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召喚ゲーマー  作者: tamazo
第二章
15/26

15.冤罪

■15.冤罪■


 ガビーは次の町で別な乗り合い馬車に乗り換えなくては、とあわてていた。 大急ぎで乗り換えなくてはいけないので、乗り遅れては大変なことになる。 なにしろ、シャドウ様を待たせているのだから。

 しかし、途中の町から乗ってきた一人の男が気になっているのも事実だった。

 その男は、ガサツな流れ者達に見送られ、この馬車へと乗り込んできた。 見た目はちょっとかっこよく、それほど乱暴者どころか強そうにも見えないが、おそらくあの流れ者達の仲間、つまり同類だろう、と考えていた。


 ガビーは流れ者に良いイメージは持っていない。 実際、これまで出会った流れ者といえば、トーマスとサンドラぐらいであったたのだが、その二人はかなり特殊な部類に入ることは想像にたやすい。 そのほかの一般的な流れ者については、噂レベルで耳にすることぐらいしか知らないが、ガサツな乱暴者、という話がほとんどであった。 それに、中には犯罪に手を染めるものすらいると聞くのである。

 


 一方、シャドウは、ようやく来た乗り合い馬車に乗り込むとほっとした。 共に討伐した流れ者たちに盛大に見送られることとなり、周りの乗客たちの視線が痛いが、この先も歩き続けることを考えたら許容範囲だろう。



 乗り合い馬車を護衛する流れ者達は、シャドウをちらちらと見ていた。


「さっき知り合いに聞いたんだが、あの男、一人で盗賊団を壊滅させたらしいぞ。」


 一人がささやく。


「まじかよ。 見た感じそんな風にはみえねえぞ?」



 ガビーは、護衛の話す流れ者の話に耳をそばだてていた。 全ては聞き取れないが、ぽつぽつといくつかの単語は聞き取れる。


「盗賊? それっぽくは見えない? たしかに。」


 馬で併走する護衛達がちらちらと男をみているのは、おそらく警戒しているのだろうと、ガビーは思った。



「マジかよ……。」


 シャドウは護衛達が自分の噂をしているのを聞いていた。 恐らくあの中の誰かが面白おかしく伝えたのだろう、と。

 念のため買っておいたマントのフードを、シャドウは深めにかぶる。

 そして、ふと、乗客の一人が法師の錫杖を持っていることに気がついた。


 シャドウはその法師を見ると、金色の髪の若い女性のようだった。 どうやら一人で修行の旅をしている法師であろうと想像できる。

 しかも、かなり可愛い。 一人で大丈夫なのだろうか、などと考えながら、ぼんやりとその法師を眺めていた。



 ガビーは、男の視線を感じていた。 おそらく男を見たら、目が合うだろう。 しかし、この男は盗賊である。 盗賊と目線を合わせるなど、あってはならないことだった。

 ふと、ガビーは盗賊が若い女性をさらって売り払う話を思い出す。 つまり、この男は盗賊の一員で、この馬車を襲い売り払う若い女性を物色しているのだろう、と考える。

 そのような狼藉が許されて良いはずがない。 ガビーは行動に移すべきと思ったが、護衛はまだ動いていない。 つまり今動くことは的確ではない、ということだろう。 おそらく、この馬車にはほかにもこの男の仲間がいる、ということが考えられる。 

 とすると、次に泊まるときに、一網打尽にするつもりなのだろう。 その時がチャンスだ。



 シャドウはトイレに行きたくなってきていた。 乗合馬車にトイレなど付いているはずもなく、かといって個人の都合で止めてくれるかも分からない。 歩いていれば、その辺で済ませるのだが。 ふとマップを見ると、そろそろ次の町が見えてきている。 それまで我慢だ、と考えていた。



 ガビーは、男の様子を探っていた。 さきほどからそわそわし始めていた。 どうやら何かをたくらんでいるようだ。 そういえば、男は先程「マジかよ」とかつぶやいたようだ。 つまり、護衛に自分の正体がばれていることが分かったのだろう。 つまり、男は逃げ出そうとしている?! そんなことはこの私が許さない。 そう、神に変わり、天罰をこの私が下さなくては。



 馬車が次の町に近づくと、護衛達は到着を知らせるべく、馬を走らせていく。 もうすぐ町につく。



 シャドウは、馬車が止まるな否や、トイレに駆け込もうとひらりと馬車から降りようとした。

 しかし、突然ガビーがシャドウの腕を捕まえる。


「衛兵さん、この人痴漢です!」


 盗賊です、という予定だったが、思わず痴漢です、と言ってしまったガビーだが、どの道捕まれば真相は明らかになるだろう、問題ないと考える。


 ガビーの声に、あわてて衛兵たちがシャドウを取り押さえる。 殆ど村人のような衛兵達ではあったが、なんとか取り押さえられたようだ。


「いや、ちょっと、冤罪だから。」


 ガビーはシャドウが取り押さえられたのを確認すると、次の乗り合い馬車へと走っていく。




 シャドウの冤罪はほかの乗客達によりすぐにはれたのだが、告発した法師がすでにいなくなっていたため、この数日間なかなか釈放されなかった。

 法師は社会的に地位を認められていたため、衛兵たちは自分達の判断でシャドウを釈放することに二の足を踏んでいた。 そのため上層部に問い合わせ中となっていた。

 

 そんなシャドウに救世主が現れる。 ともに盗賊を討伐した法師たちが、シャドウのひとつ後の乗り合い馬車で到着した。

 法師たちは、一つ前の乗合馬車できた若い流れ者が冤罪でつかまっているという噂を聞き、もしやと駆けつけた。 法師達が冤罪を認めることで、ようやくシャドウは開放されたのだ。


