第十七話 「まさかの鉢合わせ――プライベートで同僚と遭遇」
――休日のショッピングモール。
(今日は平和なはずだった)
吉田誠は、そう思っていた。
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「ねえ誠くん」
「はい」
「ちょっと買い物付き合って」
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(デート回、継続中)
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だが、その時だった。
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「あれ?」
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聞き覚えのある声。
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振り向くと――
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「……小野寺さん?」
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真琴の足が止まる。
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(え)
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そこに立っていたのは。
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落ち着いた大人の女性。
少し気品のある雰囲気。
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「久しぶりね」
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真琴が小さく息をつく。
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「……菫さん」
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城ヶ崎菫。
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歯科医院の関係者。
真琴の同僚。
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(職場関係者きたああああ)
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そして――
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「え?」
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その横にいた青年。
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「……誠?」
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(え)
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(今、呼ばれた?)
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顔を上げる。
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「……穂高?」
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吉田誠の大学の同級生。
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(最悪の偶然!!!!)
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「お前ここで何してんの?」
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「いやそれはこっちのセリフ」
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沈黙。
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数秒。
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そして――
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「……え?」
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菫と穂高、同時に真琴を見る。
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真琴と誠を見る。
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(終わった)
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誠の脳内、完全フリーズ。
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「ちょっと待って」
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穂高が指差す。
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「その距離」
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(近い)
(確かに近い)
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真琴が誠の腕を軽く掴んでいる。
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(やめろ今それ!!)
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「……説明してもらえる?」
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菫の声。
静かだが圧がある。
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(逃げ道なし)
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誠は一度深呼吸する。
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(ここだ)
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そして――
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「……結婚してます」
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静かに言う。
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数秒の沈黙。
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「「え?」」
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完全に揃う声。
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真琴も少し驚いた顔。
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「え、言うの?」
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(もう無理だろこれは)
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「隠す方が無理です」
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誠、開き直る。
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「真琴さんとは結婚しています」
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はっきり。
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菫の目が丸くなる。
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「……そうだったの?」
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穂高は誠を見る。
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「お前マジで?」
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「マジ」
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短い返答。
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静寂。
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そして――
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「……なるほどね」
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菫が微笑む。
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「そういう関係だったのね」
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真琴は少しだけ頷く。
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「でも、職場の子たちには秘密で」
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誠がすぐ補足する。
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「杏里沙さんと、水瀬さんと、雪音さんには」
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「言わないでください」
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真剣な声。
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菫は少し笑う。
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「了解」
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穂高も肩をすくめる。
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「まあ……言わないでおくわ」
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(助かった……)
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そのまま――
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「せっかくだし、ご飯行く?」
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菫の提案。
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(展開早い!!)
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こうして。
なぜか4人で食事へ。
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レストラン。
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「で?」
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穂高がニヤニヤする。
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「いつから?」
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「最近」
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誠が即答。
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「歯医者きっかけ?」
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「そう」
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「えぐいなそれ」
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(やめろその言い方)
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一方で――
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「真琴ちゃん」
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菫が優しく聞く。
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「幸せ?」
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一瞬の沈黙。
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真琴は誠を見て。
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「……うん」
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小さく頷く。
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(……)
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誠の胸が少し温かくなる。
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その時。
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「でもさ」
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穂高が急に真顔になる。
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「これ学校のやつらにバレたら終わるぞ」
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(やめろ現実的なこと言うな)
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「だからお願い」
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誠は頭を下げる。
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「絶対言わないで」
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穂高は一瞬考えて――
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「まあ……いいけど」
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「その代わり」
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(来た)
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「今度奢れ」
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「分かった」
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即答。
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菫は微笑む。
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「いい関係ね」
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その後。
4人で食事は続いた。
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少しぎこちないが、悪くない時間。
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帰り道。
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「……バレなくてよかったね」
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真琴がぽつり。
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「はい」
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「でも」
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少しだけ笑う。
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「秘密、増えちゃったね」
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(確かに)
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誠は頷く。
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「でも守ります」
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「うん」
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手がそっと重なる。
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自然に。
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少しずつ。
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二人の“世界”は広がりながらも――
守るものも増えていく。
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こうして。
新しい秘密と味方を得た一日が終わった。
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