アリステル王国で〜カリウス目線〜
今回はアリステル王国での話です。
魔王領ではガラデ平原の戦いが終わった少し後のこと。
「カリウス!!貴様!!」
勢いよく開けられた扉から不快な声が聞こえた。もちろんアリステル王国の愚王である。いつ聞いても不快になる声だ。おっと2回も不快と言ってしまったな。
「如何しましたか?」
「ワシの命令を無視して、独自に政策を進めているそうだな!!許しがたい蛮行だ!!理由を説明しろ!!」
真っ赤になって怒りをぶつけてくる国王に対し、俺はため息をついた。理由は明白。国王が命じてくる政策は、どれも愚策。アリステル王国の王城付近の復興のために、税の引き上げ、労働力の搾取など。我が友レノンが壊滅させかけた王城近辺が一番被害が大きかったとはいえ、各地方大小関係なく復興支援のために協力しろというのだ。しかも今の時期は作物の収穫時。各地方でも労働力が一番必要な時期だ。それを分からないこの愚王は、王の器ではない。
「国王。王城近辺の修繕も必要かとは思います。しかし、各地方では今は収穫時です。労働力を出せというのはあまりに酷な話です。税を引き上げているのに、彼らの収入源を奪うのは、死ねといっているのと同義です。また、地方の大小を気にしていないため、規模の小さい村々はすでに貧困化が著しく、餓死者も出ています。この現状を見て、何も思わないのでしょうか?」
「それがどうしたというのだ。ワシには一切関係のない話だ。王城が潤えば、国も潤う。そうだろう?」
一切悪びれる様子もなく、さも当たり前だという態度に俺も今回ばかりは腹が立った。……いや今回ばかりではないな。
「民が死ねば、国が潤うわけがないでしょう!!人は宝です!土地を耕す民がいなければ、食糧の確保はできません!国王が今身につけている豪華な服も、宝飾品も生産者がいなければ、なくなってしまいます!つまり、あなたが守りたいと思っているものは、民がいなければ成り立たないものばかりなのです!!」
自分にまだこんな感情が残っていることに驚いた。しかし、この愚王には分からせないといけないという思いが、口にさせたのだろう。国王も俺がこんなに声を荒げると思っていなかったのか、呆気に取られている。
「な…、ワシに声をあげるなど、貴様!!分かっているのか!?」
「ええ、分かっていますとも!!しかし、私が言わなければ誰が言うのです!?宰相になったザイスですか?それともあなたに媚びへつらうことしか脳がない貴族ですか?否、私しかいないでしょう!権力にも、金にも興味のない。ただ親の借金と、自身が住む国のためならと、最低限の給金でも働こうとする私しかいない!!」
「カリウス………貴様!!」
今にも殴りかかってきそうな雰囲気がある。殴るなら殴ってみろ。お前程度の力なら痛くも痒くもない。なんなら、首を飛ばされる覚悟で反抗してやろうか。……どうやら俺も頭に血が昇っているようだ。
「どうされましたか!?国王様!!」
俺と国王の言い合いがかなりの声量だったのだろう。ザイスが部屋の中に飛び込んできた。
「ザイス!!この無礼者を処分せよ!!こいつはワレに逆らうどころか、愚弄しおった!!断じて許せん!!即刻処刑だ!!王城の前に磔にして晒しあげてしまえ!!」
「私を殺しますか!?ああ、いいですとも!もとよりその覚悟で申したまでです!なんなら私がここであなたに民の苦しみをこめた拳をぶつけましょうか!?」
「カリウス貴様!!」
ついに国王が殴りかかってきたので、俺はひらりとかわし、その土手っ腹に拳を叩き込んだ。
「ぐふっ……」
かなりいいところに入ったのだろう。国王は腹を抱えてうずくまった。……なんだろう。この行為で、死刑は免れなくなったが、とても清々しい気分だ。
「ひ、ひひ!やりましたねカリウス!これであなたは終わりです!!おい!!憲兵よ!!この者を取り押さえろ!!」
ザイスが勝ち誇ったように笑い声をあげる。せっかくいい気分なのに邪魔をしてほしくないものだ。ザイスの声に反応して部屋に入ってきた憲兵に押さえ込まれたが、少しも恐怖感が湧いてこない。今までに覚悟を決めて散っていった英雄たちもこういう気持ちだったのだろうか。
「ザイス……カリウスをすぐに処刑せよ……」
ザイスに支えられ、腹をさすりながら立ち上がった国王に対して、
「国王様、一つ進言してもよろしいでしょうか?」
「なんだ、ザイス。ワレはすぐにでもカリウスの死を望んでいるのだぞ?」
「いえ、国王様。こやつは国王に手を挙げた大罪人です。一瞬で殺してしまうのは、国王様が受けた屈辱に比べればあまりにも優しすぎます。」
「なるほど。一理ある。ならばザイス、お前ならどうするのだ?」
「こいつをあの者のところに送るのです!そして一生死ぬことのできない苦痛を与えるのです!」
ザイスの言葉に、清々しい気分から一転、青ざめてしまった。ザイスの言ったあの者というのは、国の中で最も恐れられている悪魔なのだ。アリステル王国の子どもは、悪いことをすると、その者のところに連れて行くぞと親から怒られる。しかし、それはあくまでお伽話であると思われているが、国の中枢ではその者が本当にいることが知られている。ザイスはそこに俺を連れて行くというのだ。
「なるほど!!いい案だザイス!!滑稽だなぁカリウス!!ワレに逆らったことを死ぬことのない永遠の中で悔やむがいいわ!!憲兵よ!連れて行け!!」
その言葉の後は、あまり記憶にない。最後の力を振り絞って暴れるも、文官の俺が憲兵にかなう訳もなく、抵抗虚しく、あの者のところに連れて行かれた。
あの、国最悪の呪術師のもとに………
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