・・・
明人のビアンコを失ったら、ラスボスは倒せない
ビアンコが死なない様に、注意して見守ってやってくれ
・・・俺のインヴェルノの回復魔法じゃ
確実に回復してやれそうにないんだ、頼むよ』
『おい!透矢、その言い方だと・・・
俺が回復アイテム使いこなせてないみたいじゃないか』
と、明人が憤慨していたが・・・
使いこなせていないのが明白な為、ここでは皆に無視された
皆、同意してやる事は出来なかったのだ。
そして、戦闘が始まった、敵3体分の太さの通路に犇めく敵
明人のビアンコが先陣を切り、攻撃をしながら敵を惹き付け
囲み込まれない様に飛んだり跳ねたりしながら、後に下がり
敵の足止めをする
透矢のインヴェルノと晴季さんは、二手に分かれ
明人の背後から、足止めされ進みの遅くなった敵目掛け
攻撃を仕掛ける・・・
インヴェルノ「降り注ぐ魔法」と、晴季さんの「弓矢の雨」
敵は見る間に数を減らし
エスタシオンは・・・時々、ビアンコを回復しながら
その情景を眺めていた。
戦いが一段落して突き進む通路
『ビアンコおにぃさんがぴょんぴょん跳ねて戦うのは
敵の攻撃を除ける為だったんだね』
改めてエスタシオンに言われて、明人は溜息を吐く
『もしかして、お前は・・・
俺が無意味に跳ねてるんだと思ってたのか?』
『だって・・・戦士は楯で、攻撃を防げるでしょ?
そこまで敵を除ける必要ないんじゃないんですか?』
ごもっともな意見に『私も同じ事思ってた』と晴季さん
『気遣いも、伝わってなきゃ「道化のピエロ」だな』
透矢は・・・画面の向こう側で腹を抱えて笑っていた。
『悔しいけど・・・
俺の気遣いを理解してくれるのは、お前だけなんだな』
明人は物凄く悲しくなってきていた
『明人はね・・・敵を取り逃がさない様にしてたんだよ
楯で攻撃を受け流すと・・・敵が横に流れて
後に行かれてしまうし、囲まれる可能性だって高くなる
攻撃も正面からじゃないと同じ事になるから、そうならない様に・・・
正面から攻撃を仕掛ける様に心掛けていたみたいだよ』
『透矢、そこまで俺を気遣ってくれるのは嬉しいんだが
そこは、俺に説明させてくれるべきなんじゃないか?』
透矢の気遣いに、明人は違う意味で泣けてきた。
相手を「気遣って」、やった事を「気付かれない」で
「あの人は、何やってるんだろう?」って思われている。
そんな人が・・・私は何故か何となく好きです。




