第四話 「2週間ぶりの歯医者――バレたら即終了!?秘密の夫婦プレイ」
――2週間後。
「……来てしまった」
吉田誠、歯医者の前で立ち尽くす。
(ここが……俺の妻の職場……)
そして同時に――
(最大の危険地帯)
⸻
【ミッション】
『夫婦関係をバレずに診察を受けろ』
難易度:★★★★★
(絶対バレるだろこれ!!)
⸻
自動ドアが開く。
ウィーン。
「いらっしゃいませ〜」
受付の声。
見慣れた空間。
だが一つだけ、決定的に違う。
(あの人が……妻)
⸻
受付に――いた。
小野寺真琴。
いつもの制服。
いつもの笑顔。
そして――
(完全に“他人モード”)
⸻
「診察券お預かりしますね」
「は、はい」
完全に初対面の距離感。
(演技うますぎない!?)
⸻
診察券を渡す瞬間。
ほんの一瞬だけ。
指が触れる。
そして――
トン。
軽く指で叩かれる。
(え?)
⸻
そのまま何事もなかったように受付は進む。
「少々お待ちください」
「……はい」
⸻
(今の何!?)
誠の脳内がざわつく。
だがすぐに理解する。
(“合図”か……!?)
⸻
待合室で座る誠。
周囲には他の患者。
静かな空間。
(ここでイチャイチャとか無理だろ……)
そう思った瞬間――
⸻
「吉田さーん、どうぞ」
呼ばれる。
声の主は――
真琴。
⸻
(来た……)
覚悟を決めて立ち上がる。
⸻
診察室。
椅子に座る。
倒される。
視界は天井。
そして――
(近い)
再び、この距離。
⸻
「口、開けてくださいね〜」
いつもの声。
でも――
少しだけ違う。
(なんか……優しい?)
⸻
ふわっ。
(うわああああああああああああああああ!!!)
来た。
あの感触。
⸻
「……動かないでくださいね?」
小さな声。
周りには聞こえない音量。
⸻
「……わざとですか」
誠も、同じく小さな声で返す。
⸻
一瞬の沈黙。
そして――
「……半分くらい」
(認めた!?)
⸻
(ちょっと待て)
(妻が仕事中に何してんだ!?)
だが――
(嬉しいのが悔しい!!)
⸻
キュイイイイイイ
治療音が響く中。
小さな会話が続く。
⸻
「ちゃんと歯磨きしてる?」
「してます」
「ほんとに?」
「夫婦の約束なんで」
⸻
ピタッ。
一瞬、手が止まる。
⸻
「……そういうの、弱いからやめて」
「え」
「今、ちょっとニヤけそうになった」
(可愛いなこの人!?)
⸻
再び治療が始まる。
だがその距離は――
さっきより少しだけ近い。
⸻
(これ……)
(普通にデートよりドキドキするんだが!?)
⸻
数分後。
「はい、今日はここまでです」
椅子が起き上がる。
⸻
「……お疲れ様です」
「……患者ですけど」
「ふふ」
⸻
その時。
「小野寺さん、次お願いします」
別の歯科助手が声をかける。
⸻
「はーい」
真琴はすぐに“仕事モード”へ戻る。
そして――
誠の方を見ずに言う。
⸻
「受付でお会計お願いしますね」
完全にプロ。
(すげえ……)
⸻
受付。
会計を済ませる。
真琴はもう別の患者対応中。
視線すら合わない。
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(さっきまであんなに近かったのに)
不思議な感覚。
でも――
(これも、悪くない)
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外に出る。
空気を吸う。
⸻
その瞬間。
ポケットの中でスマホが震える。
⸻
(?)
取り出す。
画面を見る。
⸻
メッセージ。
送信者――
真琴。
⸻
『ちゃんと我慢できてえらいね、旦那さん』
⸻
(……)
(破壊力!!!!!!)
⸻
誠はその場でしゃがみ込んだ。
「無理……」
⸻
顔が真っ赤になる。
心拍数限界突破。
⸻
その頃、歯医者の中。
真琴は何事もなかったかのように働きながら――
ほんの少しだけ、楽しそうに笑っていた。
⸻
こうして。
“バレたら終わり”の秘密の夫婦関係は――
スリルと甘さを増しながら、続いていく。
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