11「クラウド世界の住人と資格のある者」
11「クラウド世界の住人と資格のある者」
ここでやっと、エスタシオンが
グリースを避けていた理由を知る事ができた
画面上で、身振り手振りを加えて口を動かすエスタシオン・・・
グリースには・・・声は勿論、動きも見えてはいなかった
そう、この場に居るのにエスタシオンの声はグリースに届かなかったのだ
理由は分からない・・・
明人と透矢と晴季さんに見え聞こえるエスタシオンの動きや声は・・・
グリースの本体「悠流」には認識できなかったのである。
グリースは、「自分が学校で史樹を無視したりしてきた」から
「今、ここで意地悪するのだ」と怒りを露わにし・・・
エスタシオンは悲しそうに
悔しそうに届かない声を悠流に投げかけ続ける・・・
『ママの言う通りだったわ、人間的にケッカンのある親から産まれた
ケッカン品のくせに!私にやり返すなんてアリエナイから』
グリースはそう言うと・・・
スカイプの回線を切断し、ログアウトしてその場から居なくなる。
『ごめん・・・俺達が軽率だった』
明人と透矢は、画面上で涙を拭っているエスタシオンへ同時に謝る
『こちらこそ・・・リアルで悠流が迷惑掛けたでしょ?』
エスタシオンは落込みながらも笑顔で返してくれた
『それに今日は、きっと・・・これでよかったのかも・・・
資格の無い者を連れて入れない場所に、おにぃさん達と夏おねぇさんを
連れて行こうと思っていたから・・・一緒に来てくれるよね?』
なんとなく拒否権の無い誘いに、3人は従う事になった。
エスタシオンが連れて行きたがっている場所の入り口は・・・
敵と戦って、歩き回らなければ行けないフィールド上に存在していた
透矢のインヴェルノが魔法で先制攻撃を仕掛け
明人のビアンコが敵陣へ突っ込み・・・晴季さんが弓で援護射撃をする
時々、インヴェルノとエスタシオンが攻撃魔法と回復魔法を使って、と・・・
連携を取って途中までは、サクサクと進んで行けた。
どのくらいフィールドを進んだ頃であろうか?
『おい!ここって、こんなに敵のレベル高かったっけ?』
ビアンコを敵陣に突っ込ませながら、明人がぼやく・・・
『敵に対して魔法が外れるって時点で、いつものゲームと違うっぽいな』
透矢の声にも焦りが現れ出す
『史樹君・・・ここでもし、私達が死んだら・・・
史樹君と同じ状況になったり・・・なぁ~んてしないわよね?』
晴季さんの不安そうな声に、エスタシオンは・・・
『ここで死んだ人に会った事もないし・・・
そんな話を聴いた事も無いので、僕には何とも・・・』と
息絶え絶えの声・・・
どう見ても疲れている様子に・・・
エスタシオンは、皆の不安を煽ってしまう。
『明人!露払いを頼む!
晴季さんと俺メインの攻撃態勢に変更しよう・・・』
透矢の提案で「エスタシオン」を「護る方向」の連携に変更する
『明人がお前を・・・エスタシオンを護るから回復係、任せるぞ』
久し振りに透矢が「ギルド長」らしく振舞い
敵と距離を置いて戦う構図へと戦いを全員で作り変えていった
進みは遅いが敵を確実に「仕留め・進む」方法は功を奏し
何度かのエスタシオンの為の休憩を経て、目的地に辿り着く事ができた。
辿り着いた場所は・・・いつも来ている町とは少し違っていた
「NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)」のいない街・・・
プレイヤーの存在しない電子制御されたキャラクターの「存在しない街」
エスタシオンの様に動くキャラクターで賑わう町がそこにあった。
エスタシオンを先頭に案内されて歩く街中
その場所では・・・
プレーヤーによって操作されているエスタシオン以外の
3人の動きがぎこちなく見えて・・・
とっても浮いた存在となってしまっていた。
存在が浮いてしまっているからだろうか?
「外側からしか、見る事の出来ない」
エスタシオン以外の3人から見ると・・・
画面上の範囲に見える歩行者が
こちらをこそこそ覗き見しているのが、嫌になる程に見えてしまう
ちょっと、辛いって言うか・・・見るに堪えない状況であった
囁く住人達の声も、ダイレクトにヘッドセットから聞こえて来る
そんな聞こえて来る話の内容を纏めると・・・
闖入者は、初めてではないらしかった
他にも色々な人が何人ものプレイヤーを連れて来ているらしい・・・
どうやらここには「資格のある者」しか入れないみたいで・・・
「資格がある」と言う事は、「かわいそう」な事らしい
最後に・・・エスタシオンは何にも言わないが、3人はどうやら
「村長」と呼ばれている人の所に案内されているらしかった。
『歩きながら聞こえて来てたとは思うけど・・・
この中におにぃさん達と夏おねぇさんに紹介したかった人が居るんだ』
エスタシオンは立ち止まり建物を指す
案内されて連れてこられた場所は・・・
ゲーム内でも村長の家になっている一際目立つ建物であった。
中に入ると、外の喧騒が切り離され、嘘の様に静かになる
そこには・・・
ゲーム内で見慣れた内装には無い、オフィスの様な内装が広がっていた
奥にある社長室の様な場所には・・・
シックなデザインの机と、偉い人とかが座ってそうなデザインの椅子に
ゲーム内では見た事が無い、スーツ姿の・・・「男」のキャラクター
多分、「村長」であろう人物が偉そうに座っている。
親しげに挨拶するエスタシオンを余所に、3人が「村長」と言う存在を
「心の底」から「胡散臭い」と、思ったのは・・・言わずと知れた事であろう。
私の文章力で、ネトゲをやった事の無い人に
私が「伝えたかった世界観」を「伝えられたかどうか」が
ちょっと心配です。




