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トルミ村②

更新期間が空いてしまって申し訳ありません……

 

 つきたかったのだ。

 今日はなにかと気を使ったせいで疲れていたというのもあるが、何よりこの気持ちの悪さを忘れるためにも眠りにつきたかった。しかしそれを許さないやつが1人いた。そうフレンである。


 村長が用意してくれた宿は、なぜか広めのベッドが一つ置いてあるだけだったのだ。それ以外には布団も、ソファーもない。ベット以外寝るとしたら床しかないのだ。


 今までも野宿の時は近くで寝ていたこともあるが、しかし宿で同じ部屋ということはなかった。

 それ故に知らなかった。

 まさかフレンが……


「レノン様ー、早くこっちに来てくださいよー」


 まさかフレンが……


「別に減るもんじゃないんだからー」


 全裸でしか寝られないとは……!!

 そう今部屋に1つしか用意されていなかったベッドの上で全裸のフレンが横たわって手をこまねいた。


 いやいやちょっと待て。

 あいつ野宿の時は普通に服着ていなかったか!?

 しかも普通に寝ていたし。


 ……いや俺こそ冷静になれ。

 野宿するなら服をているのは当たり前だろうが。

 野宿で全裸とかただの痴女じゃないか。いやサキュバスとしては正しいのか。


「減るもんじゃないとかそういう話ではない!!」


 俺だって魔王だが男だ。

 隣で全裸の女がいればそれなりに意識してしまう。

 いくらフレンが凹凸の少ない幼児体型のような体つきであろうとも!!ってこんな考え方してる次点で…


「あー、レノン様。いま失礼なこと考えたでしょ?……もう仕方がないですねー。じゃあ服着るんでちょっと目を閉じててもらってもいいですか?」


 渋々と言った声でフレンはベッドから立ち上がり、服を手に取る音がした。

 なので俺は言われた通りに目を閉じて、フレンの返事を待った。


「な・ん・て・ねっ!!」


 フレンのそんな言葉と共に俺の体に温かい何かが絡みついてきた。

 いや、何かというか明らかにフレンだ。


「おい!!何をしているんだフレン!!というか服を着ていないじゃないか!?」


 俺の背中に絡みつくフレンはあいも変わらず全裸状態だ。

 その状態でべったりとくっついているので背中にはささやかな膨らみの感触を感じられる。


「だってレノン様が悪いんですよ。いつまで経ってもこっちを見てくれないし、襲ってもくれないんだから。同じ部屋、一つのベッドそして全裸の美少女。こんなあからさまな用件が揃ってるんだから魔王だったら問答無用で襲ってくださいよ!!」


 いや、なんで俺が怒られてんの!?

 部下を襲うなんてするわけないだろうが!!


「ほら、魔王様だって私に反応しているじゃないですか!!」


「ちがっ!!何言ってやがるフレン!!これは……あれだ!!お前の体に反応したんじゃない!!そうだ!!メリザ、メリザの裸体を思い出して……」


 って何言ったんだ俺は!!

 妹の裸体思い浮かべている方がよっぽど変態じゃないか!!

 その証拠にフレンがドン引きしている。


「魔王様、私はどんな魔王様であろうと受け入れます。それがたとえ妹の裸体を想像して興奮するど変態な魔王であろうとも。だから今は私を受け入れてください」


 今こいつ俺のことど変態って言わなかったか?

 ……いや、間違っていないけれどもさ。

 しかしさっきからどうしたことか。

 徐々にフレンが魅力的に見えてきている。


「フレン……!!まさかお前!!」


「ふふっ、これでレノン様はもう私から目を離せなくなりましたね!!」


 してやられた。

 明らかにこれはフレンの魅了の効果によるものだ。

 おそらく背中にくっついた時に魅了の効果を発動したのだろう。

 しかも並のものではない。

 以前の実験で俺には並の催淫は通じないことが分かっている。

 しかし今の俺は今にもフレンに飛びつきたい衝動に駆られている。

 ということはフレンが発動したのはある程度本気の魅了の能力だ。


「フレン……今すぐ魅了の魔法をやめるんだ……じゃなければ俺だけじゃなく、村の住人がお前を襲いに来るぞ!!」


 なんとか衝動を抑えつつ、そう言うがフレンは俺から離れることはなく


「残念でしたね魔王様。私がそんなヘマをすると思いますか?たしかに以前はそうだったかもしれませんがでも今は違います。なぜならそれは魔王様が私に魔力支配の能力をくれたから!!私は魅了の魔法を支配することで他の人には効果がなく、魔王様にだけ絶大な効果を発生させることができるようになったのです」


 なんと言うことだ。

 まさかこの状況を作り出してしまったのは自分が原因だったとは。

 くそっ!!もう耐えるのも限界が近いぞ!!


