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十二翼会議


 俺が玉座につくと、全員が膝を折り頭を下げる。

 ……全員ではなかった。約2名ほど天井に刺さっているのでそいつら以外は頭を下げる。


「良い、頭を上げろ。さて、今日お前達に集まってもらったのは他でもない。今後の指針について話し合うためだ。それなのにお前らときたら……まったく……くだらん事ばかりで言い争いをしやがって」


「まぁ戦闘狂という名のバカばかりですからしょうがないですよ魔王様。ほらね、こんな単純な言葉に全力で怒りの視線をぶつけてくるんですから」


 俺は頭を抱え、息を吐いた。

 発端はキャラットとサラーデと聞いたので、2人に鉄拳制裁を加え天井に突き刺しているわけだが。

 

(こいつらに必要なのは、戦う強さよりもメンタルの強さなのでは?メンタルトレーニングなんてやり方知らねーぞ)


 俺はもう一度ため息をつき、


「まぁいい。とりあえずこれからの指針についての話だ。まずは俺たちの第一目標について確認しておくが、元魔王領の奪還だ。これについては分かっていない奴はいないだろう。しかもこれは可及的速やかに行う必要がある」


俺の言葉に全員が頷く。現在魔王領にある問題としては、


①食料不足

②定住地

③人材不足


主にこの3点になる。

すでに餓死者が出ている以上、食料問題は早急に解決しなければならないが、土地が少ないため、農地や畑などを広げるには限度がある。また住む場所がないものも多く、その場所の確保も必要だ。戦うための兵も足りない。


その他にも多々あるだろうが、まずはこの3点の解決が最優先だ。


「偵察に出していたものからの報告によれば、領土境にはアリステル王国の兵士はいるものの数は少ないとのことだ。ここまでなら容易に奪還できるだろう。しかしその先は、人間側の強者とまみえることが想定される。そうなれば今の我らが魔王軍は正直勝ち目が薄い」


 そういうと、一部が怪訝そうな顔をした。


「魔王様、意見よろしいか?」


 そのうちの1人、ハンラが手を上げた。


「ああ、いいぞ」


「我々は人間側との戦いで、勝ち目が薄いと感じていなかった。むしろ勇者レノンとその一味が現れるまでは、負けてない……と思います。何故我々では勝ち目が薄いと?」


 ハンラの意見に頷くものは多い。

 レノンとその一味以外には負けてない……か。


「ハンラ、それは簡単なことだ。お前らと戦ったのはアリステル王国の兵士が大半で、大陸全土の兵士ではないということだ」


「アリステル王国の兵士……?」


 人間領のことをあまり知らない彼らからすれば少し理解が難しいのであろう。


「人間領には9つの大国がある。アリステルはその一つで権力に最も重きを置いている国だ。その影響で最も大きい国でありながら国の腐敗が凄まじい。たびたび反乱も起きるから、兵の疲労、民衆の貧困などその他諸々で国自体が弱くなっている。現国王は手柄欲しさに魔王領に侵攻。互角か敗戦を繰り返している時に、たまたまアリステル出身で大陸最強になった俺を勇者と担ぎ、お前らと戦わせた。だからお前達は人間をそれほど強い相手と思わないし、俺たち以外には苦戦を強いられなかったということだ」


「なるほど……つまりは魔王様のご出身であるアリステル以外の国にはより強力な兵士がいると」


「ああ、それも勇者時代の俺と互角に渡り合うくらいのな」


「なんと……」


 自分達の主人を滅したのとほぼ同格が他にもいるということで、ようやく人間領への侵攻の困難さ加減が伝わったようだ。


「じゃあ魔王様、どうやって私たちは人間領に侵攻するのかしら」


と、いつの間にやら天井に張り付いているアクネラがそう尋ねた。


「俺が行き詰まってたのはそこなんだ。だからお前達の知恵を借りたいとな」


 自分達と同格かそれ以上の相手と戦う手立て……

 全員がうーんと考えを巡らせる。


「魔王様がワンズ達にしたっていう能力付与はどうですか?俺たちにもその付与があれば強くなれるんだろ?」


「……オルグ、それはダメですよ。私たちは魔王様の信頼を受け、認められたからこそ力を得たのです。ただ簡単に強くなるために与えられるものではありません」


「しかし、今は打開策がほしいんだろ?だったら……「オルグ、それは無しだ」……なぜですかい?」


 オルグの言葉を遮るようにして俺は能力付与は選ばないことを伝えると、オルグは怪訝そうに理由を尋ねた。


「能力付与自体はできないわけじゃない。しかし俺はお前達がどんな力を使い、何が得意で、どういった戦い方をするかを知らない。だから、もし仮にその状態で能力付与を行なったとしてもそいつの能力を最大限にまで発揮できるものを付与できるかが運次第になってしまう。一度しかできない付与だ、無駄にはしたくない」


