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召喚ゲーマー  作者: tamazo
第一章
11/26

11.なれないこと

■11.なれないこと■


「なんっつうか、窮屈すぎだろ。」


 トーマスが首に巻かれたリボンをやたらと気にしていた。 トーマス達は公爵家に用意された服を着て、式典を待っていた。


「でも、流石にシャルさん似合ってますね。」


 シャルとサンドラはドレスを着ていた。 シャルは笑ってみせる。 サンドラもシャルほどではないが、ドレスを着こなしていた。

「あたしとしては、あんたが何気に似合ってるのが驚きだわ。」


 サンドラはシャドウを見てニヤつく。

 シャドウもトーマス同様に、その貴族のような服を着ているのだが、なにせ影山が渾身のキャラメイクしたものを、神が直々に作成したアバターのようなものである。 似合わないわけがない。


「まあ、トーマスさんは思ったとおりでしたが。」


「うるせえ!」


 シャルにからかわれたトーマスが怒鳴る。 その時、控え室の扉がノックされる。


「皆様、ご用意はよろしいでしょうか。」


 どうやら、式典が始まるようだ。



 式典に向かう途中で、一人の騎士が壁にもたれてトーマス達を待っていた。 年はトーマスより若干若そうで、その体躯はトーマスと比べても遜色ない。


「アシラン様?」


 サンドラの足が止まる。


「よう、トーマス。」


 アシランと呼ばれるその騎士が、トーマスに手を振ってみせる。


「てめえ、まだ生きてやがったのか。」


 トーマスがアシランに返す。


「まあ、イキるな。 この前デカイ鬼獣たおしたってのは、お前らだろ? おかげで壁に穴が開いてるんじゃないかって調査に出ててな。 ちょっと前に戻ったところだ。」


「開いてたのか?」


「いや、壁は大丈夫だが、トンネル掘ってやがった。 結局、トンネル埋めさ。 そういやお前、流れ者やめるんだって?」


「てめえもかよ。」


 スルメ団の解散の噂は、いつの間にか広まっているようだ。


「まあ、楽に死ねると思うな。」


 そういうと、アシランは踵を返して去っていく。


「知り合いですか?」


 シャドウがトーマスに尋ねる。


「ああ。 昔大会で何度かぼこってやった。 まだ根に持ってるらしい。」


「あのね、ぼこったとか。 アシラン様は公爵家騎士団の騎士長で、槍のアシランの二つ名を持つ人よ。 トーマスさんとは、大会で何度か戦ってるけど、殆どトーマスさんが勝ってるの。 泉で見かけなかったのは、そういう事ね。」


 サンドラ曰く、騎士を目指すものであれば、いや、騎士を目指さなくとも、その名を知らないものは居ないそうだ。


「まあ、次もぼこってやんよ。」


 トーマスがにやりと笑う。




「モルト公爵のご入場。 一同、頭を下げ。」


 進行役がバルバットの入場をつげ、バルバット、その后、そして二人の王子についで、メイドに付き添われたフランソワが入場する。 フランソワは急激に変化した身体になれていないようだった。

 その場に連なる者達が、片膝を付き、頭をたれる。

 

 式典は滞りなく進んでいく。


「スルメ団 前へ。」


 トーマスを先頭に、シャル、サンドラ、そしてシャドウが進み出る。


「その方ら、フランソワ様救出の栄を称え、報酬を授与する。」


 進行役に促された文官の一人が目録を持って前に進み出、それをトーマスが代表して受けとる。


「時にトーマス。」


 モルト公爵がトーマスに話しかけ、トーマスがあわててモルト公爵に片膝を付く。


「その方の盾術、広く響き渡っておる。 どうじゃ、わが公爵騎士団の指南役を務めんか?」


 「へ?」


 トーマスが、驚いた顔を上げる。


「騎士長のアシランの強い推薦でな。 これからの騎士には、そなたのような盾術が必須と申しておった。 受けてもらえんか。」


 トーマスが、目でアシランを追う。 アシランがにやりと笑って返す。


「あの、その……、ありがてえ……、いや、ありがたきお言葉、このトーマス、命を張って、じゃねえ命に代えても……。」


「では、トーマス殿、いや、トーマス指南役。 お下がりいただけますでしょうか。」


 進行役が、笑いをかみ殺しながら、トーマスに助け舟を出す。


「次にシャル・ビスコンティ。」


「はっ。」


 シャルも堅い表情で、進み出ると片膝を付く。


「その方、聞くところによると、法力や法具のの研究者であるとか。 この度、法力省に法具を専門とする部署を立ち上げることになってな。 その方の手腕を振るってはもらえんだろうか。」


「え? あ、はい。 えええーーーーーー。 ……申し訳ございません。 その命、喜んでお引き受けさせていただきます。」


「なら、これがわしの推薦状だ。 追ってモルト王からの推薦状も届くであろう。」


 思わず、シャルが倒れそうになるのを、あわててサンドラが駆け寄って支える。 トーマスは宙を見つめて放心していた。


「サンドラ・西念。」


「ひゃい。」


 シャルを支えていたサンドラが、気絶寸前のシャルを離してしまうが、シャドウが変わりにシャルを支える。


「その方、騎士を目指しておるそうだな。 どうだ、わが騎士団にて、フランソワを守ってもらえんか。」


「ひゃい。 まいどあり、 じゃなくて、よ、よ、よ、喜んで!!」


 参列者が笑いをかみ殺せずに、あちこちでくすくすと笑い声がする。


「最後に、シャドウ。」


「はい。」


 シャドウは冷静だった。 さすがに前の3人があれほどの醜態をさせば、いやでも冷静になる。 我に返ったトーマスにシャルを任せると、進み出る。


「その方、なにか望みはあるか?」


「えー、あ! できましたら、市民権をいただけますでしょうか。」


「は?」


 モルト公爵がシャドウに聞き返す。


「あ、ダメですか……。 では……。」


「いや、ダメではないが、ほかには何かないか?」


「あ、いただけるなら、大変ありがたいことです。」


「ん? 無いのか?」


「特には。 ……あ、よろしいでしょうか!」


「なんなりと申すがよい。」


「できましたら、公爵領の皆さんに、朝と昼の食事の前に、神にお祈りいただくことは可能でしょうか。 それと、できれば昼にも。 一日3回ほどを目安に。 もちろん必須ではなく努力目標でかまいませんので。」


