14.旅の途中の強制クエスト■
■14.旅の途中の強制クエスト■
「マジ、マウントほしいわ、これ。」
シャドウは延々と続く道をひたすら歩いていた。
マウントとは、ゲームの中で呼び出せる乗り物であり、その移動速度は飛躍的にUPする。
たまにマップを見るが、目的地のエンドウッドはまったく表示されていない。 道を間違ったかと思ったが、街道自体の本数はすくないため、間違いようもないのである。
「でも、たまに人がいっぱい乗ってる馬車、あれなんだろう?」
これまで乗合馬車に幾度も抜かれていたのだ。
乗合馬車とは、主要な都市間の比較的安全な街道を行き来する、一般的な乗り物である。 馬車や馬を持たない人達の日常の足となっている。 シャドウは、スルメ団と行動を共にしていたため、商人の馬車に護衛として乗った経験しかないため、その存在をしらなかった。
「次の町で休もう……」
シャドウは、まだマップに表示されていない、次の街を目指して歩き始める。
ようやく次の町へと辿り着いたシャドウは、早速宿を取りその身体を休めていた。
翌日、習慣となっていた町の酒場へと繰り出す。
「おい、他にはいねえか。」
酒場の中では、流れ者が声を張り上げている。
「何かあったんですか?」
シャドウは目の前の男に話しかける。
「ああ、盗賊だ。 この近くで暴れまわってやがる。」
シャドウは唖然とする。 おそらくこのまま進んでいたら、おそらくばったり盗賊に出くわしていた可能性があった。
「兄ちゃんも参加するのか? やめとけ。 相手が悪りい。」
男はシャドウの剣や鎧を見ながら問いかける。
シャドウはあいまいな返事で返すと、周りを見渡した。 30人ほどの流れ者がいるが、その中心にリトランのような錫杖を持つものがおり、必死に周りの流れ者を説得しているようだった。 どうやら法師のようだ。
シャドウは法師に話しかけようと近づくと、逆に法師がシャドウに話しかけてきた。
「アース教の信者が捕まっているのです。 なにとぞお力添えを。」
法師がシャドウに訴えかける。 法師がいうには、法師達とたまたま同行していたアース教信者の旅人達が盗賊に出会ったらしい。 そして、法師はなんとか逃げ出したものの、法師の一人と信者達は捕まってしまい、助けを呼んでいるようだ。
「あー、逃げらんないクエストだ、こりゃ。」
シャドウは盗賊の討伐クエストに強制参加となった。
討伐の参加者は法師とシャドウを含め10人。 聞くところによると、盗賊は20人ほどで、かつ名のしられた盗賊団らしい。
一応、領主にも援軍の打診をしているとのことだが、到着までは時間ががかるようだ。
また、参加した流れ者達は、いずれもアース教の信者だそうだ。 むしろ、信者でもなければ参加は二の足を踏むクエストらしい。
「では、ご説明いたします。 盗賊達はこの先の洞穴を根城にしているようです。 その数は、20人ほどとなります。 盗賊に捕らわれた方々の救出が目的です。」
法師が一同を見渡すと、隣の流れ者を見る。
「とりあえず、陽動組と救出組の2手に分かれる。 陽動組は、一人でも多く、奴らを引きずり出せ。 その隙に救出組が救い出す。」
流れ者達は、てんでに頷いていた。 シャドウは話を聞きながら、周囲のマップを見つめていた。
「あのー、いいですか?」
シャドウが手を上げる。
「なんだ?」
「救出する人達って、何人ぐらいいるんでしょうか?」
「はっきりとは分かっておりませんが、私達と同行されていた方は5名ほどでした。」
法師が変わりに答える。
「じゃあ、もっといる可能性もある、ってことですか。」
「そうですね。」
「その人達って、自分で歩けるんですかね?」
「おそらく、そうかと。」
「歩けなかった場合、どうしますか?」
法師にも、流れ者にも答えられなかった。
「何がいいたい?」
「いや、何がって、陽動で引っ張っても、戻ってきたときにまだその辺にいたら、もう一回つかまっておわりじゃないですか?」
流れ者も法師も黙りこむ。
「で、提案なんですけど。」
リーダー格の流れ者が手を上げる。 どうやら、全員が配置に付いたようだ。
そっと洞窟の入り口を覗くと、数名の見張りがいるのが見える。
シャドウは、弓を構える。 Lv15で覚えるラピッドショット。 それは矢の連射が可能となるスキルだ。 もっともゲーム内ではダメージは期待さほど期待できないのだが、この世界はゲームではないため、当たり所によっては致命傷となりうる。
シャドウが続けざまに矢を放つと、ばたばたと見張りが倒れていく。 即座に流れ者が見張りを片付け、、また静寂が訪れる。
しばらくすると、交代であろう盗賊達が数名洞窟から出てくるが、見張りが居ないことに慌てふためき一人が洞窟内に戻っていく。 シャドウは周りを伺う盗賊達をさらに矢で葬っていく。