「いや、助かりました。」


「こちらこそすみません。 その法師、見つけたらとっちめてやりますよ。」


 シャドウと法師達は、お互いにぺこぺこと頭をさげあう。 そして、お互いにエンドウッドへ向かっていることを知り、ともに向かうこととなった。




 シャドウ達は、ようやくエンドウッドに到着すると、ひとまず教会へと向かった。

 教会はエンドウッドの森に近い町外れにあり、やはりどう見ても神社である。 法師達がいうには、彼等の指導役にあたるレリザ小師が常駐しており、彼等はその小師に挨拶にむかっているようだ。


「こんにちわ。」


 法師達が教会に入ると、一人の若い女性の法師が出てくる。


「こんにちわ。 って、あなた……。」


「あーーーっ。」


 その若い女性の法師はガビーだった。

 

 


「すみません、本当にすみません。」


 ガビーはひたすら平謝りをしていた。

 二人の法師から、シャドウが盗賊ではなく盗賊を討伐した流れ者であること、そしてシャドウその人であることを聞き、真っ青になっていた。


「まあ、とりあえずすぐ冤罪ってわかったから、いいっちゃいいんですけどね。」


 真っ青でひたすら謝り続けるガビーを、シャドウはあっさり許す。 リトランが絡んでいることも大きいだろう。

 とはいえ、シャドウのガビーに対するイメージはだだ下がりであるのだが。


「本当にごめんなさいね。」


 エンドウッドの教会に常駐するレリザ小師も、シャドウに謝っていた。


「あなたも、今後は憶測で動かないように。」


「はい、肝に銘じます。」




「では、ガビー法師は公爵騎士から手ほどきを受けたと?」


「はい。」


 その日の夜、共に夕食をとりながら、それぞれの旅の話が弾み、ガビーは公爵家でのいきさつを話していた。

 法師達は旅をするにあたり、己の身を守るすべを身に付ける。 しかし、刃物を持たない法師達の武器は錫杖であるが、古くから鍛えられ、受け継がれた技は並みの流れ者すらも凌駕する。


「では明日、お手合わせいただこうか。」


 翌日、法師とガビーは向かい合っていた。


「では。」


 お互いに一礼すると、すかさず法師がガビーに一撃を加える。 しかし、ガビーはなんなくそれを受け止める。 さらに法師が攻撃を続けるが、ガビーは身体にかすらせることなく、すべてを受けきっていた。


「見事なんだが、なぜ攻撃しないのだ?」


 息をきらせた法師がガビーに問いかける。


「あの、攻撃はあまり習わなかったので……。」


「え?」


 二人の法師があっけに取られる。


「相手を疲れさせ、隙をついて足を狙い、相手が怯んだ隙に全速力でにげろ、と。」


「……、たしかにありですね。」


 二人の法師とレリザ小師が頷く。


「え?」


 今度はシャドウがあっけに取られる。


「シャドウさん、私達は相手を倒すための技ではなく、身を守る技と考えております。 逃げるというのも、身を守るすべとしては有効ですので。」


 ああ、とシャドウは頷く。 流れ者は相手を倒すことを考えるが、そもそもの始発点が違うのだ。


「ところで盗賊相手に、手を使った代わった攻撃をされておりましたが、あれはなんでしょうか。」


 共にシャドウと戦った法師がいう。


「あ、なんていうか……、ちょっとやってみます?」


 シャドウは手ごろな木に向かうと、手を差し出し軽くバッシュを放つ。 すると、木がぐわっと大きく揺れた。


「これはまさか……。」


「ええ、紛れも無く法力ですね。」


 レリザ小師が言い放つ。 すると、二人の法師がああでもない、こうでもないと議論を始める。


「では、私も一つお目にかけましょうか。 お相手をお願いしても?」


 小師がニッコリとシャドウに微笑みかける。レリザ小師は40ほどの女性で、その体型はまさに肝っ玉母さんとも言うべきものであった。



「それって、薙刀?」


 シャドウはレリザ小師のもつ武器に目を奪われた。 刃の部分は切れないようになっているようだが、明らかにゲームには存在しなかった薙刀である。


「あら、これをご存知とは。 最近は巫女も錫杖を使っていますが、以前は巫女はこれをつかっていまして。」


 レリザ小師がニッコリ笑いながらも構える。


「では。」


 小師が一つ、大きく息を吸うと先行でシャドウに一撃を放つ。 さらに一撃、それは切れ目のない連続攻撃となり、シャドウは盾と剣で防ぐのが精一杯だ。 そして、その体系からは想像できない身のこなしだった。 結局シャドウは最後まで一撃も入れることは出来なかった。。


「お見事ですわ。」


 レリザ小師が軽く肩で息をしながら、シャドウを褒める。


「いや、防ぐので精一杯ですから。 というか、教会の方って皆さんそんな強いんですか?」


「いえ、全員という訳ではありません。 私達二人は僧兵をめざしておりますし、レリザ小師も有名な僧兵でおられました。」


「マジですか……、あとひょっとして身体強化みたいなものを使ってました?」


「あら、それをお分かりになるとは。 ええ、お見せするものの一つがそれですわ。」


 身体強化は拳闘士Lv8のパッシブスキル(常に発動するスキル)としては存在していた。 しかし、シャドウはその実感がなく、おそらくこの世界ではパッシブスキルもなんらかの発動が必要なのではないか、と考えてはいた。


「もしよければ、お詫びといってはなんですが、初歩をお教えいたしましょうか?」


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