第十四話 「限界接近――ついにバレる?決定的瞬間」
――その日。
(今日は……本当にヤバい気がする)
吉田誠、歯医者の前で深呼吸。
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【警告】
『イベント:発覚フラグ接近中』
(やめてくれ!!!!)
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ウィーン。
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「いらっしゃいませ〜」
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中に入った瞬間。
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(空気が違う)
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全員いる。
しかも――
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(配置が……おかしい)
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受付に杏里沙。
奥に水瀬。
横に雪音。
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(完全に布陣組んでるだろこれ!!)
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「こんにちは〜吉田さん♪」
杏里沙、満面の笑み。
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「こんにちは……」
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(圧がすごい)
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「今日は早いですね〜」
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(普通のこと言ってるのに疑われてる感じがする!!)
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その時。
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「……」
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水瀬と目が合う。
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(見られてる)
(完全に見られてる)
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さらに。
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「……あの」
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雪音が近づく。
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「今日も……頑張ってください」
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「え、あ、はい」
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(応援された!?)
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その時。
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「吉田さん、どうぞ」
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真琴。
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(来た……)
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だが――
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(なんか距離遠くない?)
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完全に“他人モード”。
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(いやそれはそれで寂しいな!?)
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診察室。
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椅子に座る。
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(今日は絶対に何も起こさない)
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誠は心に誓う。
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「口開けてくださいね〜」
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いつもの声。
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だが。
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(距離……近い)
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(いやいつも通りか)
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キュイイイイイイ
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その時。
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「小野寺さん」
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水瀬の声。
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(また来た!!)
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「はい」
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「少しいいかしら」
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(え)
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診察中に呼び出し!?
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「……すぐ戻ります」
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真琴が離れる。
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(え、待って)
(俺一人!?)
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代わりに――
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「じゃあ私が見ますね〜」
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(杏里沙!?)
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(最悪のパターン!!)
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ぐいっと距離が近づく。
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「ふふ、緊張してます?」
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(するに決まってるだろ!!)
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その時。
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「……」
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杏里沙が、じーっと誠を見る。
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(やばい)
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「ねえ」
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(来た)
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「正直に答えてください」
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(尋問!?)
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「はい……」
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「小野寺さんのこと、どう思ってます?」
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(またこの質問!!)
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(だが今回は――)
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【作戦】
『無難に回避せよ』
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「……いい人だと思います」
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(完璧!!)
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だが。
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「それだけ?」
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(深掘りきた!!)
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「えっと……」
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(どうする!?)
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その瞬間。
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ガチャ。
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「戻りました」
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(神!!!!)
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真琴帰還。
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「交代するね」
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「はーい」
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杏里沙が離れる。
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(助かった……)
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だが。
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真琴の目が、ほんの少しだけ鋭い。
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(あ)
(これ怒ってるやつだ)
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治療再開。
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そして――
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ふっ。
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(!?)
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今度は、軽く手を握られる。
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(おい!!!!)
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だが今日は違う。
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ギュッ、と少し強め。
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(……え)
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視線が合う。
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ほんの一瞬。
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(これ……)
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(“安心しろ”ってことか)
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誠は、力を抜く。
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だが、その瞬間。
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「……」
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水瀬の視線。
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(見られてる!?)
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ほんの一瞬。
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“握られている手”に視線が落ちる。
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(終わった)
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(完全に見られた)
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空気が止まる。
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キュイイイイイイ……
音だけが響く。
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(やばい)
(やばい)
(やばい)
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その時。
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「小野寺さん」
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水瀬が静かに言う。
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「はい」
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「手元、少し甘いわよ」
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(!?)
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視線は――
“器具”に向いていた。
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(助かった!?)
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「すみません」
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真琴が一歩引く。
自然に手が離れる。
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(ギリギリセーフ……)
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心臓バクバク。
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数分後。
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「はい、終わりです」
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診察終了。
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(生きた……)
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だが。
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受付で。
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「吉田さん」
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水瀬が呼ぶ。
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(また!?)
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「はい」
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ゆっくり近づく。
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「……」
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数秒、見つめられる。
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(言われる)
(絶対言われる)
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そして――
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「……虫歯、順調に治ってるわね」
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「……はい?」
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(それだけ!?)
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「ちゃんと通いなさい」
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「はい!」
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拍子抜け。
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だが――
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「……」
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去り際。
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ほんの小さく。
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「……気をつけなさい」
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(え)
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(何に!?)
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外に出る。
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スマホが震える。
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『さっきの、危なかったね』
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(分かってるよ!!)
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『でも』
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『ちゃんと我慢できてえらい』
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(またそれ!?)
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さらに。
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『帰ったら褒めてあげる』
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(褒め方が怖い!!)
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誠、その場でしゃがむ。
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「もう無理……」
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一方、歯医者内。
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「ねえ」
杏里沙。
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「今の見た?」
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「何を?」
水瀬。
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「なんか……変じゃなかった?」
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「……」
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少しの沈黙。
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「……気のせいよ」
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「ほんとに?」
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「証拠がない」
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(まだ耐えてる……!)
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その横で。
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「……」
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雪音がぽつり。
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「……手、ちょっと近かったです」
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(言った!?)
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「気のせい」
水瀬、即答。
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「は、はい……」
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(ギリギリの均衡すぎる)
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こうして。
決定的瞬間は――
“未遂”に終わった。
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だが。
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疑惑は消えない。
むしろ、確信に近づいている。
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そして――
⸻
二人の秘密は、もうすぐ限界を迎えようとしていた。
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