表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/40

トルミ村③

 

 朝食をとってから俺は村の手伝いをして回った。

 トルミ村は、来る魔王軍の対処に向けた準備を始めている。

 防壁の準備やや非戦闘民の避難経路の確認、部隊の準備等々やることは多い。

 いつの間にやら気絶から目覚めたフレンも村人の指示に従って動いている。

 明後日には魔王軍の侵攻を開始するための号令をあげる。

 それで俺たちは魔王城へと戻るのだが、それまでの間はこの村の準備を手伝い、あくまで魔族と戦うという態度を見せなければ。もちろん対魔族兵器の確認も行った。


「いやー、助かりましたレノン様。まさか大陸の英雄様にこんな作業をしてもらえるとは、夢にも思いませんでした」


 いく場所いく場所で全く同じ言葉をかけられる。彼らがこんなにも俺に信仰の目を向けるのは魔王を倒したからで、しかし俺は現魔王。人間にとっては敵の親玉、英雄でも勇者でもなんでもないのだ。もし俺が魔王とわかればトルミ村の住人は全力をもって俺を殺しにかかるだろう。それが例え大陸最強の魔王を倒した英雄だろうとも、命をかけて。


 一日中走り回って気がつけば日も暮れ始めていた。

 宿に戻る前、村長が共に食事を取りたいので自宅に来てくれとの誘いを受け、村長宅を訪れたが、家には誰もおらず、テーブルに書き置きがあった。


『レノン殿、所用ゆえ少し家を離れる。すぐ戻るから休みながら待っていてくれ』


 誰もいない村長の家で待つのは落ち着かないし、汗も流したい。そういう思いから俺は一旦宿に戻ることにした。宿の扉を開けると、狭いロビーでフレンが手を振っていた。


「あ、レノン様おかえりなさい。早速で悪いんですけどちょっと部屋まで来てもらってもいいですか?」


 一瞬昨夜のようなことをされるのではと疑いの目を向けたが、フレンの顔は明らかに違った。

 何か重要なことを俺に伝えるときの顔だ。


「……何か問題でもおきたか?」


 フレンは首を縦に振り、部屋へと向かった。俺もそれにつづく。部屋の入り口に近付いたとき、部屋に音声遮断結界が張られていることに気がついた。


 フレンがここまでしていると言うことは、よほど重要な事態なのだろう。……いや、薄々だが俺も感づいてはいる。


 部屋に入るなり、フレンは


「レノン様、この村の住人は皆死んでいます」


 そう言った。……やはりそうか。

 そればかりは信じたくはなかったのだがな。


 この村に来た時から、村人が皆同じ死んだ魚のような目をしていたこと、何か台本でもあるかのように似たような言葉を発することなどなど思い当たる節はいくつかあった。

 しかし一つ確信を持てない理由があった。


 それは村人たちから魔力反応を一切感じなかったからだ。


 冒険者の中に死体を操って戦う呪術師がいたが、そいつらは魔力を死体に与えることによって死体を動かしていた。

 よってもし呪術師が死体を操るという行為を行っているならば死体からは魔力を感じるはず。

 しかしトルミ村の村人たちからは一切の魔力を感じない。

 つまり村人を操ったいるのは魔力によらない特殊な何かで死体を操ることができるということになる。


 それにこんな大量の死体を操るのならそれこそ莫大な魔力が必要で、人間にはもちろん、魔王である俺ですらできない。


 それはフレンも同意見のようで


「もしかしたら私たちが知らない何か特別な方法で村人の死体を操っているのでしょうか……」


「例えばアクネラのような種族が見えない糸か何かで、マリオネットみたいに操るとかはできそうか?」


 俺の問いにフレンは首を横に振る。


「確かにアラクネは糸を通じて相手を操ることができますが、何百人も操ると糸が絡まってしまうでしょう。せいぜい2、3人が関の山かと」


 他に魔力や糸を使わず、人を操る方法は……と、考えるも全く思いつかない。フレンも同様に頭を抱えている。

 人間が仕掛けてきたのか……この大陸にそんな大それたことができるのは……