「なるほど……それはそうだな。納得したぜ」


 オルグは頷き、意見を取り下げた。


「……兵数が足りないのであれば、国境線を戻す戦いの死者をアンデッドとし、兵として戦わせるのはどうだろう」


 ハンラがそう提案した。


「それは俺も考えた。しかしゴブルにも言われたがそれはマナー違反というものではないのか?」


 魔族のルールとして俺がゴブルから恨みを買うことになった所以だ。


「確かにマナーというかモラルの話で良くないというのはありますが、それはあくまで相手の種族の了承を得ていない時のことで、了承を得ることができれば可能です。さらにアンデッドという種族はあってないようなもの。特定の形を持たない、元は別の種族ということからも了承を得る必要がないのです」


アンデッドという種族は他者の死体を媒介に作り上げる。そのため一応はアンデッド族という括りはあるが、族長をたてるほどの実力や知能等は持ち合わせていないらしい。


「……兵数を補う手っ取り早い手段はやはりそれが一番か……ハンラ、その辺りの調整は任せるが頼めるか?」


「はっ、私は死を司る種族。完璧に行いましょう」


 ハンラの腕に持たれた頭がニヤリと笑うのが見えた。自分の提案が通ったことが嬉しかったのだろう。


 さてでは戦いの第一フェイズに移るとしよう。

 これからやることは


 ①部隊編成を行い、電撃的に元魔族領を侵攻。

 ②各部隊にはアンデッド生成要因をつけ、出来るだけ多くのアンデッドを作成し、兵数の確保に努める。

 ③国境の維持はアンデッド達を中心に行わせ、再度その時点での状況把握と相手の出方を伺う。


 上手くいかないところは臨機応変に対応する。

 もし万が一国境付近に奴らが出てきているようであれば、俺が出向き対応する。


というところか。


「よし、部隊編成を行う。それにあたり改めて聞くが、今後元人間の俺を魔王と認め、戦ってくれるか?」


 俺がそういうと、


「「「はっ!仰せのままに」」」


全員が膝を突き、頭を下げた。


「勇者レノンを失った人間などに遅れはとらぬ。我ら十二翼が全身全霊を持って魔王様の悲願達成のために尽力させていただこう」


 代表してギーラが言った。

 

「頼む。ではここで新たに俺の翼となる十二翼を伝える」


 俺がそういうと空気が張り詰めた。

 ある者はゴクリと喉を鳴らし、ある者は目を閉じ、ある者は余裕と言った表情を浮かべ俺の言葉を待った。


「まず始めに前魔王は長というものを明言しなかったな。その結果ゴズと言った勘違い野郎が生まれた。お前たちに限ってはそんな事はないと思うが、万が一のためにも今回は十二翼長を指定させてもらう。……ギーラ頼むぞ」


