12.新たな旅の始まり
■12.新たな旅の始まり■
「行くのか。」
トーマス、シャル、サンドラは旅支度をしたシャドウを見つめる。
式典のあと、トーマスとサンドラは、それぞれ指南役、フランソワ付きの騎士としての仕事を初めていた。 そして、シャルもファーレンの法力省での仕事のための引越しの準備を進めていた。
トーマスやサンドラは大した荷物もないため、即座に働き始めることができたが、シャルにいたっては、大量の文献や法具があるため、至難を極めていた。
そんな時、サンドラからそのことを聞いたフランソワが、シャルの文献や法具を預かることを提案した。 シャルの文献を自由に閲覧させてもらうことを見返りに。
シャルとしては、渡りに船で、さっそくフランソワの下へと荷物を運びこんでいる最中である。
また、シャドウは報酬としてもらった大金をどうするかで悩んでいた。
ストレージに入れてしまえば済む話であるが、ストレージの容量も今後足りなくなる可能性があり、かつ大金を持ち歩くことに一抹の不安もある。 そんな時、サンドラが商人に預ける話を持ちかけた。 この世界には銀行などはないが、大手の商人ではお金を預かってくれる。 そしてその商人の支店で証文と暗号があれば、自由に引き出すことも可能であった。 ただし、地方の支店で大量に引き出すことは難しいため、その規模で引き出せる上限が決められているものの、普段はこまることがない。 そして、なによりシャドウは市民権を得たため、利用可能になっていた。
早速、シャドウはサンドラの西念屋に、報酬で得たかなりの金額を預けていた。
「俺も西念屋にあずけてんな。 支店も多いし、使い勝手がいいぞ。」
「私も西念屋ですね。 つぶれることを気にしなくていいので。 実際、実家からの仕送りにも使ってましたし。」
「ちょっと、シャル。 あんた仕送りもらってたのに借金してたわけ?」
「しかたないではありませんか。 法具にはお金がかかるんですもの。 でも、証文さえ二つ作ってしまえば、双方で出し入れ可能ですから。 今後は実家へこれまでの借用分を送金するのにつかいますけど。」
「じゃあ、証文さえあれば、複数の人で一つの口座を共有できるってことですか。」
「うん、そうだよ。」
「じゃあ、証文を4つ作って、みなさんにもっててもらいましょうか。」
「いや待て。 それはだめだろう。 おれやサンドラはともかく、シャルは使い込むぞ?」
「トーマスさん、それはあんまりです。 さすがに私もそんな事はいたしません。 だいたい、法力省に勤めることが決まってますし。」
「あんまお勧めしないけど、なんで?」
「うーん、この先、いろいろとお願いすることがあるような気がするですよね。 まあ、そん時の保険ですね。」
「おめえの金だ、おめえが好きにすればいい。 それで気が済むなら、そうしろ。」
「じゃあ、それで決まりですね。 一応暗号は「スルメ団最高」で。」
スルメ団自体は解散するが、スルメ団として培ったこの絆は、このあとも続くことへの証だった、
「そういや、どこ行くの?」
「一応、リトランさんには、エンドウッド村ってところ行ってみたら? って言われてるので、そこ行ってみようかと。」
「エンドウッド?」
サンドラがトーマスを見る。
「あそこは行ったこたねえが、あれだろ? もどきの里の近く。」
シャルが頷き、サンドラが、ああ、と納得する。
「あんたも、変なとこいくんだね。 まあ、気をつけて行ってきな。」
「もどき?」
「行ってみりゃわかる。 おめえなら、大丈夫だろう。 多分な……。」
「お姉さん心配だから、一緒に行ってあげたいのは山々だけど。」
「シャドウさんも、こんなおばさんは邪魔よね。」
シャルが、騎士の鎧を着けたサンドラを茶化す。
「シャルはうるさい!」
「まあ、私たちもやらなくてはいけないことがありますから。 ほんと身体には気をつけてね。 シャドウさん心配ですから。」
「男なら、てめえの腕でなんとかするもんだ。 シャドウ、てめえなら大丈夫だ。俺が保証してやる。」
指南役としての正装をしたトーマスが、シャドウの背中を叩く。 シャドウは思わず吹き飛びそうになるが、なんとかとどまった
「じゃあ、行ってきます。」
「証文なくしちゃダメだよ。 困ったことがあったら、いつでも戻ってくるんだよ。」
「ファーレンに立ちよることがあったら、是非お寄りくださいね。」
「困ったことがあったら、連絡しろ。 できる限りのことはしてやる。」
シャドウはみんなに手を振ると、歩き始めた。
<1章 完>
次回予告:スルメ団を離れ、一人で旅にでるシャドウ。 いったい何が待ち受けているのか。
2章はしばらくお待ちください(山があんまり無かったので再構築中で、いじったら3章とかみ合わなくなってるし。)




