第十六話 「夫婦の秘密強化期間――甘さ加速と新たな日常」
――その夜。
(……続きって何だ)
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吉田誠、玄関前で立ち尽くす。
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『帰ったら、ちゃんと続きね』
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(あれの意味を考えたら入れない)
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だが。
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「ただいま」
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入るしかない。
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「おかえり」
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リビングには――
普通に座っている真琴。
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(あれ)
(普通だ)
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「ご飯、軽く作ってあるよ」
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(いつも通り!?)
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「いただきます」
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テーブルには、優しい和食。
煮魚と味噌汁。
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(この人ほんと落ち着いてるな……)
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「今日、頑張ったね」
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ぽつりと真琴が言う。
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「……なんとか」
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「ちゃんと守った」
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(……)
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「偉い」
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軽く頭を撫でられる。
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(破壊力が日常に混ざってる)
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「……あの」
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「うん?」
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「続きって……」
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一瞬の沈黙。
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そして。
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「……何だと思う?」
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(試されてる!?)
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【選択肢】
①さっきのキス
②それ以上
③分からない
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(③だろ安全なのは!!)
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「……分からないです」
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正直に答える。
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すると――
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「正解」
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(また正解!?)
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くすっと笑う。
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「じゃあ、教えてあげる」
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(来た)
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立ち上がる真琴。
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「こっち」
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手を引かれる。
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寝室。
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(来たああああああああああ)
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ベッドの前で止まる。
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「そんなに構えなくていいよ」
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「いや無理です」
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「正直だね」
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少しだけ近づく。
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「“続き”はね」
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(ゴクリ)
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「……日常の続き」
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(え)
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軽く肩にもたれかかる。
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「こういう時間」
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(……)
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「隠してる分、家ではちゃんとやりたい」
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静かな声。
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「ちゃんと夫婦でいたい」
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(……)
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誠はゆっくり頷く。
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「……はい」
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そのまま、隣に座る。
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距離が自然に近い。
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「今日さ」
真琴がぽつり。
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「ちょっと怖かった」
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「……俺もです」
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「でも」
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少しだけ笑う。
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「守ってくれたね」
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(……)
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「守ったつもりは……」
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「守ってたよ」
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そう言って。
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そっと手を握る。
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(また……)
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恋人繋ぎ。
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でも今は、自然だった。
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「ねえ」
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「はい」
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「これからもっと大変になると思う?」
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「……なると思います」
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「だよね」
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二人で少し笑う。
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「でも」
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誠は続ける。
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「今みたいにやれば、いけると思います」
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一瞬、真琴が目を見開く。
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そして――
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「……ほんとに18歳?」
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(またそれ!?)
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「多分」
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二人で笑う。
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そのまま。
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ゆっくりと距離が近づく。
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今度は自然に。
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軽く、触れる唇。
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短いキス。
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「……これは日常」
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(基準どうなってんの!?)
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でも。
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(嫌じゃない)
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むしろ。
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(安心する)
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そのまま、肩を寄せ合う。
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テレビもつけず。
ただ、静かな時間。
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外では“他人”。
中では“夫婦”。
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その境界を守りながら。
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二人の関係は、少しずつ深くなっていく。
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こうして。
“秘密の夫婦生活”は――
新しい段階へと進み始めた。
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