13「いつもと勝手の違うダンジョン」
13「いつもと勝手の違うダンジョン」
やっとの事で、辿り着いたダンジョンの入口・・・
そんな長い道程ではなかった筈なのに、いつの間にか
日付を1時間程、越えてしまっていた
ここへ来るまでに、こんなに時間が掛かってしまった理由は・・・
話し掛けたら、暇を持て余していたらしい住人達が集まってしまい
エスタシオンの為に色々、情報やアイテムを持ってきたからである。
ネット上に、エスタシオンの様な礼儀正しい御子様は少ないらしく
年長者系の住人達に、エスタシオンは可愛がられているみたいであった
雰囲気で、住人達は本当にエスタシオンを心配しているのが良く分かる
ここの住人になって、3日程度で・・・
これだけの住人に可愛がられるエスタシオンの人柄に
3人は・・・
「何故、リアルで虐められる事になったのか?」が、不思議に思えた。
住人達はダンジョンの中について
口々に『危険だから気を付ける様に』と、注意する
「ここに入って、出てきた事のある住人」から聞いた
と、言う話によると・・・
「中の敵は、外の敵より動きが良いらしい」と、言うので
本当に、油断はできないのであろう
『安全第一って事で、宝箱を開けに行く寄り道はしない方向で行こう』
透矢の提案に異論はでなかった。
それぞれ・・・装備と、回復アイテムの確認をし
画面の向こうの3人が、トイレ休憩等のリアルの準備を整え・・・
ここへ来た時の「攻撃態勢」で進む事を確認してから
・・・入口へと進む・・・
ダンジョンの入口から入り・・・切り替わった画面の先
後悔は、先に立つ事は無かった。
「攻撃当てる練習してから来れば良かったかもしれない」
敵の動きのグラフィックを見て
画面の向こうに居る三人と、エスタシオンは後悔する事となった
「動物的な滑らかさのある俊敏な敵の動き」に、鳥肌が立つ
透矢の「魔法を敵に当てる自信」が・・・
晴季さんの「弓矢を敵に当てる自信」が・・・
綺麗さっぱりと、消え去る
画面上のエスタシオンは、恐怖感からか蒼白になっている
『絶対に囲まれたくねぇ~な・・・』
明人の言葉に・・・皆が、本気で同意した。
入り口付近でうろうろし始めた晴季さんが
『進むしかないみたいね』と、言う・・・引き返す事は出来ないらしい
『姑息だが・・・1体づつ誘き寄せて戦ってみよう』と、透矢・・・
『そうねぇ~・・・取敢えず、試しに私が・・・
前に出て一番近くに居る敵を「1体」矢で射って来るわ』
晴季さんが『下がっててね』と、言い残し敵陣に近付き
弓矢で敵の1体を射る・・・
が、左右に居た2体程オマケが付いてきた。
迫って来る「3体」の敵・・・
少しづつ下がりながら晴季さんが弓で射り・・・
透矢のインヴェルノとエスタシオンが魔法で
攻撃を仕掛けている内に・・・
明人の「ビアンコの出番」は無く
意外と簡単に、3体の敵を倒す事ができてしまった。
『なんか、嫌だな・・・敵がリアルに動く分
「誘き出して、袋叩き」にすると・・・動物虐待してるみたいで』
明人の言葉で、その場の空気が重くなり・・・
少しそんな感じを感じていた、晴季さんとエスタシオンが沈黙する
透矢からは・・・
「仕方がないなぁ~」と言わんばかりの笑いを含んだ溜息が漏れた
『明人・・・さては、お前・・・拗ねてるんだろぉ~
ハブられたと思って寂しかったのか?相変わらず可愛い奴だな』
透矢に言われた言葉がどうも図星だったらしく、明人が少し声を荒げる
『ちょっ!拗ねてねぇ~し!寂しがっても無いし!
それ以前にお前が俺の事を「可愛い」とか言うな!』
明人と透矢のジャレ合う様な会話を聴きながら・・・
晴季さんはくすくす笑いだす
エスタシオンは肩を震わせ笑いをこらえていた。
明人と透矢の御蔭で、変な緊張感は解け・・・
全員いつもの調子に戻っていく
『晴季さん、さっき弓を放つ時に何か工夫しましたか?』
晴季さんが『何もしてないけど?』と答えると
透矢は画面の前でほくそ笑んだ
『これからは、自分の「前後左右」の「直線上」に入る
自分に向かって来る敵を中心に攻撃してみてください
多分、その方が攻撃が外れないと思いますから』
『え?ホント?』と、晴季さんは通路の先に入る敵で試す
本当に外れない事を確認し・・・歓声を上げた。
『斜め45度の敵にも当たるとは思いますが・・・
確実なのを狙った方が効率いいんで、その方向で御願いします』
本調子を取り戻した透矢に、明人は嬉しそうに声をかける
『余裕だな、自分の方は大丈夫なのか?』
透矢の「人の事より自分の事」な性格上
「自分用の策」が「無い訳が無い」と考え、明人は答えを催促する
『魔法は、弓での攻撃と一緒じゃないから・・・
エスタシオンに、その指示を出さないんだろ?』
『それはちょっと違うかな?俺のとエスタシオンは違うよ
同じ魔法使いでも、エスタシオンの魔法は絶対に外れないから』
確信を持った透矢の声に皆が驚く
『気付いてたんだ・・・』エスタシオンの反応に
明人と晴季さんは、更に驚いた。
『「直線上」を「軌道」にする魔法は、弓と一緒なんだが
「敵の存在する場所」を「視点」に攻撃する魔法は
俺のは外れるが、エスタシオンのは外れた事がないんだよ』
画面上で「動揺して」右往左往している
『騙すつもりとかなかったんだ』と言うエスタシオンに・・・
透矢は事も無げに告げる
『悪い、最初から気付いては、いたんだ・・・
「魔法が外れる」って俺が言った時・・・驚いてただろ?
って事は・・・「エスタシオンのは外れてないんだろうな」って』
白けた沈黙がその場を包んだ。
意思の疎通って難しいんです・・・
訊ねないと、相手が何を思っているか不明ですよね。