「はっ、仰せのままに」


 ギーラは胸に手を当て一礼をした。

 まずもってギーラ以上に十二翼をまとめ上げる適任者はいないだろう。

 それは元十二翼の奴らも認めている事だろう。


「次に副長を2人指名する。これはドゴラ、ワンズお前たちに任せる。しっかりギーラのフォローをしてやってくれ」


「「はっ!!」」


 この2人は平原での戦い以前から俺に従ってくれた2人だ。

 それに今の2人は十二翼の中でもギーラに次ぐ実力の持ち主になっている。信頼しているからこその配置だ。


「我が副長……なんと名誉な事だ。今日という日をまた日記に記載しておかねば」


 相変わらず少し女々しいところがあるが……まぁ大丈夫だろう。ワンズも小さくガッツポーズをしている。


「そして残りの面子だが、キツケとスラメを加えた元十二翼を任命する。つまり今回十二翼から外れるのは、ここに来ていない、十二翼の1人だけだ」


 部屋にいた全員が十二翼の地位に残ることが出来たという安心から少し雰囲気が和らいだ。

 緊張が解けたのであろう。


 第一翼:山羊族 ギーラ

 第二翼:龍族  ドゴラ

 第三翼:人狼族 ワンズ

 第四翼:デュラハン族 ハンラ

 第五翼:サイクロプス族 キプロス

 第六翼:猫人族 キャラット

 第七翼:ウィッチ族 マホ

 第八翼:アラクネ族 アクネラ

 第九翼: オーガ族 オルグ

 第十翼: サラマンダー族 サラーデ

 第十一翼:吸血鬼族 キツケ

 第十二翼: スライム族 スラメ


 一翼から三翼まではリーダー格だがその下からは皆対等の立場で、あくまで第何翼と名乗った方がカッコいいと思ったからナンバリングしてみた。

 流石に一度も顔を見せない奴を十二翼に据えるわけにはいかないので俺はその不明の1人を十二翼から外すことにした。

 果たしてその選択が正しいかは分からないが。


「あっれー、そういえばぁー、フランはぁー、入ってないよねぇー。どうー?悔しいー?ねぇねぇー」


 俺の横に佇むフレンを煽るようにマホがそう言った。

 ……すごく嫌な予感。


「あ、あのなマホそれは……「マホ、残念ながら私は十二翼には入れないんだよ」……おいフレン?」


 何を言う気だ?

 たしかにフレンはもともと候補に入れていない。

 それにはちゃんとした理由がある。

 フレンも承知しているし、むしろ歓迎している。


「どう言うことかなぁー?まさかぁー、負け惜しみぃー?」


「私はね、魔王様の秘書なんだよね。分かるかなぁ?つまりは魔王様直属の部下。常に魔王と共に行動をとることを許された唯一の地位。それはいわば十二翼よりも上の地位ってこと。そして十二翼長はギーラだけど十二翼統括の地位は私。だからマホ、これから私はあなたの上司に当たるんだよ。ここまでいえばわかるかな?言葉遣いには気を付けなよ!」


 その場にいた全員がは?という顔を浮かべた。

 そして俺もしかり。

 確かに似たようなことは言ったが、上司に当たるとかは言ってないのだが?

 かなり曲解をしてしまっているようだ。


「はぁー?はぁー?ふざけてんのかなぁー?」


 あー、こらマホ。

 どこからともなく箒を取り出すのはやめなさい。

 そしてさりげなく他の奴らも黙認しようとするんじゃない。

 ほらギーラ。

 早速出番だぞ?


 目で合図を送るがギーラはそっと目を閉じ頷いた。

 そしてこれまたどこからともなく槍を取り出して、フレンとマホに向かって槍を向けた。


「お前ら魔王様の御前だ。大人しくしろ。忠告を無視するならば、私が黙らせる」


 流石にギーラに槍を向けられた2人は大人しくなった。

 俺が強化していようがギーラはその上をいく。

 つまり例え2人がかりでかかっていってもギーラには勝てないのがわかっているのだ。


 やはりギーラを十二翼長に据えて正解だった。

 これがワンズとドゴラであれば、2人とも止まらなかっただろう。


「フレンが言ったことはかなり間違っているが、まぁそういう理由ではある。十二翼じゃないからと言って、フレンはそれ以下ではない。だから勘違いしないでやってほしい」


 俺がそういうと全員が納得といった顔になった。

 今度はフレンだけがプッと頬を膨らませたがもう気にしない。


「ではまず元魔王領を即刻取り戻す。第一部隊、キャラット、ハンラ、キプロス。3人に任せる。まず西側にあった猫人族の村の方面から攻めろ」


「「「はっ!!」」」


「そして南にある元オーガ族の村方面、これをサラーデ、オルデ、ドゴラに任せる。中央ラインだ。国境付近でかなりの抵抗が見込める。心してかかれ」


「仰せのままに、ご期待に応えましょうぞ」


 オルグが頷いた。


「そして東からはアクネラ、マホ、キツケ、ワンズに任せる。アラクネ族の支配する森を抜け、東側から侵攻せよ。また、アンデッド作成のために全部隊にデュラハン族を配置する。最後にスラメとギーラ、万が一にもないとは思うが魔王領で反乱が起きたときのために魔王城での待機を命ずる。最強の矛と回復役が残っているのだ。かなりの抑止力になるだろう。戦いに出たい気持ちは山々だろうが、少し我慢をしてほしい」


 ガラデ平原で忠誠を誓うと述べたが、崩壊まで追い込まれた種族もいる。

 ただでは滅ぶまいと何かしでかす連中がいるかもしれないので、あくまで保険だが2人には待機をしてもらうことにした。

 どこかの部隊が敗戦するかもしれない。そこから人間が攻めてくることも考えられる。

 そのような時にも派遣できるように。


「なに、予想通りだ。気にすることはない魔王様」

「僕もそうかなぁーって思ってたよ!」


 理解をしてくれる2人で助かった。


「さてお前たち、まずはしっかりと準備を整えてくれ。部隊に必要なものがあるならば申し出ること。そしてこれだけはいっておく。これは競争ではない。いくら早く落としたところで俺の評価が上がったりするなどとは考えるな。確実にそして圧倒的に進軍せよ!!」


「「「はっ!!!」」」


 これから新魔王軍の戦いが始まる。


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