「さぁ、レノン様。早く落ちてしまってください。そして欲望のままにフレンを襲ってください!!」


 冷静になれ、冷静になるんだ俺。

 荒い呼吸を整えろ。

 目を閉じて平常心を保つんだ。

 すう……はぁ……すう……はぁ……


 よし、もう大丈夫だ。

 俺は目を開き、フレンを見た。

 そして俺の記憶はそこで途絶えた。


 ーーーー

 ーーー

 ーー

 ー


 チュンチュン……


「はっ!!……俺はいったい!?あれからどうなった??……いや、思い出さない方が良さそうだ」


 鳥の鳴き声で目を覚ます。

 俺はベッドの上に横たわっていた。

 無論服は着ていない。

 そして横にはフレンが寝息を立てていた。

 無論服は着ていない。


「……やって……しまったのだろうな……」


 大抵の魔法ならば効かない俺なのだがなぜかフレンの魅了の魔法だけは効果抜群なのだ。

 理由は分からない。

 しかし欲望のままにフレンを襲ってしまったのは間違いないようだ。


「あ、レノン様おはようございます。昨日は素晴らしい夜でした」


 フレンは起き上がり伸びをしながらそう言った。


「……おはようフレン。さて何か言い残すことはあるか?」


「はは、レノン様は面白いことを言いますね。残すのは言葉じゃなくて世継ぎでしょ?昨日の激しい夜のお陰で私の中には……ゴンッ!!」


 全てを言い終わる前にフレンの脳天に向けて拳を打ち込んでいた。

 フレンはベッドを突き抜けて頭から床に埋まった。

 どうやらフレンは寝起きでまだ頭が回っていなかったのだろう。

 残すのは言葉じゃなくて世継ぎなどと言う寝ぼけたことを言っているのだから。


「レノン様、何やら大きな音がしましたがいかがされ……」


 最悪なタイミングで村長が部屋に入ってきてしまった。


「ちが、違うんだ村長!!話を話を聞いてくれて!!」


「いやいや、突然入るなどといった無粋な真似をしてしまって申し訳ない。……ワシもあと30年も若ければそこに混ざれるような元気があったのに……いや若さとは実に羨ましいかぎりだ」


 勝手に納得されてしまった。

 そして飯は用意しているけど、気が済んでからで良いぞと言い残しそそくさと部屋を去っていった。

 俺は顔を押さえて天を仰いだ。


 どうしてこうなったと……



 ◇◆◇◆


「なぁワンズ、俺はどうしたらいいんだ……?」


 現状報告してきたワンズについついそう溢してしまった。


「何かあったのか?なんか魔王様、この世の終わりみたいな顔をしているが」


「ああ、実はな……」


 俺はワンズに夜にあったことを記憶の範囲内で話した。


「まぁなんだ……元気出せよ魔王様。魅了されてたとはいえやっちまったもんは仕方がねぇんだから。それに確かにフレンの言うことは間違ってねぇしな。どのみち魔王様にはいずれ世継ぎを作ってもらうことにはなるんだからさ」


 今の俺は人間に対する復讐しか考えていない。

 しかしその復讐が叶った際には、将来的なことも考えて後継者が必要になる。

 ワンズ曰く、俺の時みたいに人間から魔王候補を選んでも、魔王軍の中から選んでも別に構わないが、一番いいのはやはり魔王の血を持った世襲の方がいいらしい。

 じゃあなんで俺を魔王に選んだのかと一抹の疑問は残るが……


「しかし予想通りフレンが一番乗りか……」


 ワンズがぼそっと呟いたのを俺は聞き逃さなかった。


「おいワンズ。今一番乗りがなんとかって言わなかったか?」


「ああ、おそらくフレン以外にも魔王様の種を狙ってる連中はいると思うぞ。どうにかして娘を魔王様の嫁にしようと送りつけてくる種族はいるだろうし。だからまぁ、フレンとやっちまったなら、フレンをその盾に使えばいいんじゃないか?そうすれば他の奴らを拒否でき……「ねぇワンズー、なんかいまぁー、魔王様の種とかぁー、嫁とかぁー、聞こえたんだけどぉー、どういうことかなぁー?」……やべっ、というわけだ魔王様。こっちは特に変わりはないからこのまま待機してるわ」


 ブチンッ


 一方的に通信が切れた。

 最後のはマホだろう。

 ……嫌な予感しかしない。


 しかしワンズが言ったことは一理あるのかもしれない。

 フレンを盾に……他の連中をかわせるのならば存分に利用してやろうではないか。

 俺はベッドから立ち上がり床に脱ぎ散らかされた服を着て、相変わらずベッドに埋まっているフレンを放っておいて村長が用意してくれた朝食を取るために部屋から出た。



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