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10「繋がっていても立ち入り禁止」

10「つながっていても立ち入り禁止」


明人と透矢の知る「晴季さん=夏美さん」と、今日初対面の「節花さん」には

過去かこ、何かがあったのだろう・・・

ちょっと空気が読めていない、「知りたがりの御子様」グリースじょう捕獲ほかくして

2人は植え込みまで下がる


『君は人の気持ちを考えるべきだ、いてもらって心が軽くなる事もあれば

無理やり「き出されて心をむ者」だっている・・・

相手を助ける技量も無いのに何でも知りたがるんじゃない!』

するどい感情のこもった、透矢のしずかな声音こわね

グリースが・・・『何それ?わけわかんない!私のどこが悪いのよ!』と

子供染こどもじみた反論はんろんをし、事態じたい収拾しゅうしゅうのつかない事態に変化していく。


『近所の迷惑めいわくになってしまいます、御願ですからさわがないでください』

透矢とグリースの口論こうろんは・・・瞬時しゅんじに節花さんによってしずめられた

『悠流さん、昨日も言いましたが・・・

「もう、2度と来ないでください」もう、我が家にかかわらないでください』

神経質そうな雰囲気ふんいきただよう、節花さんの泣きながらの懇願こんがんで・・・

グリースが今まで、どれだけ近所迷惑になったかを知る事ができた。


晴季さんはグリースをなだめ・・・先に1人で家に帰し

明人と透矢の3人で、エスタシオンが居るはずの家へと御邪魔おじゃまする事にした


元2世帯住宅だったのを半分、賃貸ちんたいで借りているのだと言う家の中は

いたる所に配置はいちされた除菌じょきんスプレーと除菌ウエットティッシュが気になったが

質素しっそちりほこりも無く綺麗きれいで・・・家主が潔癖症けっぺきしょうであることを物語ものがたっている

『細かい事にも気遣きづかうタイプみたいだな』透矢の言葉に明人はうなずいた


これなら、エスタシオンの本体「史樹」に何かあれば

その母親「節花さん」が気付いている筈だ・・・と、思ったのだが

『私があの子をまもれないから、私の事を息子むすこは嫌いなんです』とか

『息子はここに居ますが・・・出ては来ないのです』とか・・・

節花さんから必要な情報を手に入れる事はむずかしく


家の半地下はんちかにあるガレージの後ろの部屋

外からでも開けられるかぎではなく、かぎが内側から掛けられた自室に閉籠とじこも

「史樹」には会う事も、その様子ようすうかがう事もできなかった。


今日、分かった事は・・・

グリースが、聞き分けのない中学生の女の子である事と

「グリース=悠流」は「エスタシオン=史樹」と本当に幼馴染おさななじみである事


エスタシオンの本体「史樹」は、母子家庭の家の子で

学校でいじめられていた事を親が気付くくらい虐められていた事


「史樹」の母親「節花さん」と「晴季さん」は昔からの知り合いで

今、独身の晴季さんに妊娠経験があって・・・子供は産まれてこなかった事


その子の父親と節花さんの夫の間に・・・過去何かがあって

今にいたる・・・と、言う事くらいだった。


晴季さんのもうし出で、まかせた「グリースへの対応」が気になりつつ


リアルでは何の収穫しゅうかくも無く・・・夜を迎え

明人と透矢は家に帰り、就寝準備しゅうしんじゅんびととのえてネットゲームの世界にり出す。


2人は・・・エスタシオンと落ち合い、今日のリアルの話をした

エスタシオンは・・・

『僕は、お母さんを嫌った事なんてないのにな・・・』と

『僕はとっても親不孝者おやふこうものなんだね』と・・・悲しそうな表情を見せる


何にもできない自分達に、瀬無せない気持ちがきおこる

明人と透矢は、偽善的ぎぜんてき気休きやすめの台詞せりふを言う事も出来なかった。


いつもの待ち合わせ場所・・・そこにはグリースも来ていた

『グリースの気持ちを聴いてやって欲しい』との

晴季さんの申し出で・・・スカイプの参加者は4人になる。


『史樹は・・・私にとって特別なんです』

鼻をすすりながら言うグリースの言葉は悲しげだった

明人が理由を訊くと・・・グリースは吐き出すように語り出す


『私の家族はダメなんです。

ママが近所の人達に対するグチを毎日言うから

パパが「疲れている」って言ってママの話を聞かなくなって・・・

そんなパパが辛そうだったから、私がママに「グチを言うの止めて」って

お願いしたら・・・ママは「自分は悪くない」って怒ってしまって

ママが私の事までグチる様になって最後には・・・

パパが仕事を理由に家に帰らなくなりました。

私は、パパの事も悪く言うママを見てるのが辛くなって

最近まで、家に帰るのが辛くて夜遅くまで外にいたんです。』

グリースのふるえる声が、泣いている様な声色が苦痛を物語る


『最初は私も楽しんでいました・・・

でも、周りの人に流されてたら大人の人が手を出して来て怖くなって

り返ったら、誰も助けてくれる人なんかいなくなってたんです。

なのに・・・史樹は、史樹だけは・・・

こんな私を幼馴染だからって普通にあつかってくれたんです・・・

くない人達と一緒に、きたない事してた私を気づかって

直接ちょくせつ、手を差し伸べて・・・救い出してくれたんです。』


話ながら啜り泣きする声を聴くPCの画面の向こう側

明人と透矢は溜息を吐いた・・・先に話を聴いていた晴季さんは何も言わない

「怖くなった理由」と「善くない人達」・「きたない事」は

「知りたくなっても、立ち入るべきではない」と判断し

2人は・・・エスタシオンに、この場への参加要請さんかようせいを出した。

他人の悪口を井戸端会議で話す親は・・・家でも言っていて

家庭は割合不仲である。

そして、そんな親に育てられた子供は・・・悪意無く同じ事をする。

世知辛い世の中になったモノです。

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