12「一番の脅威は、村長のモルスさんかもしれない」
12「一番の脅威は、村長のモルスさんかもしれない」
この場所の内装の雰囲気的で「金融ヤクザ」にしか見えない
にこやかで人当たり良く、景気が良さそうな「社長」・・・ではなく
「村長」は『この場所の発見者の「モルス」と言います』と
礼儀正しく自己紹介してくれる。
それに倣い、エスタシオン以外の3人がそれぞれ自己紹介すると・・・
モルスは晴季さんの自己紹介の所で、ビックリするくらい食いついてきた
立ち上り、机に乗り出して・・・
『もしかして貴方は女性ではありませんか?
こんな所で一輪の花に出会えるなんて、私はなんて幸運な男なのでしょう。』
明人にとって耳馴染んだ・・・称賛の例え話が繰り広げられ始めた
透矢も普段、明人と一緒に行動する事が多い為によく耳にする言葉であった
『イタリア人かな?』透矢の言葉に、明人は・・・
『ヨーロッパのラテン系のノリではあるな・・・意味が思い出せないけど
「モルス」って、多分・・・発音的にラテン語みたいだし』
怒涛の如くスラスラ出て来る甘い言葉に晴季さんは、うろたえていた。
『私は何時か・・・貴女を迎えに行くのが、私である事を切に願います。
いえ、寧ろ今からでも・・・貴女を迎えに行きたいくらいです。
御迎えが欲しくなった時、私に貴女を迎えに行く栄誉をください
どうぞ、今からでも私を指名して・・・』
『モルス村長!夏おねぇさんに手を出さないで!』
エスタシオンが制止しなければ、延々と続いたかもしれない口説き文句は
ここで強制終了される。
画面の前で休憩していた明人と透矢はエスタシオンの勇気を褒め称えた
『偉いぞエスタシオン・・・
今日中に本題に入れないまま、日付が変わるかと思ったよ』
時計の針は1時間以上進み23時30分を指そうとしている・・・
晴季さんの安堵の溜息も聞こえてきた。
不貞腐れている様に見えるモルスが、愚痴を零すのが聞こえて来る
『女性に出会ったら口説くのがマナーでしょうに・・・』
「もしかしたら、本当にイタリア人かもしれない」と
明人と透矢は・・・日頃の経験から、人知れずそう思った。
モルスは椅子に座り、足を組んで軽く溜息を吐く
『仕方ないですねぇ・・・女性を危険な目に遭わせるのは不本意ですが
この町にある、私達寄りのダンジョンをクリアして来てください』
とっても似合っている態度だが・・・横暴過ぎて従う気が失せる
「手伝ってくれるよね?」と眼差しを向けるエスタシオンが居なければ・・・
これが自分以外の人の為でなかったら・・・
明人と透矢は『断る!』と、口走っていたかもしれない。
それにしても・・・晴季さんに対してのモルスの態度は違っていた
『姫君!危険な場所へ貴女を1人向かわせる私を御許し下さい
ここの住人はダンジョンに1回一人しか入れないのです。
一緒に行けない私の代わりに・・・
「花」と「回復アイテム」を贈りましょう、御武運を祈っています。』
どうやってやったのか?画面上の晴季さんの頭に花が飾られる・・・
村長の家を出て、晴季さんがボソリと零すまで気付かなかったが・・・
『この装備外せないんだけど・・・呪いかな?』
画面上の晴季さんはリアルと違い、男キャラなので・・・
頭に飾られた花が、浮いた存在になっていた
それぞれ、村長からのダメージでの脱力感を抱え
4人は、この町のダンジョンのある方向へとゆっくり歩く事にする・・・。
その間にエスタシオンは自分の決意を語った
『僕は取敢えず・・・この世界から脱出「する・しない」の前に
色々誤解が合って怒り狂ってる悠流と話がしたいんだ』
エスタシオンが、本当にそれを望んでいるのは明白だった。
明人は透矢と視線を合わせ・・・頷き合い言葉を返す
『どうしてそこまで、あの子を気にするか分からないけど・・・
前にも言った様に、俺達は貸せる手があれば手は貸すからな』
2人は貸せる手が無くても、全力を尽くして助ける事を心に決めていた。
『あらあら、男の子は鈍いわねぇ・・・理由なんて簡単でしょ?
史樹君が悠流ちゃんを好きだからに決まってるじゃない!
ね?そうでしょ?』
晴季さんの言葉で画面上のエスタシオンが赤面する
『好きって・・・悠流はただの幼馴染ですよ?
ただ何となく、怒らせたまま放置するのって嫌じゃないですか?』
そこかしこに動揺が見て取れるエスタシオンが微笑ましく見えた
『それに・・・悠流ほっとくと僕の家の前で大騒ぎしてそうでしょ?』
3人は・・・グリースの本体の悠流を思い出し納得した。
『じゃ一応、情報収集しながらダンジョンに向かいましょうか・・・』
晴季さんの提案で、道すがら通行人に声をかけてみる事にする
皆、さっきの会話の内容が聞こえていた様で
真っ赤になるエスタシオンに応援の言葉を掛ける程、協力的だった・・・
・・・何故、グリースにエスタシオンの声が聞こえず
自然に動く姿も見れなかったのか?は、結局・・・分からなかったが
この世界の住人の動きと声を、見聞きできる適合者は・・・
ゲームの世界に取り込まれてしまう事があるらしく
「リアルとゲームの世界の境界線上に居るのではないか」
と、言う・・・噂があるらしかった
そして・・・
リアルのプレイヤーの力を借りて、自分の願いを叶えた者だけが
この世界から姿を消し「リアルの世界に戻って、家族の元に帰った」
と、言う・・・噂もあるらしい
メボシイ情報は無かったが・・・
この世界の住人の人の温もりと、回復アイテムを手に入れる事はできた。
「ヨーロッパのラテン系」と
「アメリカ大陸に居るタイプ」の「ラテン系」は違うモノです。