10名ほどの盗賊達が、洞窟からばらばらと出てくるのを、待ち構えていた数名の流れ者が挑発する。 盗賊達はその流れ者達を追いかけ始めた。
突然、先頭の盗賊が数名、膝ぐらいまで地面に沈み込み、足を押さえてうめき声を上げた。 どうやら、槍のようなものを仕込んだ落とし穴にはまったようだ。
さらに、何かに足を取られ前転するように転げまわった。 そこに、物陰に隠れていた流れ者達がやりのようにとがらせた木の棒を盗賊達に突き刺していた。
突然、半分ほどがやられた盗賊達は、浮き足だっている。 周りをきょろきょろすると、いつの間にか、盗賊達は流れ者達に囲まれていた。
「くそー!」
それは、仲間への合図かもしれないし、単なる叫びかもしれない。 盗賊達はうなり声とともに流れ者達に襲い掛かる。
しかし、それは流れ者達の想定内だ。 人数で上回る流れ者達は、一人が剣をうけ、もう一人が脇から剣を振るう。 あっという間に半数以上の盗賊が倒されていた。
「しかし、スルメ団ってのは噂通りのとんでもねえ奴だな。 こんな手を思いつくとか。」
シャドウはスルメ団の名を使って、自分のプランを提案していた。 実際、スルメ団がこれに対応するとしたら、全員で突っ込み、人質に被害が出る前に終わらせる、だろう。 スルメ団の戦力はそれを可能にする。
リーダー格の流れ者がシャドウをじっと見つめる。 しかし、シャドウもここまで上手くいくとは思ってなかったため、流れ者達の手腕に関心していたのだが。
「さて、ここからが本番です。」
法師が錫杖を構える。 これから残りの盗賊と対峙するのだ。
洞窟の前では、盗賊達が周囲をうかがっていた。 案の定、旅人を人質にとっているのも見える。
「あれで全部ですかね?」
シャドウがささやく。
「さあな?」
リーダー格の流れ者がフンと鼻を鳴らす。
「じゃあ、いってきますね。 そっちもよろしくお願いします。」
そういうと、シャドウは剣を鞘に収めて前へと進み出る。
「なんだてめえは!」
盗賊の一人がシャドウに叫ぶ。
「いや、怪しいものじゃないって、十分怪しいのか……。 とにかく話しませんか?」
シャドウは立ち止まる。
「てめえ、これが見えねえか?」
盗賊が人質に剣を向ける。
「あ、ばっちり見えてます。 危ないから、ちょっと。」
シャドウがあわてるそぶりをする。 実際あわてているのだが。
「てめえ、剣を置け。」
腰の剣を、ゆっくり地面に置くと、両手を挙げる。
「仲間は何人ぐらいいやがるんだ。」
盗賊達がわめくように叫ぶ。
「100人ぐらいでここを包囲してますけど。」
シャドウがさらっと言ってのける。
「くっ、手前ら、手出しすると、こいつらの命はねえぞ!」
シャドウは盗賊達を見る。 ここに居るのは4人ほどで、一人が人質をとっていた。 そして、目の隅で、流れ者が数人洞窟へ忍び込んでいく様子も確認する。 おそらく洞窟内には一人か二人だろう。
「あ、ひょっとして、俺も人質になったりしますか?」
その言葉にはっとする盗賊が、剣を構えながらシャドウに近づき背後で剣で脅す。
「ちょっと、刺さないでくださいよ。」
本気でビビリながらシャドウが訴える。 そしてそのまま人質のよこへと並ぶ。
シャドウの前方に二人、そしてシャドウの後ろに二人。
その時、洞窟内から物音がする。 おそらく進入した流れ者によるものだろう。 思わず盗賊達が洞窟を振り返る。 シャドウも振り返るが、その目は洞窟ではなく、人質と自分に剣を構えていた盗賊に向けられていた。
シャドウはあげていた両手を、盗賊に向けて突き出す。 掌を使ったバッシュ。
盗賊二人がその場に倒れこむ。
「てめえ!」
突然仲間の盗賊が倒れたことで、残った盗賊がパニックになりシャドウに剣を振りかざす。
しかし、その剣は振り下ろされることはなく、飛び出していた流れ者の剣が盗賊を捕らえていた。
しばらくすると、洞窟から流れ者と、捕らわれていた人質達がぞろぞろと出てくる。
「ほんとに何なんだてめえは。」
流れ者のリーダー格が、シャドウの方をポンとたたく。
シャドウは乗り合い馬車を待っていた。 歩いて次の町に行こうとしていたら、法師や流れ者たちが驚いていた。
「なあ、スルメ団は乗り合いを使わない掟でもあんのか?」
「え? 乗り合い?」
そこで初めて乗り合い馬車のことを知る。
「そうそう、あんまりこの件は広めないでくださいね。 一応、俺もスルメ団ですけど、トーマスさんとかに内緒で名前使ったんで。 ばれたらすっげえ怒られそうな気がするんですよ。」
「スルメ団のトーマスはおめえより強いのか?」
「当たり前じゃないですか。 サンドラさんも俺より強いですよ。 シャルさんも、俺より頭いいですし。 そもそも俺、新参者ですから。」
「まじかよ……。」
実際、スキルを使わなければ、シャドウはあの3人には歯が立たないであろう。 スキルを使わなければ。




