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第六話 「同居スタート――生活という名の本格冒険」


 ――数日後。


「……ここが」


 吉田誠は、マンションの前で立ち尽くしていた。


 見上げる。


 そこそこ綺麗な外観。

 駅近。

 完全に“大人の生活圏”。


(場違い感すごいな俺……)



「どうしたの?」


 隣で、小野寺真琴が鍵を取り出す。


「いや、その……ここに住むんですよね」


「そうだけど?」


「俺、18ですよ?」


「知ってる」


 即答。



「まあ大丈夫だよ」


 カチャッ、と扉を開けながら。


「今日から“夫婦”なんだし」


(その言葉、便利すぎない!?)



 ガチャ。


 扉が開く。



「……お邪魔します」


「自分の家だよ?」


「まだ慣れないんですって!」



 中に入る。


 ふわっと柔らかい香り。


 清潔感のある部屋。


 リビング、キッチン、寝室。


(うわ……)


(ちゃんと“生活”してる空間だ)



「とりあえず荷物そこ置いていいよ」


「はい」


 誠はカバンを置く。


 そして――


(ここで生活するのか)


 現実がじわじわ押し寄せる。



 ♪テレレレッテレー


【新クエスト発生】

『夫婦生活を成立させろ』

難易度:★★★★★+


(前より難易度上がってない!?)



「まずルール決めよっか」


「ルール!?」



 真琴はキッチンに立ちながら言う。


「生活はゲームと同じ。ルール大事」


「確かに……」



「はい、じゃあ第一条」


 指を一本立てる。



「歯磨きは絶対」


「そこ最優先!?」


「最優先」



「第二条」


「はい」


「夜更かししすぎない」


「ゲーム的にはキツい……」


「健康第一」



「第三条」


 少しだけ間を置く。



「……無理しないこと」



(……)


 誠は少し驚く。



「急に優しい」


「だって夫婦だし」



 さらっと言う。


 でも、その言葉はちゃんと重い。



「……はい」



「よし、じゃあ次」


「まだあるんですか!?」



「第四条」


 少しニヤッと笑う。



「家では、もうちょっと距離近くていいよ」


「え」



「歯医者だと我慢してるでしょ?」


(バレてた)



「……まあ」


「ここはセーフエリアだから」



(セーフエリア!?)


 誠の脳内にまた表示が出る。



【セーフエリア解放】

・接触可

・会話自由

・好感度上昇補正あり


(補正ありが強すぎる)



「じゃあ」


 真琴が近づく。


 一歩。


 さらに一歩。



(近い……)



 トン。


 軽く肩に触れる。



「これくらいは普通ね」


「普通の基準どうなってるんですか」



「夫婦基準」



(強い……)



 そのままキッチンへ。


「ご飯どうする?」



「俺、何か手伝います!」


「お、いいね」



「何すればいいですか?」



「じゃあ……これ切って」


 渡されたのは野菜。



(来た……)


(生活イベント)



 トントントン。


 包丁の音。



「……上手いね」


「一応、家でやってたんで」


「ポイント高い」



 ♪テレレレッテレー


【好感度+5】


(可視化されてる気がする)



「でもさ」


「はい」


「こういうの、なんかいいね」



「え?」



「一緒にご飯作るの」


 少しだけ優しい声。



(……)


 誠は手を止める。



「……はい」


 自然に笑う。



 しばらくして。


 料理完成。



「いただきます」


「いただきます」



 テーブルを挟んで向かい合う。



「……」


「……」



(なんか静かだな)


 さっきまで賑やかだったのに。



「……」


 真琴も少し考えている様子。



「ねえ」


「はい」



「隣、来る?」



(え)



「向かいだと距離あるし」



(距離……)


 誠はゆっくり席を移動する。



 隣に座る。



(近い)



「これでいい」


 真琴が満足そうに言う。



「……食べづらくないですか」


「慣れる」



(慣れるのか……)



 二人で食べる。


 距離は近いまま。



 時々、肩が当たる。


 ちょっとしたことで笑う。



(これ……)


(めちゃくちゃいいな)



 食後。



「じゃあ次のクエスト」


「まだあるんですか!?」



「風呂どうする?」



(来た)


(超高難易度イベント)



「えっと……」


 思考フル回転。



「……時間ずらします?」



 沈黙。



 真琴がじーっと見る。



「……真面目だね」


「え」



「合格」



 ポン、と頭を軽く叩かれる。



(また合格!?)



「今日は別でいいよ」


「助かります……」



「その代わり」



「はい?」



「明日からは、もうちょっと慣れてね」



(ハードル上がった!?)



 その夜。


 ベッド。



「……どうします?」


「どうする?」



「寝る場所」



 ベッドは一つ。



(そりゃそうだよな!!)



「……半分こ」



 シンプルな答え。



 二人、横になる。


 距離、わずか数センチ。



(近い……)


(静かだ……)



「誠くん」


「はい」



「今日どうだった?」



(どうだった……)



「……楽しかったです」



「そっか」


 少しだけ微笑む気配。



「私も」



(……)



 その一言で。


 全てが報われた気がした。



 こうして。


 交際0日婚から始まった二人は――


 ついに“同居”という本格的な冒険に突入した。



 それは、派手な戦いはないけれど。


 毎日がイベントで。


 小さな選択の連続で。



 そして何より――


 少しずつ距離が縮まっていく、優しい冒険だった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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