 少し時間が経ち「あっ」とフレンが何か思いついたように言ったが、いや……と言って顎をおさえる。


「何か思いついたのか?」


「いや、確かに思いつきましたが、流石にこれは違うかなと思ったので……」


「違ってもいい。思いついたことならなんでも言ってくれ」


今はどんな馬鹿げたことでもそこにヒントがあるかもしれない。それにかけるしかない。フレンは頷き、


「もしかしたら、アンデッド族の仕業ではないかと」


フレンはそう言った。

アンデッド族……十二翼会議の場で兵を増やすために使おうとした種族で、それほど強くなく、元の死体がバラバラであることから魔族の中でも地位的には低い。


「なぜそう思う?」


「はい、私たちはなんらかの方法で操られているという前提で話を進めていましたが、魔力を必要とせず、糸などで操られている気配もない。そもそもこんなにも大量の死体を操ることなど到底不可能ですよね?では、こう考えるとどうでしょう。村人は操られているのではなく、指示に従って自立して動いている」


フレンの言ったことでようやく理解ができた。なるほど確かにアンデッドの線は濃いかもしれない。知力は低いが自分で動くことはできる。そうなれば魔力も特殊な道具もいらない。


「しかし1つ理解が出来ません。なぜアンデッド族はこの村の村人を殺し、全員生きているかのように偽ったのか……」


……俺にはなんとなくだがその理由が分かった気がする。

そして俺たちが今かなり危険な状態にあることも。


「……来るぞ!!構えろフレン!!」


 俺が叫ぶと同時に部屋の窓側の壁が爆破されたかのように破壊され、斧や鎌、くわなどを携えた農民姿のアンデッドたちが乗り込んできた。


 皆目玉がひっくり返ったかのように白目を剥き、言葉にならない呻き声のようなものをあげている。この狭い部屋にこれだけ大量の死体が押し寄せたのだ。一気に囲まれてしまった。


「レノン様!!正面の死体どもを消します!!開いた場所から私を抱えて抜け出しましょう!!」


「いや、数が多すぎる!消してもすぐに埋まるだろう」


 となれば……

 俺は腕を上げ、天井を破壊した。

 そしてその穴からフレンを抱えて外へと飛び出た。


「まじかよ……」


 空から見たトルミ村は宿に向かって進む大量のアンデッドに埋め尽くされていた。そしてその中から


『……さぁ、さらに羽ばたいてみんな!自分の肉体を破壊してでも、宙にいるあの2人を地面に引きずり下ろしちゃって⭐︎』


 そんな叫び声が聞こえた。

 するとアンデッドとは思えない跳躍を披露しながら村人の死体は俺たちに迫ってくる。まさか死体を強化してるのか。

 当然飛びかかってくる死体たちは、無理な跳躍で、足がもげ、地面に落下し骨が砕け皮膚を破って突き出し、頭があらぬ方向を向いている。

 しかしそれでもなお立ち上がり、再び跳躍の態勢をとる。


 しかしあくまで死体は死体。

 俺が捕まることは一切ないし、地面に引きずり下ろされる心配もない。

 だがこれ以上村人たちの死体を見るも無残な状態にするわけにはいかない。


『ちょっとー、もっとみんな頑張ってよ!!全然届いてないじゃん!!』


 アンデッドから歓声が上がり、士気が上がったように感じる。それは明らかに煽られて盛り上がるコロッセオのような。


 俺は目を閉じ、意識を集中させる。


 ………見つけた。


 アンデッドの中で他のものとは比べ物にならない魔力を持った個体を。なぜ今までこいつを見つけられなかったのか全く謎だが、そいつは台の上か何かに乗り、声を上げながら指示を出しているように見える。

 こいつは……


「フレン、アンデッド族の中に士気を上げるのに特化した個体はいるか?」


フレンは首を振り


「いや……いなかったような……」


「まぁいい、そいつの元に行って確かめるまでだ!」


 空を蹴り、そいつの元に向けて俺たちは歩をすすめた。 



ここまで改編済みです。

評価・感想お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