「ん? ……それが望みか?」


 モルト公爵がリトランを見る。 しかし、リトランは笑いを隠そうと、後ろを向いていた。


「まあ、良かろう。 そのように領民に周知しよう。」


「ははっ。ありがたき幸せ。」


 シャドウは思わずガッツポーズしそうになるのをこらえて下がる。 モルト領の領民が対象なら、かなりのレベルアップが見込めるだろうという目論見だ。


 進行役は、笑いをなんとかかみ殺しながら、式典を続けようとするが、うまくいかなかった。

 突然、フランソワが前にでる。


「お父様。 その周知、よろしければ、この後のご挨拶の際に、私めにお任せいただけますでしょうか。」


「まあ……、かまわん。」


 フランソワがバルバットに礼をして、後ろに下がる。


 ようやく落ち着きを取り戻した進行役が、なんとか式典を進め、領民への挨拶のため、主なものがバルコニーへと移動する。

 バルコニーにて、王の挨拶が終わり、メイドに付き添われたフランソワが前へと進み出る。 民衆から割れんばかりの歓声が上がる。


「皆様。 いろいろとご心配をおかけいたしました。 こうして無事、戻ってまいりました。」


 フランソワが一言話すたびに、群集の歓声がなりやまない。 身体はメイドに支えられているものの、フランソワの声はそれを感じさせない力強さがあった。


「こうしてこの場に戻れましたのも、こちらのスルメ団の皆様のお力、そして皆様の神への祈りのおかげでございます。 私、フランソワ・モルトは、今後、朝、夕のお食事の前、そして昼の3度、神への感謝として祈りをささげさせていただきます。」


 そう言うと、フランソワはその場で跪き神への祈りをささげる。 すると、歓声がやみ、民衆も神への祈りをささげ始める。

 この時から、モルト公爵領では、朝、昼、夕の3度、神への祈りをささげる習慣ができたのである。




「やっべ。 レベルあがりまくってる。」


 その数日後、西念屋の応接室でシャドウはビビリまくっていた。 泉での一件で、レベルは13まで上がっていたが、すでに15を超えていた。


「レベル? でもさ、あんたって何神を敬ってるの?」


 サンドラが七面相のように表情を変えているシャドウを、気持ち悪そうに見ていた


「え?」


「いや、あたしはやっぱ剣のマルス神だけどさ。 トーマスさんもそうでしょ? あんたもそうなの?」


 スルメ団とリトランは、式典の後ここをたまり場にしている。


「ああ、騎士とか剣士はだいたいマルス神だな。」


「私はツクモ神ですね。 シャドウさんは、ひょっとしてアース神でしょうか。」


 トーマスとサンドラは剣のマルス神、シャルは道具のツクモ神を信仰している。 しかしポピュラーなのはアース神である。


「へ? 神様っていっぱい居るんですか? でも皆さん同じ教会いってますよね?」


「「ん?」」


 一斉にシャドウの顔を見つめる。


「あんた、分かってないのにお祈りしてるわけ?」


 サンドラが呆れ顔でシャドウを見る。


「まあまあ、私がご説明させていただきます。」


 リトランがなだめるように言う。


「そもそも、わがアース教はアース神が主神となっておりますが、その分体として、先程のマルス神やツクモ神などがいると考えられております。 よって、教会では主神、もしくはその分体のいずれでもお祈りすることが可能となります。」


「あ、アース教っていうんですね。」


「おい、シャドウ。 おめえ、そんな事もしらねえで……。」


 トーマスが、思わず口をパクパクさせていた。


「ねえ、リトラン様。 ほんと、こいつ何者ですか?」


 サンドラがリトランに食って掛かる。

 

 しばらくリトランが考え込む。


「そうですね。 皆さんにはお話しておきましょうか。」


 リトランは神のお告げにによりシャドウと会ったこと、そしてシャドウが神の使徒であることを告げる。


「マジかよ……、シャドウおめえ……、いやシャドウ様?」


「トーマスさん、気持ち悪いです、それ。」


「いや、だってよ……。 なあ。」


 トーマスがシャルを見る。


「リトラン様がおっしゃるのですから、本当でしょうけど。 ねえ。」


 シャルもサンドラを見る。


「まさかあんたがねぇ。 っつうか貴方様がねぇ。」


「だから、それマジ気持ち悪いんですけど。」


 シャドウが困った顔をする。


「皆さん、できれば、シャドウ様とはこれまでと変わらぬ態度で接していただけませんか。 このことをご存知なのは、教会含めて極限られた一部のみです。 皆さんの態度が変わると、今後怪しむ者もでてきますので。」


 リトランの言葉に、3人は頷く。 そしてシャドウを見る。


「あの、今後ともよろしくお願いしますね。」


「は、いや、おう。」「こちらこそ。」「まあ、よろしく。」


 とりあえず返事をする3人だった。


次回予告:次話で1章の終了です。 2章はシャドウの一人旅中心になる予定。 というか、そう言う話を書いてるので、書き変えなければなるはず。

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