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第十一話 「夫婦の休日デート――美味しい時間と、少しだけ近づく距離」


 ――休日。


「今日は完全オフ!」


 真琴が伸びをする。



「どこ行きます?」


「グルメデート」



(来た)


(食イベント強化回)



「いっぱい食べるよ」


「歯に優しい範囲でお願いします」


「ちゃんと考えてる」



 二人は街へ。


 人通りの多い商店街。



「まずはここ」


 最初に入ったのは、落ち着いた和食屋。



「ここ、出汁がすごいの」



 席に座る。



「おすすめは?」


「これ」



 運ばれてきたのは――


 ふわふわのだし巻き卵。


 湯気が立っている。



「……美味そう」



 一口。



「……っ」



(やばい)


(ふわふわすぎる)



「でしょ?」


 真琴が嬉しそうに笑う。



「優しい味……」


「歯にも優しい」



 続いて。


 煮物、白身魚、柔らかいご飯。



 二人でゆっくり食べる。



「こういうの好きなんですか?」


「うん、落ち着くから」



(この人、ほんと大人だな……)



 店を出る。



「次はデザート」


「甘いの大丈夫ですか?」


「今日は特別」



 入ったのはカフェ。



 注文したのは――


 とろけるプリン。



「これも柔らかい」


「完全に歯基準ですね」



 一口食べる。



「……甘い」



「美味しい?」


「めちゃくちゃ」



 真琴も一口。



「……うん、いいね」



 ふと目が合う。



「……なんか」


 誠が呟く。



「夫婦っぽいですね」



「今さら?」



 くすっと笑う真琴。



「でも、こういう時間いいね」



(……)



 誠は静かに頷く。



 夕方。



 帰り道。



「今日どうだった?」


「最高でした」



「単純」



「でも本音です」



 一瞬、真琴が少しだけ照れる。



「……そっか」



 そのまま帰宅。



「ただいま」


「おかえり」



(自然に言えてる……)



 少しの沈黙。



「……ねえ」


 真琴がぽつり。



「はい?」



「お風呂、どうする?」



(来た)


(例のイベント)



「……時間ずらします?」



「今日は一緒でもいいよ」



(え)



(え!?!?)



 数分後。



 浴室。


 湯気が立ち込める。



(落ち着け俺)


(これはイベントだ)



 向かい合うわけではなく、少し距離を保つ。



「……」


「……」



(気まずい!!)



「そんな緊張しなくていいよ」


 真琴が笑う。



「いや無理ですって……」



「夫婦だよ?」



(その言葉強いな……)



 しばらくして。



 誠がふと口を開く。



「……あの」


「うん?」



「いつも診察の時に……」



「うん」



「その……胸、当たるじゃないですか」



 一瞬、真琴が止まる。



「……うん」



「他の人にも当たってるのかなって」



(何聞いてんだ俺!?)



「……それで?」



「真琴さんって……どれくらいなんですか?」



 少しの沈黙。



 そして。



「……恥ずかしい質問するね」



「すみません……」



 だが、真琴は小さく息を吐いて。



「……Jカップ」



(え)



(えええええええええええ!?)



「……マジですか」



「マジです」



(そりゃ当たるわ!!!!)



 頭の中で納得と混乱が同時に起きる。



 その時。



「……見たい?」



(え)



(今なんて!?)



 真琴が少しだけいたずらっぽく笑う。



「……」



 誠の顔が一気に赤くなる。



(ここで断れるか!?)



 ゆっくりと――



 頷く。



「……はい」



 一瞬の静寂。



 だが。



 真琴は少しだけ照れながら。



「……ほんと、バカだね」



 そう言って、軽く肩をぶつけてくる。



(からかわれてる……?)



「でも」



 ほんの少しだけ近づいて。



「……そのうちね」



(え)



「今はまだ早い」



(ですよね!!!!)



 誠、心の中で土下座。



 二人で笑う。



「……でも」



 真琴がぽつり。



「こういう話できるようになったのは、いいことかもね」



「……はい」



 少しだけ距離が近づく。



 湯気の中。



 静かで、温かい時間。



 こうして。


 休日デートは――


 美味しい時間と、少しのドキドキと。


 そして、もう少しだけ近づいた距離で終わった。   



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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