第七話 「初めての朝――隣にいる現実と、ちょっとしたドキドキ」
――翌朝。
チュンチュン……
(……)
静かな朝。
カーテンの隙間から差し込む光。
⸻
(……ん?)
吉田誠は、ゆっくりと意識を浮上させる。
⸻
(ここ……どこだ?)
一瞬、思考が止まる。
だが次の瞬間――
(あ)
(同居……)
(結婚……)
(妻……)
⸻
(うわああああああああああああああああ!!)
脳内大爆発。
だが体は動かない。
なぜなら――
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(近い)
⸻
すぐ隣に。
本当にすぐ隣に。
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小野寺真琴が、寝ている。
⸻
(……)
(マジか)
⸻
昨日の記憶が一気に蘇る。
一緒にご飯。
一緒に生活。
そして――
同じベッド。
⸻
(これ現実!?)
夢じゃないかと疑う。
でも――
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(呼吸、聞こえる)
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規則正しい寝息。
ほんの少し動く髪。
柔らかい雰囲気。
⸻
(……やばい)
(可愛い)
⸻
普段の“余裕ある大人の女性”じゃない。
完全に無防備な姿。
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(これ見てていいのか……?)
倫理と本能が戦う。
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【選択肢】
①起きる
②見続ける
③逃げる
(②一択だろ)
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誠はそっと観察を続ける。
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(まつ毛長いな……)
(肌きれいだな……)
(距離、近すぎないか……)
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あと数センチで触れそうな距離。
⸻
(いや待て)
(これ……)
(昨日より近くない!?)
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よく見ると――
真琴の手が、誠の服を軽く掴んでいた。
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(え)
⸻
(えええええええええ!?)
⸻
(掴んでる!?なんで!?)
⸻
その瞬間。
ピクッ。
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「……ん……」
⸻
(起きる!?)
誠、硬直。
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ゆっくりと。
真琴が目を開ける。
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「……」
「……」
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数秒の沈黙。
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「……おはよ」
寝起きの声。
少しだけ低くて、柔らかい。
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(破壊力!!!!)
⸻
「お、おはようございます!」
思わず敬語。
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「固い固い」
くすっと笑う。
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そのまま――
まだ手は離さない。
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「……逃げなかったね」
「え?」
⸻
「普通、距離近くて逃げるでしょ」
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(いや逃げたかったですよ!?)
とは言えない。
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「……動けなかっただけです」
「正直でよろしい」
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少しだけ、距離がさらに縮まる。
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(近い近い近い近い!!)
⸻
「ねえ誠くん」
「は、はい」
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「朝のイベントって大事だよね」
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(イベント!?)
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真琴が少しだけ体を起こす。
髪がさらっと揺れる。
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「初めての朝だし」
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(やばい予感しかしない)
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「ちゃんと挨拶しよっか」
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「挨拶……?」
⸻
「夫婦の」
⸻
(え)
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トン。
軽く額に触れる。
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「……おはよう、旦那さん」
⸻
(無理!!!!)
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誠の思考、完全停止。
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♪テレレレッテレー
【好感度+50】
【精神耐久-80】
(バランス壊れてる!!)
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「……どうしたの?」
くすっと笑う真琴。
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「いや……破壊力が……」
「なにそれ」
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そのままベッドから起き上がる。
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「朝ごはんどうする?」
完全に日常モードへ。
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(切り替え早いなこの人!?)
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「俺、作ります!」
「お、頼もしい」
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「昨日のクエストの続きなんで」
「まだ続いてたんだ」
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キッチンへ向かう誠。
後ろから――
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「ちゃんと歯磨きしてからね〜」
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「はい!」
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(やっぱそこ最優先なんだな……)
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洗面所。
二人並んで歯磨き。
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(これ……)
(めっちゃ夫婦っぽい)
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「見てる?」
「見てないです」
「嘘」
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(バレてる!!)
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鏡越しに目が合う。
少しだけ笑う真琴。
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(……いいなこれ)
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朝ごはん。
トーストと簡単なサラダ。
⸻
「いただきます」
「いただきます」
⸻
今度は――
自然に隣に座る。
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(慣れてきたな……)
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「ねえ」
「はい」
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「こういうの、続けられそう?」
⸻
(……)
⸻
誠は少し考える。
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「……続けたいです」
⸻
正直な気持ち。
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真琴は一瞬だけ驚いて――
そして、優しく笑った。
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「そっか」
⸻
それだけ。
でも十分だった。
⸻
こうして。
初めての朝は――
少しのドキドキと、たくさんの温かさで始まった。
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